<幅跳びのポイント>第6-2回:幅跳びのテクニック②(踏み切り編)

テクニック(踏み切り編)

専門技術は幅跳びの難しさであり楽しさでもあります。
どんなに足の速い短距離選手であっても、専門的な技術がないと幅跳びでは平凡な記録しか残せないでしょう。
幅跳び選手を幅跳び選手たらしめているこの専門的なテクニックにはどんなものがあるのでしょうか?
幅跳びにはいろいろな技術(テクニック)があり、その人の跳躍スタイルによっても必要なテクニックは変わってきます。それでも大体共通した考え方と動きがあるものなのです。

今回は
幅跳びのテクニック②(踏み切り編)
をテーマにご紹介します。

今回も前回に引き続き幅跳びシリーズ第6回で、第6回のシリーズではこれさえ押さえておけばそれっぽい跳躍ができるはず!っていうテクニックを局面ごとにまとめました。
第6-1回は助走編
第6-2回は踏み切り編
第6-3回は着地編
です。これさえやっておけばたぶん6mを跳べるし、7mも跳べるかもしれません。

 

 

 

踏み切りテクニック八百万

走り幅跳びで最も重要な局面である踏み切り。
どんなに足の速い選手であってもこの踏み切りが下手だと記録はでません。逆に、踏み切りさえうまい事できればたぶん6mくらいは跳べます
幅跳びのポイントシリーズでも第1回に踏切についてまとめていますので、ざっくりとした踏み切りのやりかたについては第1回を見て下さい。

今回はそのなかでも細かいテクニックについて注目して、強い踏み切りやスムーズな踏切りを実現する為のをまとめました。

膝を伸ばしてかかとから接地

個人的には一番のポイントだと思っています。が、あんまり言われていないのでそれほど重要ではないのかも。ほんとうのところがどうなのかはわからないので、偉い先生にでも聞いてみてください。
踏み切り足の膝はほぼ完全に伸びた状態にしてかかとから接地するとメチャクチャ跳べます
私はこれに気が付いて一気にベストが伸びました。膝を伸ばすとそれだけで諸々がうまくいきます。

膝を伸ばすメリットいろいろ

膝を伸ばした接地によって得られるメリットを羅列しましょう。
①伸脚バネ(伸張反射、バネ)が使える
②重心を持ち上げられる
③踏み切りで潰れなくなる
④地面をしっかり押せる
⑤上半身を使いやすくなる
⑥軸を使って跳べる
こんなもんでしょうか?まだあるかも。
特に顕著なのは①と③でしょう。いわゆるバネ。接地で膝が曲がってしまうと接地が長くなってバネが使えなくなってしまいます。そうするとぜんぜん浮かない跳躍になります。
もしフワッとした跳躍が出来ないと悩んでいるのであれば、接地で膝を伸ばしてみると一発で解決するかも。

 

接地は優しく

踏み切り板を踏むその瞬間は優しく踏むようにしましょう。
イメージ的には足が板に付いたあとにグっと押すくらいな感じ。接地の瞬間にパーンと叩いてしまうと、踏切板に力が伝わらずに潰れた跳躍になります。
とはいえ、これはほぼ感覚の話。見た目にはわからない程度のごく小さい動きですのでビデオで観てもわからないかもしれません。踏み切りの音が一番の指標になると思います。叩くと乾いた音が出がち。重たい音がするなら押せていると思います。

 

重心を上に投げ出すイメージ

跳び出しのイメージはいろいろありますが、幅跳びの本質は重心を遠くに飛ばすことです。そしてその重心を打ち出す動き踏み切りです。
どんな動きをしようといいのですが、踏み切りはあくまで重心を飛ばすための動作にすぎません。助走であらかじめ下がっている重心を踏み切りで一気に上に投げ出すのが踏み切りです。
スキージャンプの踏切りのようなイメージを持つと良いかもしれません。スピードは助走で勝手に出ていますので、踏み切りでは上にジャンプすることを意識。重心を持ち上げて出来るだけ高く遠くに打ち出しましょう。

 

軸を感じよう

軸感覚の話です。跳躍で軸が空中回転するのを意識しながら跳ぶと良い踏み切りができるようになります。
足から頭までが一本の木の棒になるようなイメージをもつことで、地面からの反発を使った踏み切りが出来るようになります。
軸が地面で弾む力をうまく使って跳ぶと、力を使わなくてもポーンと高く空中に跳び出せるはずです。
この地面からの反発力を使って跳ぶことができると、いわゆる前方回転力によって空中で軸が着地までの間にグルっと回ってきます。
こんな感じ

赤い棒が軸だと思って下さい。
体を棒にして踏み切ると、軸が空中でグルンとまわってきてだんだん前のめりになってきます。そのままではうまく着地できませんので、実際の跳躍ではこの回転を空中動作着地動作でごまかすことになります。
『なぜ空中動作が必要なのか?』というのはこの軸感覚が分かっていないと話になりませんが、それは次回の着地編で。
軸を使うと回ってくるのですが、これがもし筋力を使って跳び出してしまっている状態だと、前方回転力も弱くなります。
もしポーンっていう跳躍ができていないのであれば、もしかしたら踏み切りで潰れて軸が曲がってしまっているのかも。
1本の軸をイメージして跳ぶと後傾姿勢を自然と取れたり、着地で無駄な動作をしなくなり、洗練された跳躍になると思います

