400mの走り方の基本とコツ

短距離の基本, 足を速くする方法

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一言で『短距離』といってもショートスプリント(100m,200m)ロングスプリント(400m)に分かれています。
いわゆる無酸素運動であるショートスプリントに対し、400mは無酸素の限界とされる40秒を超える時間走り続けるため、無酸素と有酸素の両方の能力が求められる特殊な種目と言えます。
それゆえに、400mは単純な走力だけでなく特有の走り方が必要なのです。

ってことで今回は
初心者・中級者のための400mの走り方の基本とコツ
についてご紹介。
400mは全力疾走で頑張るだけでは最後まで走りきれずに好記録は望めない!あえてペースを落とすことが結果につながるという複雑な種目なのです。
複雑ゆえに、走り方を理解してレースを組み立てることができれば他の短距離種目よりも大きなタイムの向上が狙える可能性がある!!
今回は、まだ400mを始めたばかりの選手や、専門的に400mに取り組むべきか決まっていない中級者にむけて、これだけは絶対に押さえておきたいっていう『400mの基本トコツ』をご紹介して行きます。

 

 

400mはコツはペース配分とスピード!!

400mは短距離で最も距離の長い種目で、そこそこ速い選手でも50秒くらいかかります。
で、人間が無酸素運動(全力疾走)できる限界はだいたい40秒程度といわれています。
つまり、『全力疾走だと走りきれない』というのが400mの最大の特徴です
400mは他の種目に比べると明らかに過酷で、走ったあとには乳酸による激しい筋肉の痛みである『ケツ割れ』がおこったり、ショートスプリントと違って激しい息切れで立たっていられなくなるなど、体にいろんな反応が出ます。
そして、この反応にどう対処していくかが400mのポイント。
ここでは基本的なコツを2つ紹介していきます。

コツ① ペース配分が400mの『肝』と心得ろ!!

最初のコツは『ペース配分』です。
『ペース配分』こそが400mの結果を決める!!
といっても過言ではありません。
前述の通り、400mは他のスプリント種目と違って全力疾走で走り切ることは不可能です。そこで必要になるのがペース配分。
400mでは走力が劣っていてもペース配分がうまくいけば上位に入れる可能性があり、逆に、走力があったとしても負ける可能性があります。
もちろん、『単純な走力』が大事ではあることは前提ですが、走力を最大限引き出すペース配分こそが400mの肝だと言えます。

400mのどこに力を配分する?前半型と後半型で考えよう

まずは、単純にどこで飛ばすかっていう『頑張りの配分』としてのペース配分です。
400mのペースを考えると『前半頑張って後半潰れるか?前半抑えて後半頑張るか?』っというどちらかを選ぶことになります。
ラストに大きく失速しても勝てるだけの貯金を前半でつくるのか、前半で遅れてもラストの直線で追いあげられるだけの体力を残しておくのか。これを前半型後半型と言います。
どちらが良いかは一概には言えないのですが、一般に前半型の方が記録が出やすいとされていて、大学くらいになると前半からガンガン行く選手の方が多くなる気がします。また、近年はトップ選手になると800mと両立している選手はほとんどおらず、400mではスタミナよりもスピードが重視されている感じがします。

ストライドでペースをコントロールしよう

スピード=ピッチ×ストライドっというのは陸上競技の常識。
で、実際には400mでスピードの変化に応じて変わるのはピッチではなくストライドです。そういうものなんです。
ピッチは疲れていてもあまり変化せず、ストライドの低下によって失速が起こります。つまり、後半で失速する人は後半でストライドが短くなっているということ。
400mでペース配分をするために意識するべきなのはストライドで、前半型なら失速する後半のストライドを意識的に頑張る必要があるし、後半型なら飛ばしすぎないように前半のストライドを意識的に抑える必要があります。
また、
400mでは『ギアチェンジ』という言葉が多く使われます。「200m通過したらギアチェンジ」とか、「水壕でギアチェンジ」とか。
これは『意識的に強く踏むことでストライドを維持する』ことの比喩で、疲れてストライドが落ち込み始めた局面で意識的に頑張ってストライドを維持しようという意味です。
一般に、前半型は疲れるのが早いので200mくらいでギアチェンジをすることになり、後半型はコーナー途中の250mくらいでギアチェンジすることになると思います。
いずれにせよ、400mでペースを決めるのはストライドということを頭に入れておきましょう。

 

 

コツ② 100mの走力が勝負を決めると心得ろ!!

