東京五輪でマニアックな種目を100倍楽しむための陸上知識!!①女子400mH編

マニアックな競技解説

陸上ファンならずともぜひ現地で観戦したい東京オリンピック。普段陸上に興味がない人も多くがチケットの抽選に申し込んだことでしょう。
日本選手権のような大会は1日いれば男子短距離もどれかしら観ることができるるのですが、オリンピックともなると競技期間が長いためにマニアックな種目ばっかりやってる日もあります。

運よくチケットが手に入った人でも、『この種目は誰が誰だか全然わからん…』なんていう方はかなり多いことかと思います。
選手を知らないのも無理ありません。
だって陸上はリレーを含めると48種目も開催されるのですから

陸上歴が長い人であっても全く知らない種目はたくさんあります。

でも、その種目のみどころが分かっていた方が楽しめるはず。
せっかくなら、これを機会に知らない種目の事を調べてみましょう。

ってことで、今回からシリーズとして
東京五輪でマニアックな種目を100倍が楽しむための陸上知識
をご紹介します。
第1回の今回は、女子400mHについてご紹介します。

 

 

女子400mHとは?

競技日程:予選(8/1昼)、準決勝(8/3夜)、決勝(8/5昼)
世界記録:52秒16(ダリア・ムハンマド、
2019.10.04世陸ドーハ決勝
五輪記録:52秒64(メレーン・ウォーカー、2008.08.20北京五輪)
日本記録:55秒94(青木沙弥佳、2008.10.04)
東京五輪参加標準:55秒40
注目選手:
ダリア・ムハンマド(アメリカ)
シドニー・マクローフリン(アメリカ)

女子400mHをザックリ紹介


出典:https://www.worldathletics.org

400mHはトラック一周の間に10台のハードルを越える競技で、女子ではハードルの高さは76.2cm(30インチ)に設定されています。スタートから1台目までが45.0m、10台目からゴールまでは40mですが、ハードル間の距離は全て35mの等間隔になっていて、この距離は男女共通です。
レース中にハードルを倒しても失格ではありませんが、故意に倒したりハードルをくぐると失格になってしまいます。また、足がハードルの横を通過してしまうと失格となるため、有力選手がミスって失格になり番狂わせが起こる場合もあります。
かつて為末大選手が世陸エドモントン・世陸ヘルシンキの2回銅メダルを獲得しており、1995年世陸イエテボリで山崎一彦が7位入賞するなど、男子では日本人選手でも世界のトップレベルで戦えていた種目です。一方の女子では日本記録でも参加標準に届いておらず、世界と戦うどころか出場すら厳しい状況が続いています。
女子400mHがオリンピックで正式種目になったのは1984年のロス五輪からで、このときに54秒61で優勝したモロッコのナワル・エル・ムータワキルはアフリカ人女性初の五輪金メダリストとなりました。

近年大注目の種目

地味な種目である女子400mHですが、2019年は非常に盛り上がった種目でした。
後述しますが、1シーズンに2度も世界記録が更新され、世陸ドーハでも今大会屈指の好レースが展開。優勝したムハンマドは国際陸連の今年の顔であるアスリートオブザイヤーに選ばれました。
また、ドーハでは400mHの1位、2位がそのままマイルリレーにも出場しで優勝。女子ロングスプリントは400mHを中心に動いていると言っても過言ではありません。

女子400mHが楽しめるかどうかは結構重要

東京五輪では8/1の昼から始まり、決勝は8/5の昼です。
特に8/1は恐ろしく見所のない日程となっています(女子400mH予選、女子円盤投予選、男子棒高跳予選、男子800m予選、女子100mハードル予選、男子100m予備予選)。この日は競争率も低いと思いますので、適当に全部申し込んだら当たったという人も多いのではないでしょうか。
8/1は女子ヨンパーをメイン種目として捉えるとひとつみどころができて良いのではないかと思います。
また、8/5の昼もなかなかみどころのない日程です。決勝種目は女子ヨンパーだけで、あとは混成がメインの日程です。8/1も8/5も全体でみるとハズレの日でしょうが、女子ヨンパーさえ楽しめると東京五輪が良い思い出になるはず!!

女子400mHの競技特性

ハードルはコーナーの途中にも置かれていて、足が合わないと大きく失速する場合があります。全てのハードルを一定の歩幅でクリアすることは不可能で、途中で必ずリズムチェンジ(踏み切り足の切り替え)が行われます。特に最終コーナーの8台目から9台目にかけては疲れとスピードとでゴチャゴチャなハードリングになりやすく、ここで転倒や大失速が起こりやすい。
選手は大きく分けて2種類、前半で飛ばして後半は勢いでなんとかする『前半型』と、前半は押さえてリズム重視で後半の巻き返しを狙う『後半型』の選手に分けることができます。前半型の選手は調子が良いと好記録を出すが、どこかでバランスをくずしたりハードルにひっかけてリズムが崩れると最後の直線で一気に順位を落とすこともあるため、レース自体は最初から最後まで動きがあるのでけっこう面白いと思います
男子では400mと400mHの世界記録の差は3秒75(43.03と46.78)ですが、女子は4秒56(47.60と52.16)となっており、ハードルの高さは低くても女子選手にかかる負担は大きいことがわかります。

最も過酷な種目?