適度に後傾

踏み切りにはある程度後傾して入りましょう。前傾で走って来てそのまま踏み切るのはダメ。それはド下手です。
上のイメージ図をみたらなんとなくわかると思いますが、軸を後傾させることで軸を使った跳躍ができるようになります。後傾が少なすぎると軸だけでは高く跳べませんので、筋力を使って高さを出そうとして流れた跳躍になりがちです。
ただし、後傾させすぎるとブレーキが強くなりますのが難しいところ。適度が大事。

くるぶしの下に支点をつくる

軸の支点はくるぶしの下につくるようにイメージしましょう。つまり、フラット接地です。跳躍競技にフラット接地が必要なのは、スプリントに比べて跳躍の方が軸の感覚が重要になるからです。
軸の支点をつま先に置くと軸は後傾してしまいます。くるぶしの下に置くと軸は直立します

踏み切りでは軸を後傾させるのですが、それはあくまで直立した軸を後傾させるということで、静止状態では軸は直立させるように作りましょう。
つま先で接地しても後傾はできるのですが、膝が曲がってしまい跳び出す前に軸は潰れてしまいます。
くるぶしの下に支点をつくれば軸感覚が得られるはずです。

 

上半身を使って体を持ち上げる

これこそテクニックです。この小手先のテクニックで10cmくらいは跳躍距離が伸びるでしょう。基本的にはバネやら脚力やらで跳ぶのですが、上半身を使えるとワンランク上の跳躍が可能になります。
ただ、上半身を意識するのは下半身の技術がある程度固まってオートマチックで出来るようになってからの方がいいかも。っていう意味では上級テクニックだと思います。6mを跳ぶには不要。7mを跳ぶならあった方がいいテクニックです。

床に足を伸ばして座った状態でジャンプしてください。そのとき、両肩をギュっとすぼめてダブルアームの動きになりませんか?鎖骨で肩を上げる感じ。もしならないならこの話は通じないので読み飛ばしてください。
踏み切りの腕振りの基本は垂直跳びの腕振りです。
垂直跳びをするとき、腕ってどう振りますか?その振り方は自分のできる最上級の重心をあげるための腕の動きです。たぶん。
多くの人は両手を振るダブルアーム式の腕振りで、一旦後ろに大きく引いた腕を顔の前を通して一気に頭の上に振る動きになっているはずです。その腕振りって高跳びの動きと一緒でしょう!!
垂直跳びの腕振りが、重心を最も高く持ち上げることが出来る動きなんです。だから幅跳びの腕振りでもこれと同じ動きができればさらに高い跳躍が可能となるはずです。
が、ダブルアームで跳ぶ選手はほぼいません。それは幅跳びではスピードが速すぎてダブルアームが間に合わないから。
ってことで、これを幅跳び風にシングルアームにアレンジした腕振りが必要です。意識ことはいろいろあります。

肩だけでダブルアームをつくる

腕振りの話ですが、実際には腕を振る必要はありません。腕を振らない腕振りテクニック
具体的には鎖骨の付け根を軸に肩を上に上げる動きをします。この肩の動きはダブルアームの時と動きと同じ動きで、末端(腕)は使わずに根本(肩)だけでダブルアームをするイメージです
ここでのポイントは『脇をしめる』こと。ギュッとしたときに脇もギュってしめると上向きの力が倍増します。体はちょっと背伸びする感じで上に伸びあがりつつ腕をギュっとできると上にグッと浮かぶ感覚が得られるはず。
この感覚を踏み切りの瞬間にタイミング良くやると見事に浮きます。が、実際の動きは全然ダブルアームではありませんので注意。肩って言うか体の中心の動きだけでつくる感覚的ダブルアームです。

後ろの肩を入れる!!

上記のようにダブルアーム的なイメージで腕を振るのですが、実際にはシングルアームです。ダブルアームで踏み切れる人はダブルアームでもいいのかもしれませんが、私が試した限りでは頭がこんがらがってダブルアームでは跳べませんでした。ちなみに私は三段ではダブルアームで跳べます。
シングルアームでありながらダブルアームのように力強い腕振りをするために必要な事は『肩を入れる』事です。
肩を入れるだけで体が流れなくなるので踏み切りの力を正確に受け止めることができるようになります

肩を入れるやり方は…
①腕を伸ばして大きく前後にする
②後ろの腕を内旋させて掌を上に向ける(バトンをもらうときみたいな感じ)
③肘の角度を走る時と同じようにして自然な感じにする
④完成
②の時に上を向いていた肩がグルっと回って下を向くと思います。これが肩を入れた状態。肩を入れると腕を高く上げることが出来なくなると思いますが、この肩関節のフルロックによって体が開くのを防止でき、腕の流れないバチっとした跳躍が可能になります。
肩が入って関節がロックされると肩関節だけでは腕がそれ以上挙がらなくなるので、自然と鎖骨を支点にして肩甲骨を使って肩が上がる感じになると思います。腕だけを振って上下させるよりもこうして体全体で上下させた方が跳躍には有利です。

