<幅跳びのポイント>第6-1回:幅跳びのテクニック①(助走編)

テクニック(助走編)

専門技術は幅跳びの難しさであり楽しさでもあります。
どんなに足の速い短距離選手であっても、専門的な技術がないと幅跳びでは平凡な記録しか残せないでしょう。
幅跳び選手を幅跳び選手たらしめているこの専門的なテクニックにはどんなものがあるのでしょうか?
幅跳びにはいろいろな技術(テクニック)があり、その人の跳躍スタイルによっても必要なテクニックは変わってきます。それでも大体共通した考え方と動きがあるものなのです。

今回は
幅跳びのテクニック①(助走編)
をテーマにご紹介します。

今回は幅跳びシリーズ第6回ですが、ここから3回はこれさえ押さえておけばそれっぽい跳躍ができるはず!っていうテクニックを局面ごとにまとめました。
第6-1回は助走編
第6-2回は踏み切り編
第6-3回は着地編
です。これさえやっておけばたぶん6mを跳べるし、7mも跳べるかもしれません。

 

 

 

助走テクニック八百万

助走はただ走るだけではありません。
助走に安定感がないと、どんなに跳んでもファールで記録なしになってしまったり、助走はスピードが乗っていたのに踏み切り板に合わせたせいで減速してしまったりするのが幅跳びの難しいところ
幅跳びを始めたばかりのころは練習跳躍ですら3本に1本くらいしか足が合わなかったりして、体力ばかり消耗してぜんぜん跳躍の練習にならないなんていうこともあろうかと思います。
助走ではざっくりと『スピードを出す系』『安定させる系』『踏み切り準備系』の3種類のテクニックが必要になります。

マーカーを2つ置く(スピード・安定)

助走のマーカーは2つまで使用が許されています。3つ使ったらダメ。
高校生くらいだとマーカーを置いていない、あるいは1つしか置いていないという選手も結構いますが、マーカーは必ず2つ置きましょう
マーカーを置く理由はたぶん3つだと思います。
①助走距離を忘れないようにする
②中間マークを踏んで助走のブレを修正する
③踏み切り板を意識しないようにする
だだ置くのではなく、この3つを意識して必要な場所にマーカーを置くと助走の質がアップすることでしょう。
そもそもマーカー、どこに置いていますか?
これは考え方次第なのでどこに置こうが間違いということはありませんが、だいたいの選手がスタート位置中間位置踏み切り直前の3箇所のうちどれか2箇所に置いていると思います。
マーカーを2つしか使えないとなると、スタート位置なんてのは距離を覚えておけば必要ないので、中間位置と踏み切り直前に置くのが合理的でしょう
ちなみに私はスタート位置と中間位置に置いています。

中間マークは必須

マーカーは2つ置けますが、中間マークは必須だと思います。中間ってどこだよってこともありますが、中間は中間です。
私の場合は40m程度の助走距離で27~28mくらいのところに中間マークを置くようにしていました。その日の調子や風でマークの位置はちょっと変わります。中間マークまではゆったりとリズムだけで走って、マークからリズムアップでスピードを調整するというスタイルです。
単純に、中間マークをちゃんと踏むことで全体の歩幅が修正できるというメリットもあります。
リズムの切り替えに使うもよし、歩幅の確認に使うもよし、調子の良し悪しを判断するのに使うもよし、なんにしたって中間マークは必須でしょう。

意外と助走距離は忘れる

スタンディングスタートであればスタート位置に置く必要はないっちゃないと思います。助走距離を覚えておけばマークは必要ありませんから。
ただ、風だったり調子だったりで助走距離を変えようと思った時に、『あれ?38m50だったか70だったかどっちだっけ?』ってことがあり得ます。私はなんか足が合わないなと思っていたら1m間違えていたことがあります。それでも中間マークがあればなんとかなるのですが、バチっと決めたいならスタート位置に置いておいた方がいいかも。

 

スタートのやり方を決めておく(安定)

スタートのルーティンを決めておきましょう。ルーティンといっても必ずしも手足ブラブラとか反ったりといったわかりやすい動きをする必要はありません。何もせずに前を見て一旦停止してからスタートを切るというのもルーティンになります。
とにかくいつでも同じ動きを再現できるようにしましょう
スキップとか早歩きをしながらスタートするローリングスタートでも、止まってからスタートするスタンディングスタートでも、やり方はなんでもいいと思います。