陸上で最も過酷な種目とされているのは800m400mHです。選手達がヘットヘトになっている様子はラストの直線を見れば痛いほどわかります
普通の人間ならフラットな400mを走るだけでも全身の力が抜けてまともに立つことが出来ないはず。400mHはハードルを越えないといけないのですが、実はこのハードル、ぶつかると足が腫れるほど重たいんです。超過酷な400mにさらに物理的なダメージが加わる400mHは陸上で最もやりたくない種目の1つでしょう。

 

注目はムハンマドとマクローフリンの2選手


出典:https://www.worldathletics.org(左がムハンマド、右がマクローフリン)

女子の400mHでチェックしておかないといけないのは、ダリア・ムハンマドシドニー・マクローフリンというアメリカの2選手です。
世陸ドーハでもバッチバチの勝負をしていたアメリカの2人は、東京五輪でも優勝候補筆頭です。

ダリア・ムハンマド

生年月日:1990年2月7日生
PB:52秒16(2019年、世界記録)
実績:2019世陸ドーハ(400mH優勝、4×400mR優勝)、2016リオ五輪(400mH優勝)、2017世陸ロンドン(400mH2位)、2013世陸モスクワ(400mH2位)


2019年の全米選手権で52秒20の世界記録(当時)をマークし、優勝候補として臨んだ世陸ドーハでは自らの世界記録を更新する52秒16で優勝した現役世界記録保持者。女子400mHで1シーズンに2度世界記録がマークされたのは1986年以来だとか。
2019年のアスリートオブザイヤーにも選ばれるなど、近年の陸上界を代表する選手の一人で、東京五輪では五輪連覇がかかっています。
細くて長い手足を使った走りが特徴的で、ロスのないスムーズなハードリングが持ち味です。前半から積極的に行くレースが多く、3・4コーナーでも先頭をキープできれば東京五輪でも優勝でしょう。
200mのベストは23秒35(2019年)、400mのベストは50秒60(2019年。)

 

シドニー・マクローフリン

生年月日:1999年8月7日生
PB:52秒23(2019年、世界歴代2位)
実績:2019世陸ドーハ(400mH2位、4×400mR優勝)

 
 
 
 
 
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ready to get back to it 🤟🏽 #letsgetit

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若干20歳で世陸優勝まであと一歩と迫った超新星。陸上界における東京五輪世代の代表のような選手ですので、これから日本でもテレビなどの露出が増えて来ると思われます。
世陸決勝でマークした52秒23は2018年までの世界記録(52秒34)を上回る記録で、世界歴代2位、世界パフォーマンス歴代3位です。
200mでは22秒39という記録を2019年にマークしていて、この記録はドーハ決勝で3位に相当しており、スピードタイプの選手と言えるでしょう
ドーハではムハンマドに負けはしてもその力は世界歴代トップクラス。ダイヤモンドリーグチューリッヒ大会ではムハンマドとの直接対決を制して優勝しています。
特徴はなんといってもその見た目。バッサバサのまつ毛とクッキリした太い眉毛が印象的で、アメリカの若者感まる出しです。
走りの方はムハンマドと比べると1台目がゆっくりな感じではあるものの、バックストレートくらいでは前に出ているような前半から飛ばすタイプ。世陸ドーハでは8台目で若干詰まって減速してしまいましたが、それがなければムハンマドを差していたかもしれない。

 

女子400mHの2019年世界ランキング

ランク 記録 選手 生年月日 備考
1 52.16 Dalilah
MUHAMMAD
USA 7-Feb-90 ドーハ1位
2 52.23 Sydney
MCLAUGHLIN
USA 7-Aug-99 ドーハ2位
3 53.11 Ashley
SPENCER
USA 8-Jun-93 ドーハ6位
4 53.73 Shamier
LITTLE
USA 20-Mar-95  
5 53.74 Rushell
CLAYTON
JAM 18-Oct-92 ドーハ3位
6 54.06 Lea
SPRUNGER
SUI 5-Mar-90 ドーハ4位
7 54.11 Zuzana
HEJNOVÁ
CZE 19-Dec-86 ドーハ5位
8 54.18 Tia-Adana
BELLE
BAR 15-Jun-96  
9 54.32 Sage
WATSON
CAN 20-Jun-94 ドーハ8位
10 54.45 Anna
RYZHYKOVA
UKR 24-Nov-89 ドーハ7位

