東京五輪は個人のWエントリー禁止?という問題をちょっと解説

陸上ニュース

陸上の個人種目での参加が原則1種目になるかもしれないっていう話が一般のニュース番組でもそれなりに大きく取り上げられています。陸上がニュースになるのって9秒台が出たか何かが問題になったときだけですね…
しかし、今回の問題は陸上の慣習がわかっていないとイマイチなにが問題なのかが分からないのではないかと思います。

ってことで、今回は
東京五輪で1種目だけしか出られないかもしれない問題
についてちょっと解説します。

 

 

 

個人種目のエントリーは原則1種目になる?

陸連が16日の理事会で東京五輪のエントリーについての案を示しました。
ザックリとした内容は
「日程的にきついので個人種目は1種目だけにしてリレーをがんばってほしい」
と言う感じのもので、個人種目は1種目だけに絞ることでリレー種目に注力し、リレーで金メダルを目指すという方向です。
これは日本陸連が勝手に考えていることですので世界的には普通に2種目出場できますし、現段階では代表選考をどうしようかっていうにすぎません。

そもそもこれのなにが問題なのでしょうか?
って言うところから解説。

1種目だけしか出られないと何が問題?

まず、陸上の短距離っていうのは基本的には個人で2種目出場します
ウサイン・ボルトは100mと200mで世界記録を持っていますし、マイケル・ジョンソンは200mと400mで世界記録を持っていました。
レベルが上がると100mだけとか種目を絞る選手が増えますが、中学や高校でも幅跳びと三段跳びなどの2種目エントリーも普通のことです。
それにリレー種目が入るので3種目、マイルリレーにもでれば4種目ってこともあります。
大会日程もそれを想定して組まれていますので、世界大会ともなると100mと200mの決勝が同日に行われることはまずありません。
個人種目を1種目に絞るのか2種目頑張るのかは完全に個人の自由で、力があってもベテランになって体力がきつくなると1種目に絞る選手も増えます。実際、ボルトも引退試合となった世陸ロンドンでは200mを欠場して100mに専念しています。
今回の問題は、この個人の自由だった部分を陸連が制限するかもしれないというもの

個人種目は個人の自由?

サニブラウン選手は2017年と2019年に日本選手権で100m200mの2冠を達成しています(2018年は欠場)。
100mでは9秒97の日本記録をもち、200mでは世陸ロンドンで決勝進出という実績のあるサニブラウン選手は東京五輪でも100と200のWエントリーをしても不思議はありません。むしろ両種目とも決勝進出が期待できます。
また、100mで日本歴代2位の9秒98をもつ小池選手も200mが得意な選手。
もしこれらの選手が個人で2種目を狙いにいきたいと言った場合、リレーに注力したい日本チームとしてはどうしたものでしょう?
個人種目は個人の自由と考えるか?チームとしてリレーを優先させるのか?
選手みんながリレーを絶対視しているのであればいいでしょうが。ほら、まあリレーなんてねぇ…

エントリーを絞るのもチーム戦略?

代表チームは基本的には味方です。世陸ドーハではアメリカチームにコールマンライルズノーマンという3名の有力選手がおり、コールマンは100と200、ライルズは100と200、ノーマンは200と400で優勝が狙える力がありました。
実際にはこの3選手の出場は100mにコールマン、200mにライルズ、400mにノーマンと分割されることになって、直接対決は見られませんでした。
それでもコールマンとライルズが優勝し、アメリカはチームとして金メダルを2つ獲得。リレーでもコールマンとライルズが走って優勝。
選手の意向でこのような形になったのか、チームが指定したのかはわかりませんが、このように余計な競合を避けて体力を使わないというのもチームとしての戦略と言えます。
今回の日本チームの戦略が「リレーに注力することで金メダルを狙う」というものであったとしても、それ自体は非難されるようなものではないはずです。

 