ローリングスタートとスタンディングスタート

ローリングでもスタンディングでもどっちでもいいのですが、それぞれのメリットデメリットをちょっとだけご紹介します。
まずローリングスタートですが、世界ではエチェバリア(キューバ)トービアス・モントラー(スウェーデン)がローリングスタートです。

なんというか、リズム重視で細かいことは気にせずいい跳躍がはまれば大跳躍みたいなスタイルに合うイメージなのがローリング。男のロマンが詰まった幅跳びスタイルでもあり、誰もが一度は試して見たことがあると思います。最初の1歩目から歩幅がずれるリスクがあり、ファールの可能性が高くなるなんてのは考えなくてもわかること。どうせ中間マークで歩幅調整するんだから最初はなんだっていいくらいの割り切りが必要かもしれません
メリットはリズムとかっこよさ、デメリットは不安定なことでしょうか。

一方、スタンディングスタートは世界レベルでも部活レベルでもほとんどの選手が採用しているスタート方法です。スタートの足は固定しているので1歩目からずれるというリスクはありません。しかし、止まった状態からのスタートになるのでローリングに比べれば加速をがんばる必要はあります。助走に安定を求めるのであれば間違いなくスタンディングがオススメ。
メリットは安定感。デメリットはスピードアップにエネルギーが必要なことでしょうか。

ルーティンはなんでもいい

youtubeで幅跳び動画をいっぱい観ましょう。で、好きな選手のルーティンをマネしましょう。動画を観ればわかると思いますが、ルーティンは選手によってやっていることはさまざまです。結局はなにをやっても関係ないってこと。
なんとなくしっくりくるやり方やかっこいいやり方を考えましょう。恥ずかしければなにもやらずに静止っていうのも逆にかっこいいかも。

 

スピードは徐々に上げる(スピード)

『ゆっくりとスピードを上げる』というのがけっこう重要なテクニックです。
助走ではいかにスピードを出せるかが重要になります。がんばって速く走ることを意識すると、どうしても序盤から早めにスピードを乗せたくなってしまうもの。
中学生の助走をみればわかると思いますが、1歩目から思いっきりダッシュで走り始める選手が結構います。これ、ダメです。
助走で大切なスピードっていうのは疾走速度ではなく『跳び出しのスピード』です。早くトップスピードを出してしまうと、踏み切り前の減速が大きくなってしまうのです。
助走ではトップスピードを出す位置をコントローして、できるだけ奥でトップスピードになるようにすることが大切。
最初の5歩くらいはゆったりと、中間くらいからスピードを意識し、踏み切り直前にトップスピードがくるようにスピードをコントロールしましょう
イメージ的には、徐々にスピードをあげる意識で走るとうまくいきます。

 

フラットに接地する(安定)

幅跳びの助走はフラットが基本です。蹴らずに置く感じで走りましょう。
わかりやすいイメージは『設置の直前に前側から見て足の裏が見えるように走る』というもの。これを意識するとトゥアップをしたいい感じの接地ができるようになります。
あるいは『階段を上る感じで走る』イメージでも良いと思います。階段を上る時には自然とトゥアップしますから。
いずれにしても真上から真下に力を加える感覚で走りましょう。スネの方向に押す走り。
フラット接地で真上から地面を押す感覚の助走をすると、大きな筋肉を使って走ることが出来るので助走の安定感が増します。また、余裕のある助走ができるようになってマークを見てもブレることなくスムーズに助走できるでしょう。
フラットだと加速が遅くなりますが、助走はラストで最もスピードが乗るようにすればいいのであまり気にせずのんびり加速しましょう。

 

踏み切り4歩前くらいにマーカーを置く(安定・踏み切り)