アメリカが上位独占

上位4名がアメリカの選手で埋まっています。
ランキング4位のリトルは世陸北京の銀メダリストですが、ドーハでは代表落ちしています。東京五輪ではこの4選手の他に、ドーハ代表となった世陸ロンドン金メダリストのカーター(ランキング19位)、世陸北京銅メダリストのテイト(ランキング17位)らが代表争いにからむため、アメリカの3人目は誰が代表になるのかわかりませんし、誰が出てきても優勝候補となります。
また、ドーハの決勝メンバーは全員がトップ10に入っており、ドーハでは順当な決勝レースだったことが分かります。

東京五輪でのみどころは?

女子400mHの東京五輪でのみどころは…
マクローフリン伝説の始まりになるか!?

世界記録がでるかも!?
です。
ムハンマドとマクローフリンが揃って出場すれば、優勝はほぼ確実にどちらかでしょう。2人の直接対決と記録に期待する楽しみ方が東京五輪のヨンパーのみかたかと思います。

マクローフリンは伝説のランナーになるかも?

スプリントのスター選手と言えば、カール・ルイスウサイン・ボルトなどその名は陸上ファンいがいにも広く知られています。
女子選手では現在でも100,200mの世界記録保持者であるフローレンス・ジョイナーなんかは世間一般にも名前が知られるほどのスター選手です。
アリソン・フェリックスあたりは陸上ファンであれば知らない人はいないし、織田裕二が激押ししていたので世陸を観たことがある人であれば知っているでしょう。
これらの有名選手はどれもみんなフラットレースが専門です(カール・ルイスは幅もやってましたが)。ハードル専門でこれほどの知名度がある選手は今までいません。
が、もしかするとマクローフリンは東京五輪をきかっけにしてアリソンくらいの有名選手になるかも!?
なんならもっとバズるかも?
その最初の一歩目が東京五輪かもしれないのです。

マクローフリンの競技にはドラマ性がある

マクローフリンは1999年8月7日生まれ。東京五輪は若干20歳で迎えます。
年齢的にはこれからがピークですので、東京・パリ・ロス五輪と3回のオリンピックを選手生命の絶頂で迎えることになります
27歳で迎えるロス五輪が選手としての集大成になるでしょうが、それが地元アメリカというあたり、かなりのスター性を感じます。
現状、最大のライバルは世界記録保持者であるムハンマドかと思われますが、ムハンマドは1990年生まれですので今回の五輪が優勝を狙える最後のチャンスかと思われます。
先輩で世界記録保持者という最高の好敵手を迎え撃つ東京五輪。ここでマクローフリンが見事優勝すれば、それがマクローフリン伝説の始まりとなるでしょう。

マクローフリンは競技力がすごい

ムハンマドが現在のチャンピオンで世界記録保持者ですが、この世界記録は52秒16。ムハンマドのセカンドベストは52秒20です。これは世界パフォーマンス歴代1,2位で、ムハンマドの強さは間違いなく世界歴代トップです。
マクローフリンの記録は世界歴代2位となる52秒23。世界歴代3位は52秒34、2015年以降の3位は52.75と大きく差があります。
マクローフリンはムハンマド以外には敵なしでしょう。
男子100mではボルトの9秒58がすごすぎて世界歴代2位の9秒68をもつヨハン・ブレークのすごさがかすんでしまっていますが、現状のマクローフリンもこんな状態。

NBブームの火付け役?

アメリカのメーカーであるNBですが、陸上界ではいまいちその存在感を示せていません。トップ選手はやっぱりナイキ・アディダスとの契約が多く、マクローフリンはNBと契約する数少ないトップスプリンター。
NBも2028年のロス五輪のためにそろそろ本格的にシェアを拡大して行きたいところでしょう。NBが大きく宣伝広告を狙うと、マクローフリンの露出が増えてその名前を聞く機会も大きく増えることでしょう。

世界記録がみられるかも!?

マクローフリンとムハンマドという2018年までの世界記録を上回る記録を持つランナーが2人もいる女子ヨンパー。
これは世界記録決着もあり得ます!!
っていうか、マクローフリンかムハンマドのどちらかが世界記録を更新して決着する可能性は大いにありますので、普通にみるのであれば世界記録を期待してみるのが一番わかりやすくて面白い観戦方法だと思います。

 

 

 

 

とりあえずこんなところです。
女子ヨンパーはマニアック競技の中ではかなりみどころも多くて競技自体もおもしろいと思いますので、この日のチケットを持っている人はむしろラッキーかもしれません!!
東京五輪が近くなって注目選手が増えたらまた更新して行きたいと思っています…どうなるかわかりませんが。






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