2つ目のコツは100mのようにスピードを重視すること。
400mであっても100mのスピードが結果を決める!!
といっても過言ではありません。
100mで勝負できないから400mにしたと言う人も多いでしょうが、残念ながら400mであっても100mのスプリント能力は絶対に必要です!
結局、陸上競技の最重要ポイントはスピードなんです。スピードから逃げる事はできません。
『400mだから筋持久力が大事』っていうのは間違っていないのですが、それはあくまでスピードがあってこその話。優先すべきはスピードです。
400mであっても勝負の決め手になるのは100mの走力だ!!

400m選手の100mの記録と失速量

なにも根性論でこんなこと言ってるんじゃありません。
400mであっても100mの走力が大事ってことがわかるように、とりあえず記録のデータをご覧ください。

男子世界記録:43秒03(ウェイド・ヴァンニーキルク,2016)
男子日本記録:44秒78(高野進,1991)
女子世界記録:47秒60(マリタ・コッホ,1985)
女子日本記録:51秒75(丹野麻美,2008)

400m選手の100m,200mの記録と400mの記録との比較
選手 100m 200m 400m 100-400
失速分
200-400
失速分
ヴァン二―キルク 9秒94 19秒84 43秒03 -3秒27
(39秒76)
3秒35
(39秒68)
マイケル・ジョンソン 10秒09 19秒32 43秒18 -2秒82
(43秒60)
-4秒54
(38秒64)
金丸祐 10秒32 20秒69 45秒16 -3秒88
(41秒28)
-3秒78
(41秒 368)
ショーナ・ミラー 10秒98 21秒74 48秒36 -4秒44
(43秒92)
-4秒88
(43秒48)
A・フェリックス 10秒89 21秒69 49秒26 -5秒70
(43秒56)
-5秒88
(43秒38)
100,200mのPBと400mのPBから、400mだとどれだけ失速しているかを計算!!
男子のトップ選手では3秒分くらい、女子では5秒分くらいの失速がおこっている。
男子の部活レベルなら5秒以上の失速は覚悟しよう!!

有名選手の100m,200m,400mの記録と、400mではどれだけ失速しているかを計算した表です。
筋持久力のバケモノ達であっても400mでは後半で大きく失速してしまうことが分かると思います。人類トップの筋持久力を持っていてもこれだけ失速するのですから、部活レベルの選手であればもっと大きく失速することは想像に難くないでしょう。
たとえば、11秒5のPBであれば4をかけるとで46秒00。4秒失速すれば50秒になりますので、理論的には49秒台を狙うには最低でも11秒5の走力は必要です!!
ってことは、400mで県上位に入りたいなら100mで11秒中盤の走力は必要ということ。なかなか厳しいですね。
ちなみに幅跳びでも7m跳びたければそれくらいの走力が必要です。

 

 

400mが速い選手は100mも速い

男子400mの世界記録保持者であるヴァン二ーキルクの100mの公認記録はなんと9秒94!!
マイケル・ジョンソンは10秒09アリソン・フェリックスは10秒89
そして、日本選手権400m11連覇の金丸選手は10秒32で走って国体の100mで優勝しています。管理人も生で観た金丸選手の千葉インターハイ4継での走りには衝撃を受けました…
って感じで、400mのトップ選手は100mでも専門の選手と遜色ないレベルの走力をもっています。部活レベルではここまで極端なことにはならないのですが、県大会出場を目指すなら11秒台では走りたい。県上位を目指すなら11秒前半の走力が必要です!!

走力的に男子なら50秒が大きな壁になる!!

