<幅跳びのポイント>第3回:幅跳びで6mあるいは7m跳ぶにのに必要な100mのタイムは何秒なのか?計算してみた

6m跳ぶためのスピード, 幅跳びのポイント

第1回『踏み切りが大事編』と第2回『助走の基本編』では幅跳びの基本技術をご紹介しました。今回はもっと基本的な事でありながらいまいちハッキリしない問題。
6mを跳ぶのに必要な走力はどれくらいなのだろうか?
幅跳びをやっている選手であれば誰もが考えたことがあるはず。そして最低限の走力で最大の飛距離を出したいとも考えるはずです。
私の知っている7mジャンパーは全員が11秒台ですし、経験則で考えると6mを跳ぶのには12秒台は必要だと思っています。しかし、本当にそれだけの走力が必要なのでしょうか?
私が初めて7mを跳んだとき、100mの持ち記録は追い風参考で11秒8台でした(試合で100mを計ったのはこの1回だけですが)
ってことは、もしかしたら12秒台であっても7m跳べるんじゃないかとも思っています。もしかしたら探せば12秒台で7mを跳んでいる選手も見つかるのかもしれません。

今回は
6m、7mを跳ぶために必要な走力はどれくらいか?
について調べてみました。
走力があるに越したことはありませんが、走力を鍛えるのは至難の業。もしも技術だけでいけるならチャッチャと跳んでしまいたいもの。

 

物理的にはどうなのか?
跳躍距離を跳び出しの速度から計算してみた

さっそく物理的な限界値を調べてみました。
現代は便利なもので、複雑な計算でもネットで一瞬で答えが出せます。

計算の前提条件

まず前提条件としていろいろと設定した。イメージ的には下の図だ!!

幅跳の飛距離は重心の飛距離だという前提で、腰のあたりに重心があるとすれば90cmが重心位置。踏み切りに最適とされている20度で重心が打ち出されるとすると、6mあるいは7mの位置に着地するのに必要な打ち出し速度はいくつなのか?
っていうのが今回の計算。
90cmの高さから6mか7mまでボールを飛ばすのに必要な初速とも言えます。
細かいことは無視。

100mのタイムは最大速度で110m移動するタイムとだいたい一致する

実際の100mでは時速0からスタートして加速、維持、減速があります。
どちらも等速運動ではないので、何キロなら何秒っていうのは言えないところではあります。
世界記録(9.58)を出した時のボルトの最高速度は約45km/h、秒速で言えば約12.5m/sです。ずっとこの最高速度で走れば100m8秒台です。100mのタイムを打ち出し速度に換算するの方法がややこしくて困っちゃうのですが、ボルトの場合は最大速度で120m移動する時間が、だいたい100mのタイムと一致する感じです。
45km/h(12.5m/s)で120mを走ると9秒6。
一方、桐生選手が9.98を出した時の最大速度は11.6m/s程だったそうです。これは115mで換算するとちょうどいい。
41km/h(11.6m/s)で115mを走ると10秒0

ややこしい。
ただ、なんとなく
一般的な選手なら最大速度で110mを等速移動した時のタイムが100mのタイムに換算できる
ような気がしてきました

そう考えると、最大疾走速度を求める計算式としては
最大疾走速度=110÷持ち記録
とすることができます。
12秒00が持ち記録なら、110÷12で9.16m/sが最大疾走速度です。
13秒00が持ち記録なら、110÷13で8.46m/sが最大疾走速度です。
これをボルトに当てはめると110÷9.58で11.48m/s、桐生選手に当てはめると110÷9.98で11.02m/sとなってしまいます。レベルが上がるほど110から距離を伸ばさないといけないようですので、ちゃんと計算するには不適格な計算式だと思います。しかし、12秒台前後であれば110mで行けそう。
ちなみにkm/hからm/sへの変換は「÷3.6」、m/sからkm/hへの変換は「×3.6」で出ます。

この計算では
最大33km/h(9.1m/s)なら100m11秒台、
最大30.5km/h(8.5m/sなら100m12秒台
で走ることができる計算です。そんなもんな気がします。
加速走で11秒台後半くらいなら100が11秒台で、その人の最大疾走速度が33km/h。
うんだいたい合ってそう!!