空中動作で後ろの方から腕をぐるっと回してくる選手がたまにいますが、こういうのは腕が流れてしまった状態です。踏み切りでしっかり肩が入っていないと体が開いてしまって上半身が流れた跳躍になってしまいます
流れると踏み切りの力が逃げて低い跳躍になりますし、跳躍距離も短くなります。
実に分かりにくいけど、バウンディングでやってみると跳躍距離が全然変わるはずです。まずはバウンディングで試してみて下さい。わからなければあんまり深く考えなくていいと思います。

 

顎を引く

自分の跳躍をビデオに撮ってみて下さい。顎、上がってません?
単純なことながら、顎が上がるとダメです。走るだけなら多少顎が上がっていようとそれほど影響は無いのですが、踏み切りで顎が上がっていると力が首でクッションされてしまって弱い跳躍になってしまいます。幅跳びは1歩だけで遠くに跳ぶ競技ですのでこのクッションは致命的です。
頭から足までが1本の棒になるイメージをしっかりもち、跳び出す瞬間までこの軸を崩さないように意識しましょう。そうすると顎は自然と引けるようになるはずです。

 

まずは思いっきりブレーキをかける

減速を押さえた踏み切りは理想です。
減速はあるけど斜め前に跳び出せる踏み切りが現実です。
そもそもなぜ減速してしまうのでしょうか?
それは、踏み切りでスピードが高さに変換されるからです。エネルギーは一定ですので、スピードを殺すとその分が高さに変換されて跳べるのです。
ってことは、思いっきりブレーキをかければもっと高く跳べるはず
これは半分間違っているのですが、物理の原則的には間違っていません。
全力でブレーキをかけることもまたテクニックです。中助走とかで走って来て、踏み切りの1歩だけでできるだけブレーキをかけてみてください。めちゃくちゃ浮きます。関節でクッションすると全然浮かないので、横向きに進むボールを斜めの壁にブチ当ててエネルギーを全部上向きに変換するようなイメージでブレーキをかけて下さい。
膝を伸ばさないとクッションしちゃうことも分かると思います。
この浮き上がりと減速をうまくバランスさせることがテクニックです。
減速のやり方がわからなければ減速をかけない動きもわかりません。減速の少ない踏み切りをするためには、まずは思いっきり減速する踏み切りを覚えましょう

 

上から糸で引っ張られる感じで跳ぶ

これも軸の感覚です。踏み切り序盤では軸を作れていても、それが維持できずに跳び出しの局面になると軸が潰れてしまっている選手は多くいます。
踏み切り序盤では『1本の棒』のイメージが一番わかりやすいのですが、踏み切り中盤から跳び出しにかけては『頭の上から糸で引っ張られる』イメージをもつといいかもしれません。
跳び出してブロックをしてから着地動作に入るまで、操り人形のように糸で上にクイっと引っ張られているようなイメージ。

 

最後までしっかり押し切る

踏み切り板を体が越した局面、踏み切りの後半になると体が浮き始めているので板に加わる力はどんどん減っていきます。しかし、完全に体が浮き上がるまでしっかりと地面を押しきるように意識しましょう。押す意識が薄いと跳び出しが低くなります

 

ブロックは完璧に

ブロック動作は確実に、そして完璧にできるようにしましょう。膝を伸ばして入って来てブロックをして跳び出せれば6m50は目の前です。
っていうくらいブロックは大事。ブロックすることで押し切りも上半身の動きも重心の持ち上げも全部出来るはずです。

練習ではブロックしたまま着地しよう

ブロックは一朝一夜で身につくものではありません。体が空中に浮いて前方回転力が働くと、どうしても手足をバタバタしてしまうもので、これに耐えるのは非常に難しい。頭ではわかっていても体が勝手にバタバタしてしまいます。
そこで、練習ではどんなに小さい跳躍であっても着地動作をいれずに、ブロック姿勢を維持するようにしましょう。
左足で踏み切ったらそのままフワーっと空中を移動してそのままの姿勢で右足から着地をします。この姿勢はテレマーク姿勢と呼ばれるもので、スキージャンプの着地と同じような姿勢です。ここで足を回してはいけません。
この動きに慣れてくれば、全助走の跳躍でもブロック出来るようになり、高い跳躍と余裕のある着地が可能になるはず。

 

 

こんな感じでチョコチョコやりながら踏み切ればそれなりの踏み切りが出来るはずです。踏み切りは走り幅跳びの肝心要の局面です。なにはなくとも踏み切り練習。足が遅くても踏み切りが決まれば6m、7m跳べます。
参考までに、10種の右代選手は100mPB11.14ながら幅跳びは7m45を跳んでいます。10秒台でなくとも7m中盤の跳躍は可能です。それほど踏み切りは大切な技術。
足の速さはどうにもなりませんが、踏み切りのうまさは練習すればある程度身につくはず!!






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