ナイキの厚底シューズ『ヴェイパ―』禁止騒動に決着!!ホモロゲモデルで超高性能スパイクが買えるようになるかも!?

陸上ニュース

ナイキの厚底シューズ『ヴェイパー』が好記録を出し過ぎて禁止されるかもしれない問題に世界陸連が決着を付けました。

そんなニュースを普通に紹介してもしょうがないので、
トラック競技のスパイクがとんでもないことになるかも!?
っていう視点でこの厚底禁止問題を観てみます。

 

 

ヴェイパーの五輪での使用はOK!でもスパイクがピンチ?

とりあえずは今回のニュースをザックリ。
世界陸連が発表した内容としては大きく2つだ。

①ヴェイパーはすでに広く流通してるのでお咎めなし
②シューズのルールを新しくして4月30日から適用開始

ヴェイパーは混乱を避けるために使用OK

事の発端であるヴェイパーに関しては、すでに市販モデルが広く流通しています。世界のトップ選手だけが使用しているのであればすぐに規制も可能ですが、もしルールを改正すれば市民ランナーの大会(公認大会)にもそのルールが適用されることとなります
そうなると選手のみならず市民にまでその混乱が広がります。
現状のシューズを規制することは現実的には不可能という世界陸連の判断で、今回は現行のヴェイパーを基準として一線を引く新ルールを作ることになりました。
ってことで、現行のヴェイパーは新ルールでもOK!!
東京五輪での使用も問題なしとなりました。

プレート1枚なら助力じゃない!!

今回の問題、厚底うんぬんよりも『助力』になるシューズとはどのレベルからなのか?ということが問題でした。だって、旧ルールには厚さの決まりはないのだから。
で、後述しますが今回新ルールが決まったことによって『プレート1枚なら助力とみなさない』というのが世界陸連の解釈ということになります。
これ、現在のスパイクとシューズの実情を組み込んだちょうどいい落とし所だったように思います。

 

4月30日からはシューズの新ルールが適用される

とりあえずヴェイパーは東京五輪での使用は認められたかたちになります。
同時に、世界陸連はシューズ・スパイクの規格を見直し、4月30日から新ルールを適用すると発表しました。
新ルールの概要は以下

  • ソールの厚みは4cmまで
  • プレートは1枚まで
  • 4か月以上前からオンラインや店舗で購入可能なこと

この新ルールのポイントとしては
①現行のモデルをラインとして決められた。
②現在開発中の3枚プレートモデルは禁止!!
③なぜかスパイクにも影響がでる!!
っていうところでしょうか。

やりすぎを禁止したのが今回の新ルール

まず、このルールは『厚底禁止』というよりも、『やりたい放題だったので一定のルールを作った』って言う感じです。陸連の想定していないような変なシューズが出て来ることを予防する意味で今回のルールを作ったと解釈するのが良いと思います。
これまでのルールでは解釈次第で変なシューズをつくれたのですが、メーカーの紳士協定的なものによって普通のシューズしかありませんでした。そんななかで出てきたのがヴェイパーフライという新しい発想の厚底シューズ。好記録が連発する状況に『これはさすがにやりすぎでしょ』ってことに。

で、当然出てくるのがどこからがやりすぎなのか?という問題。
旧ルールでは『ルール上OKなんだからやりすぎじゃないでしょ』って言うことができました。まあ、3枚プレートとかになると誰の目にもやりすぎだったので、『これ以上やったらやりすぎってことでよろしく!!』と世界陸連が決めたのが今回の新ルールです。

これによって3枚プレートや超厚底といった『やりすぎモデル』を規制して、ヴェイパーの次期モデルである『ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%』を事実上使用禁止としました。

 

ヴェイパーよりもスパイクに大きな影響がでるかも!?

今回のルール改正は『ヴェイパー問題』に端を発した事と思われますが、なんとスパイクにもとばっちりがきそうです。
っていうか、もしかするとスパイクのプロトタイプを規制するのが本当の目的だったのかも?
ミズノ・アシックスと契約するほとんどの選手は市販品なんか履いていません。特に桐生選手の『ピンなしスパイク』は特注も特注。一方、今回問題となったナイキはほとんどの選手が市販モデルに見えるスパイクを履いています。実際のところ見た目以外は特注なのかもしれませんが。
このメーカーによるプロトタイプの扱いの違い、匂います。
この改正によって世界陸上のメインスポンサーとなったアシックスには非常に大きな負担となりそう。政治的な諸々を感じます…

春シーズンに大きな影響がある?

今回の改正では、これまで黙認されてきたプロトタイプの使用の禁止が明確に示されることとなりました。大会から4カ月以上前から一般に購入出来るものでないと使用できないルールとなったからです。このルールはスパイクにも適用されるため、もしかするとヴェイパー問題よりもよっぽど大きな影響があるかもしれません。

新ルールはスパイクにも適用されることから、春シーズンに大きな影響が出る可能性があります。というのも、新ルールは『5月の試合に使うスパイクは1月から市販されていないとダメ』と読めるからです。

ルールの運用をどうするかはまだわからないのですが、もしかすると…
春に新発売になったシューズはそのシーズンは使えない?
2月発売予定の2020年モデルは5月の公式大会ではまだ4カ月たっていないので使用禁止になるも?
場合によってはインハイ予選やインカレで使えないということに。
それどころか、6月の日本選手権で使うスパイクは2月に市販として発売されていないとダメなのか!?