助走の根幹にかかわるテクニックです。
4歩前でも5歩前でも6歩前でも3歩前でもいいと思いますが、中間マークより踏み切り側の位置で、踏み切り直前にマーカーを置く選手もいます。たぶん全体の1割くらいの選手が置いているような感じです。
助走終盤ではどうしても踏み切り板に目線がいきがちで、板を意識して大きく減速してしまったり、下を向いたせいで踏み切りが弱くなったりと、板を見るとろくなことがありません。『踏み切りでの減速が…』って話は全部この時点での減速の話で、ここでの減速をいかに減らすかというのが幅跳びの命題です
踏み切り直前にマーカーを置くことで『ここを見るのを最後に目線をあげる』と決めておくことができ、踏み切り動作に集中できるようになります。結果的に足合わせの減速が抑えられ、跳躍距離が伸びます
ただ、欠点が1つ。踏み切り板を見ないで跳んでいるのでファールしたことに気が付かない場合がある。個人的には大きくファールするくらいなら足を合わせてでも記録を残したほうがマシという気がしないでもない。
私もここにマークを置いたこともありますが、かえって踏み切りに集中できないし、この時点でマーカーを踏めなかったとしてももはや修正不可能で手遅れだと判断してやめました。

 

最後は重心を落とす!!(踏み切り)

踏み切り技術ではなくて助走技術として紹介します。
ボールを高く投げるときって、上投げじゃなくて下投げで投げません?
野球をやっている人だとどうだかわかりませんが、普通の人であればアンダーかアンダー気味のサイドから投げた方が高いところまでボールを投げられるような気がするんですが、どうでしょう。
これはつまり、ボールを下から上に移動させる時間(距離)を増やすことで、上向きの力をより多く加えられるからなんだと思います。
同じように、同じ重心位置で踏み切ったとしても、下から重心を持ってきているときのほうがより高く飛び出すことができます。
わかりにくいですがこんなイメージ。

踏み切りでどうがんばるかというのも大切ですが、踏み切りをする直前に重心位置をしっかり下げておくということが幅跳びでは超大切です。踏み切り準備動作では、『重心位置を下げる』という概念を取り入れましょう。
これができるようになると、っていうかこの概念を取り入れると『フワっと浮く跳躍』ができるようになるはずです。

タンタターンは魔法のリズム

タンタターンだけやっておけば6mくらいは跳べます。
タンタターンはこれを意識するだけでフラット接地や重心を下げた姿勢などが勝手にできてしまうという魔法のリズムなのです
細かいことはシリーズ第2回(助走編)で紹介していますのでそちらを見てください。


タンは歩幅が長く、は歩幅が短いということを表したのがこのタンタターンのリズムです。
歩幅が伸びれば重心が下がり、歩幅が縮めば重心は上がります。『落とした重心を踏切で一気に上げる』という幅跳びで重要な上下方向の重心移動テクニックがこのリズムを使えば身につくのです。

タンタターンの作り方

タンタターンってのはイメージではなく踏み切り前3歩の実際のリズムです。ターンは踏み切りなので、その前の2歩をタンタのリズムにするというテクニック。
このリズムの作り方はいろいろありますが、簡単なやりかたは2つ
1つ目は『2歩前でわざと脚を流す』というやりかた。
2つ目は『1歩前を極端に弱く接地する』というやりかた。

イメージ的には上の図みたいになります。赤が踏み切り足。後傾してるのは気にしないで下さい。
タンで脚を流すと必然的に歩幅が長くなります。
タで接地を弱くすると必然的に歩幅は短くなります。
両方をやればしっかりとこの準備動作ができるようになるというもの。もちろん、どっちかだけでも十分なリズムが作れると思います。

タンで跳んでしまうのはNG

タンタタンを作ろうとしてタンで跳んでしまうのはNGです。
そのやりかたでも歩幅が伸びるので、たしかにリズムはタンタターンになります。しかし、タンで跳んでしまうとここで一回重心が上がってしまいます。そうなると踏み切りにかけて上下のブレが大きくなりすぎるので強い踏み切りができません。
あくまでも重心を下げつつ歩幅を伸ばすのが重要ですので、強く踏むのではなくて脚を流すイメージで歩幅を伸ばすようにしましょう。

 

 

ってことで、助走のテクニックでした。
正直あんまり重要じゃないと思っている助走ですが、並べてみるといろいろテクニックがあるもんですね。
フラットにリズムよく走れればそれでいいような気もしますが、細かいことをやりはじめるといくらでも修正点がでてくるから不思議。
なにが正解ってこともないとは思いますが、今回羅列したテクニックは基本的なものなので、誰が使ってもある程度効果があると思います。






Twitterで更新をお知らせしています↓