100mと違って400mの記録はいまいちピンとこないと思いますが、部活レベルなら50秒を切れたらかなり速いです!!
そして部活レベルの400mだと50秒の壁があります。49秒台が出れれば大きな大会でも胸を張って闊歩できます。
っというのも、49秒台で走るには11秒前半の走力は必要。100m専門の選手であっても11秒前半で安定して走れれば県大会で予選突破が狙えるし、市レベルの小さい大会なら優勝することもあります。
そんなことから、400mで50秒を切ると言うのは現実的にはかなり大きな壁で、走力的にも練習でどうこうできる限界に近いです。
100m10秒台と違って、一般には49秒台のすごさがわかりにくですが、もし周りに49秒台だという人がいたらその人はなかなかのツワモノです。

 

 

 

トップ選手から学ぶ400mの走り方

「言うは易し、行うは難し」ですが、トップ選手の走りをいくつかご紹介します。考えるより見るのが早い。
補足として…それぞれ特徴的なフォームではあるのですが、共通しているのは短時間の接地スムーズな重心移動です。どんなフォームで走ってもいいのですが、この2つのポイントだけは絶対に無視してはいけません。

マイケル・ジョンソン

まずは陸上界のレジェンド、マイケル・ジョンソンです。画質がだいぶ荒くて観にくいのですが、非常に参考になります。

胸を張ったフォームで力感なくピッチを刻み、後半でグングン伸びるような走りはピッチ型(後半型)の理想系といえます。
なんならちょっと後傾しているくらいの上体に対し、非常に短い接地で脚がグイグイ前に出てくるのが唯一無二の特徴。真似しようと思ってできるものではないのですが、ピッチで回すならMJを意識して丁寧な接地でブレーキロスを少なくする意識を持つといいでしょう。

ウエイド・ヴァンニーキルク

MJの記録を破った現世快記録保持者がヴァンニーキルク。100m9秒台のスピードを生かす足裁きに注目。

大きなストライドで若干足を流しながらも、強く足を切り返して前に持ってくる走りが特徴です。
いわゆる「前捌き」ではなく足を大きく蹴りあげてグルっと回すタイプで、大きなストライドが特徴です。
一見すると「流れている」ように見えますが、足を引き戻すスピードが後半になっても落ちずに終盤になっても足が体から遅れることなく、接地の瞬間にはしっかり地面を真上から踏めています
持ち味である9秒台のスピードをラストまで維持する為の独特な足捌きは、前半型の選手にとってこれ以上にないお手本になると思います。
彼の走りからは、レース後半でのフォーム維持と引きつけ動作の重要性がみて取れます。
足が流れること自体が必ずしも悪いのではなく、流れていても接地までに足を前までもってきて次の一歩を正確に踏めさえすれば『流れていても速い走り』ができるのです。

アリソン・フェリックス

五輪11個、世陸12個のメダルをとっているアリソン・フェリックスは陸上ch調べで世界一美しいフォームです。

100m,200mでもメダルを取るなどマルチスプリンターと活躍したアリソンですが、400mの走りは桁違いに綺麗です。
空中で足が回っているように見えるほどに短い接地で長い足がグルグル回るのが特徴です。
まさにカモシカのような走り!!
胸を張って全身のバネを使って力を推進力に変えているため頭が全くブレない!ず、後半のスムーズさも特筆もので、他の選手が疲れてブレが大きくなる局面でも一人だけ滑るようにスムーズな走りをします。

 

 

400mで選ぶべきスパイクの特徴は?

短距離スパイクはプレートが硬さ』『クッションの厚み』の組み合わせでショートスプリント用とロングスプリント用に分けることができます。
100m向きほど高反発でスピードを出しやすく、400m向きになるほど足への負担が少なくなります。
硬くてクッションが薄いほど100m向き、軟らかくてクッションがあるほど400m向きと考えてOK。ロングスプリント向きのスパイクになるほどスピードが出にくいものの足への負担が軽くなるので、筋力やスタイルによってスパイクを選ぶと良いと思います。

扱いやすさを重視するなら国産がおすすめ

アシックス・ミズノの両メーカーからロングスプリント向けのスパイクが出ています。
国産のロングスプリント向けスパイクは安定感が非常に高く、プレートも軟らかいので非常に扱いやすいのが特徴
最近はメーカーが適性距離を指定することは少なくなりましたが、筋力等のレベルによっても適切なスパイクがあります!ってことで、初心者・中級者でも失敗しない簡単な選び方をご紹介します。