そうなると少なくとも桐生選手のスパイクはアウトでしょう。2月に市販モデルが出て来るのであれば楽しみですが、さすがにそんな急に発売出来るとは思えません。っていうか、ミズノ・アシックスのほとんどの選手がアウトな気がします。
オリンピック本戦には間に合うかもしれませんが、その選考会で使うスパイクがアウトとなればとんでもない問題です。
これ、ヴェイパーがどうこうより1000倍大きな問題だと思うのですが…

 

 

ホモロゲモデルが買えるかもしれないぞ!!

今回の改正によって、プロトタイプの使用が実質的に禁止されました。
つまり、世陸や五輪で使用されるスパイクは『市販されたモデル』である必要があるのです。
この話、陸上やスポーツに限ると結構死活問題な気がするかもしれませんが、モータースポーツではよくある話です。

なんちゃって市販モデルのホモロゲモデル

市販モデルとはなんだ?てことについて説明する為にちょっとだけ車の話をします。

F1WRCWECというのが世界3台モータースポーツです。
細かいことはいいとして、WRC(世界ラリー選手権)という競技では市販車ベースの車両を使うことが定められています。
ラリーカーはこちら↓

出典:https://toyotagazooracing.com/jp/wrc/cars/2018.html

ラリーカーは市販モデルである必要があり、この決まりをホモロゲ―ション(ホモロゲ)と呼びます。現在のホモロゲは『連続した12カ月間に2500台以上、車種全体で2万5000台以上という生産台数が必要』とされています。ラリーカーはホモロゲをクリアした車ということ。

つまり、
世界ラリー選手権で使われているレーシングカーは市販車
ってことになっているのです。
上の画像の車をみて市販車だって言う人はいないでしょう。完全にレースのために作られた特注モデルです。でも、ルール的にはこれも市販車ベースっていうことになっているのです。

ここで問題が。
本当に市販車ベースにやるとドアの枚数とかサスペンションの取り付け位置とかがレースカーに不都合だったりするのす。そのため、ラリーカーのベース用としてドア枚数を減らしたり特別なエンジンを載せたエボリューションモデルである『ホモロゲモデル』というのが出てきます。
このホモロゲモデルを規定台数分だけ作って関連会社とかに売ると、それはもうルール的には市販車ってことになるのです。

ホモロゲモデルで有名なのがランエボこと『ランサーエボリューション』シリーズ。小型セダンにハイパワーエンジンを積んで4輪駆動にしてた超高性能モデル。あれももともとはホモロゲを取得する為に限定車として生産・販売されたものです。ベースモデルのランサーとはまるっきり別モノの車ですが、同じ車種としてカウントされます。

ソニックスプリント・エボリューションが発売される!?

2020年のアシックスのスパイクのフラッグシップモデルは『ソニックスプリント』です。


このモデルはザックリ言うと『ピンなしスパイクにピンを付けたモデル』で、事実上のピンなしスパイクの市販モデルです。
傾斜こそ桐生モデルとは違うものの、ピンを4本だけ残してピンなしスパイクを市販向けにデチューンしたモデルだと言えます。
桐生選手のピンなしスパイクを市販モデルとして発売するとすれば、このソニックスプリントエリート2がベースとなるでしょう。ランエボでいうところのランサーがこれ。

で、桐生選手が5月以降プロトタイプであるピンなしスパイクを使用する為には、急ピッチで開発して出来るだけ早く(五輪で使うには遅くとも4月に)ピンなしスパイクを市販モデルとして発売する必要があります
ってことは、極近い将来
ソニックスプリントエリート2ベースにしたピンなしのホモロゲモデル『ソニックスプリント・エボリューション』が販売される!!
かも?
ただ、販売されたという事実ができればいいだけなので20万円とかで実質的には普通の人には買えないやつかもしれませんが。ユーチューバーなら買ってペイするかも。

いままでのモヤモヤが解消されるぞ!!

今回の改正は桐生選手にとっては寝耳に水というか迷惑な話かもしれませんが、一般人にとっては『トップアスリートと同じスパイクを履けるチャンス』です。
ミズノ・アシックスはこれまでずっと特注モデルをトップ選手に与えて来ました。

私の世代だと『末續モデル』が印象的です。世界陸上でナンバ走りを駆使して200mで銅メダルを獲得したあの特注スパイクに誰もが憧れました。
しかし、ジオマッハとして市販された末續風モデルはなかなか散々なスパイクでした。あのときのガッカリ感は今でも覚えています。
ルール的にアウトでも実用的にはプロトタイプが許されていた陸上界にはこういうモヤモヤがありましたが、プロトタイプが禁止されればトップ選手とまるっきり同じモデルをホモロゲモデルとして買えるようになるのです!!
値段はとんでもないことになりそうですが、たぶんプレミアが付くので、履かずにコレクションとして保管しておけば数十年後にオークションで数倍の値段で売れると思います。

 

 

 

 

どうでもよかったヴェイパー問題。すったもんだで一件落着!!
とはいかないようです。

ナイキという大企業がただ不利になるだけの規制を甘んじて受けるはずがありません。やっぱり裏がありそう。もといスパイクにも影響がありそうです。
良い方向に影響が出ればいいですが、総合すると日本選手にとっては不利な改正になりそうな感じです。
一般人としてはプロトタイプが買える環境になること自体は非常に喜ばしいことです。一方で、メーカーの負担は増えるでしょう。
しばらくは各メーカーの動きに注目です。






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