100m、200m、リレーの日程はそこそこきつい

東京五輪の日程はどうなっているのか確認です。

100mが2日間行われて中1日あけて200mが2日間とリレーが2日間です。
この日程がきついかどうかは色々あるでしょうが、もし仮に100mと200mで決勝に進出してリレーの予選も走るとなれば7日間で8本走ることになります
それはさすがにきついでしょう。
が、そんな疲れている選手がリレーの予選を走ることは普通はありませんので最大7本でしょう。。補欠がいますから。

ちなみに、9月に行われた世陸ドーハの日程は
1日目100m予選
2日目100m準決勝・決勝
3日目200m予選
4日目200m準決勝
5日目200m決勝
6~7日目OFF
8日目4×100mR予選
8日目4×100mR決勝
でした。

いままでの五輪や世陸もだいたい同じようなスケジュールですので、東京五輪の日程が特別過密と言うことはありません。日程に文句言う人がいればそれは論外。
っていうか、きついのは昔からなのでいまさら1種目だけって案が出て来るのはなぜなのでしょうか?

 

なんでいまさら1種目なんて言い出すの?

東京五輪のスケジュールは普通です。過密で大変だからどうこうっていう理屈は通りません。
ではなぜいまさら1種目に絞るなんて言い出したのでしょうか?

まず前提として押さえておかないといけないんは、Wエントリーリレー要員について。

陸上選手は学生時代から100mと200mの両方にエントリーしてリレーも含めて全部走るみたいなことをやっていますので、Wエントリーをすれば疲れるっていうのは常識です。それを嫌ってサニブラウン選手はインターハイに出場しないとい選択をしています
サニブラウン選手は高校時代からそのへんの感覚をもっていたちょっと特異な選手ではあります。

また、リレーには予選だけあるいは個人種目に出場せずにリレーだけに出場するリレー要員というのがいます。いわゆる補欠。
このリレー要員は個人種目で代表落ちして個人出場できなかったサブのメンバーであることがほとんどです。
2017年の世陸ロンドンではケンブリッジ、多田、サニブラウンの3選手が個人100mの代表となったため桐生選手が補欠としてリレーだけに出場し、日本の銅メダル獲得という結果になりました。決勝を走った藤光選手もリレーの決勝だけを走ったリレー要員です
世陸ドーハでも多田選手がリレーだけに出場するリレー要員として、4継の決勝だけに出場して見事メダルを獲得しました。

っといった具合に、リレーまで走れば疲れるのはわかっているので、そもそもリレーにはリレー用のメンバーを補欠として入れるっていうのが普通です。今まで日本チームもそうしていました。そしてそれがマニアックなリレーの楽しみ方の一つでもあります。

ではなぜ今回に限ってはリレーに注力なんて言っているのでしょうか?

補欠が減らされて登録メンバーが5人になった!!

これが今回の騒動の原因です。
リレーメンバーっていうのは今までは補欠を含めて6選手が登録できました。この登録された6選手のうちから予選と決勝でそれぞれ4選手を選んでレースに出ます。
普通は100mの代表がリレーにも出るので、個人で100mの代表になった3選手と、補欠3選手という組み合わせ。
ってことは個人代表2人がWエントリーで疲れていてもフレッシュなのがあと4人いるのでなんとかなった。というのが登録が6人の場合。

しかし東京五輪では
『100mの代表になった3選手は必ずメンバーに登録され、補欠は2選手だけの全部で5人しかメンバー登録できない』
ということになっているのです。
つまり、東京五輪のリレー登録メンバーは5人だけ。100mの代表3名に補欠2人という組み合わせになります。
もし個人代表の2人がWエントリーしてしまうと、このうちどちらか1人はリレーでも頑張らなければならなくなるのです
これではフレッシュな3人と疲れた1人でのリレーとなり、チームのパフォーマンスは落ちるでしょう。

ちなみに世陸ドーハのリレー代表6名はこんな感じでした↓

選手 個人種目 リレー
予選
リレー
決勝
桐生 100m
サニブラウン 100m,200m
(200は欠場)
小池 100m,200m
白石 200m  
ケンブリッジ ×    
多田 ×  

100mの代表3名に200mの白石選手とリレー要員の多田・ケンブリッジ選手というメンバーが代表でした。
実際に走ったのはサニブラウン選手を除く5名ですので、東京五輪で5名に制限されるからといって実際のところ影響があるかと言えば疑問ではありますが、チームとしては戦略を考えないといけません。

 

リレーと個人種目どっちが大切?