軟らかくて扱いやすい中級者向けスパイク

アシックスのブレード系、ミズノのXレーザーネクストがロングスプリント向けに販売されています。
このスパイクの特徴は…
・プレートが軟らかくて小さい力で曲げられる
・クッションが多めで足に優しい
・ソールの安定性が高い
っといった感じで、とにかく扱いやすくて足への負担が少ないのが良いところです。
反発自体は大きくないのですが、筋力の弱い女子選手や、初心者が履いても扱える性格で、安定感が高くてかかとを着いて走ってもブレにくい。
つまり、初心者が400mで使うならコレ!!

筋力があるなら上級者向けの方がスピードが出る

ミズノの上級者向けのクロノインクスXレーザーエリートは筋力さえあれば400mに最適なスパイクと言えます。短距離オールラウンドであるクロノインクスに対して、400mに特化して開発されたのがXレーザーエリート。どちらも固定ピン。
クロノインクスは100mから400mさらにはハードルでもトップ選手が愛用している短距離最強のスパイク。特に400mではインターハイ決勝でほぼ全員が履いていたことがあるほどの熱い支持があります。
そしてそんなインクスよりも400mに特化して開発されたというのがXレーザーエリート。
具体的に言えば、インクスよりXレーザーエリートの方が軟らかくなっています。
どちらも中級者向けよりクッションが薄くなっているのでスピードが出やすくなっているのですが、かかとがフラットになっていて安定感が非常に高く、接地技術や筋力がある選手には最高のスパイクになるでしょう。

 

 

パワーがあるなら海外メーカーもあり

世界的に見ればナイキ・アディダスのほうがメジャーです。とはいえ、丁寧に設計されている感じのある国産に比べると海外メーカーのスパイクはかなり個性的。
海外製のスパイクはクセはあるけど扱えれば強い反発が得られるのが特徴
ものすごいつま先接地だったりパワーがあること前提のプレートだったりするので合わない人には全く合わないと思いますが、足が合うならためしてみるかちはあるかも。

ズーム400とアディゼロフィネス

海外メーカーのスパイクは国産と比べると硬いというのが一般的ですが、ズーム400フィネスに関しては硬さが控えめで国産と同じような軟らかさです。
柔らかめとは言うものの、海外スパイクは中級者向けとか上級者向けとかの区分がないため、このモデルは国産に当てはめれば上級者向け並みのクッションや反発特性です。
クセがあるので選手の技量によっては扱いにくさを感じるかもしれませんが、短い接地でパンパン足を回せる技術や筋力があれば、国産よりもスムーズな足運びだったり強い反発がもらえるかもしれません。

 

 

今回のまとめ

400mは短距離のなかで特殊な種目です。
無酸素運動だけでは走りきれない距離で、いかにロスなく走り切るかというのが大切。
それゆえ、最大のポイントとなるのはいかにうまくペース配分をするかで、前半からガンガン行く前半型と、後半で巻き返す後半型に分かれます。
ピッチとストライドの関係でスピードが決まるのですが、失速というのは往々にしてストライドの低下が原因でおこります。ストライドをうまくコントロールすことができるようになれば、ペース配分も自在になるはず。
また、400mとはいえ短距離であることは変わりません。陸上競技は結局のところ100mの走力が大事。世界でも日本でも、トップ選手は100m専門の選手に匹敵するかむしろ上回るほどのスピードを持っているのです。
そんなことで、大台である49秒台を出そうと思うなら、11秒前半くらいの走力が必要。400mでいい結果を残したいのであれば100mのスピードを磨くというのは外せません。
100mに比べるとスピードが遅くなるのでフォームを意識しやすいところはあるのですが、世界のトップ選手を見ても特徴はまちまち。しかし、良いフォームに共通するのは短い接地とスムーズな重心移動
スパイクをみてみると、クッション性が高い国産中級者向けがおすすめ。技術があるのでれば、クロノインクスや海外メーカーのスパイクを使うことで好記録が狙えるかも!?






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