今回の騒動でポイントになるのはこれでしょう。
日本の短距離界は今までにないレベルで盛り上がっており、場合によっては東京五輪で個人の100m、200mともに決勝あるいはメダル獲得という可能性もあります
厳しくはありますが、夢のような瞬間が見られるかもしれないのです。
しかし、短距離で日本人選手が勝負するにはまだちょっとレベルの差があるというのも事実。順当にいけば準決勝止まりでラッキーがなければ個人種目での上位入賞は厳しいでしょう。

一方で、リレーはもはや日本のお家芸とも言えるレベルにあります。国際大会で連続メダルを獲得するなど、世界的にも日本チームは優勝候補。世界トップのリレー技術があります。順当にいけば上位入賞が確実です。

で、これはどっちが大切?

陸連の判断は大英断か、愚行か?

リレーが盛り上がっているのは間違いない。陸上なんて9秒台が出なけらば誰も興味がないのに、リレーはちゃんとメダルを採ってテレビに映ってニュースにもなる。
これを『陸上の振興』と捉えるのであれば、リレーに注力することは英断かもしれない。ニュースでリレーのメダル獲得を観た子供が陸上選手を目指して陸上人口が増えれば、陸連の判断は間違っていない

ただ、選手の自由を奪うことは愚行かもしれない
陸上が息苦しいスポーツになってしまえば発展なんてものは望めないし、そもそも陸上やっている人なんてのはパーソナリティに問題あるやつばっかりなんだからチームとか求たらいかん!!(個人の意見です)
個人種目の代表格である陸上にまで協調性を求めてしまうと陸上競技の良さが一つ消える
っていか、リレーでは強いのに個人種目は全員予選落ちじゃあ盛り上がるわけもなく。

陸連、空回りがち

五輪が終わったあとのことまでしっかり考えての陸連判断ではあると思うが、最近の陸連はどうも勘違いしている節がある
日本選手権が多盛り上がりと言うが、地方のちっちゃい会場が満員になっただけでサッカーや野球のような集客力はないし集客する努力もしていない。
日本グランプリシリーズとかいう大会も誰も知らないし、SNSやテレビ放送も稚拙だ。
部活のおかげで競技人口は相当多いはずの陸上がこれっぽっちしか人気がないっていうのは陸連が空回っているからにほかならない。
リレーが連続でメダルを採っているからって勇み足で選手を縛るようなことをすれば、それもまた空回りだ。

正直リレーはどうでもいいけどなぁ

個人的なところでは、リレーなんてどうでもいい。
日本人の特性なのかわかりませんが、駅伝なんかでワンチームになっているのが好きな人が多いと思います。リレーも似たようなもので、個人では勝てないけど力を合わせて頑張って打ち勝つみたいなところがある。
でも正直リレーって、大会の最後のワチャワチャしたお祭りみたいなもんだと思います。
個人ではピリピリしてたあの選手達が一堂に会して競い合うオールスター戦みたいなもので、やっぱり個人種目とは緊張感が違うというか…
っていうか大会を1日目から全部見ていると、リレーは最後のデザートみたいなもんでどんな結果であろうと楽しめる
それよりもやっぱりメインディッシュである個人種目がどれだけ盛り上がるかっていうのが大会全体の盛り上がりにつながると思うんですよねぇ。

 

 

 

って感じでどうでしょう。
たぶんこれだけ世間で色々言われてたら個人種目に口出しをすることはないと思います。結局いままでどおりのエントリーとなって、今回の騒動は忘れ去られることでしょう。






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