また、幅跳びの踏み切り速度は100mの最大速度から90%くらいだとされています。
幅跳びの踏み切りでは必ず減速が入るので、最大疾走速度の90%の速さが実際の跳び出しの速さとなるはずです。
ってことで、
100mのタイムから変換して算出した最大疾走速度の90%が跳び出しの速さ
とします。
跳び出しの速さ÷0.9が最大疾走速度とも言えます。

跳躍角度は20度がいいらしいですよ

本当は角度は45度くらいまでなら角度が高ければ高いほど飛距離が出ます。ではなぜ20度なのかっていうと、高い角度で跳び出すのが無理だから。
世界のトップ選手であっても踏み切り角度は20~25度です。走って来て跳び出すという幅跳の動作では、どんなにうまい人でもそれくらいが限界だそうです。
ブレーキをかけてでも角度を付けた方がいいのか、それともスピードを維持して低く跳び出した方が良いのかは改めて計算してみたいとは思っています。

 

 

6mを跳ぶのに必要なタイムは12秒38?

さっそく計算してみた。計算式は以下だ!!
l=(vsin2θs+vsin2θe)/2g
よくわからん!!!
まあ、高さ90と打ち出し角20と距離6をブチ込むとVs=29と出るのだ。

最大疾走速度の90%が踏切りの速度で、km/hからm/sへの変換は「÷3.6」ということを使って、踏切り速度29km/hを100mのタイムに換算すると…
踏み切りの速度は最大疾走速度の90%であるため、29km/hで踏み切るには32km/hの最大疾走速度が必要となる。
これをタイムに換算すると、
32km/h = 8.88m/s = 12.38秒/110mとなる。
等速運動での110mのタイムとスプリントの100mのタイムは一致するため、6mを跳ぶためには100mを12.38秒で走る走力が必要となる。

どうだろう。なんとなくではあるがそんなもんな気もするぞ
経験的には6mに最低限必要なタイムは12秒5くらいだと思いますが、今回の計算では12秒3台が必要と言う結果だ。

7mを跳ぶのに必要なタイムは11.36秒?

6mの時と同じように計算式のlに7mを入れて計算してみると、Vs=32と出る。
つまり、7mを跳ぶには6mを跳ぶのに必要な速さよりも時速3キロほど速く走る必要があるというのだ。
で、また32km/hで走るには100mのタイムで何秒が必要なのかを計算してみた。

踏み切りの速度は最大疾走速度の90%であるため、32km/hで踏み切るには35km/hの最大疾走速度が必要となる。
これをタイムに換算すると、
35km/h = 9.72m/s = 11.36秒/110mとなる。
等速運動での110mのタイムとスプリントの100mのタイムは一致するため、7mを跳ぶためには100mを11.36秒で走る走力が必要となる。

そんなに必要ないような気がする。適当な計算なので細かいことはまあいいか。
11秒3で走れれば7mは跳べるってことは間違いないと思います

25度で跳び出せばぎりぎり11秒でも7m跳べる!!

20度で踏み切った場合は11秒前半の走力がないと7mには届かないようです。
しかし、踏み切り角度を20度ではなく25度にした場合だとどうでしょうか?

なんと、30.3km/hの速さで踏み切れば物理的には7m04が跳べてしまいます
これを100mに換算すると11秒78です。
つまり、持ち記録がギリギリ11秒台であっても物理的には7m跳べる可能性があるということです。
またこれは私の場合にも当てはまります。私は100mのベストが追風参考で11.85のときに幅跳びで7mジャンパーの仲間入りをしました。スタートが下手だったりと100mの技術が全くないのでタイムは遅いですが、実質的には11秒5~6くらいの走力があったとすれば7mを跳んでもおかしくありません。

同様に25度で踏み切れば27.5km/hの踏み切り速度で6mを跳ぶことが可能です
100mに換算すると12秒98
6mを跳ぶにはどう頑張っても12秒台で走る走力が必要だと言って間違いないでしょう。

 

結果をグラフにしてみたよ

計算をグラフにしてみるとこんな感じだ!!

7mを跳ぶには跳び出しの角度が20度であれば11秒3、25度であれば11秒8の走力が必要だ。
6mを跳ぶのには20度なら12秒3、25度なら12秒9。
ちなみに6m50を跳ぶには20度なら11秒6、25度なら12秒4が必要と言うことになる。
わかるのは速度が早ければ早いほど、そして角度が高い方が跳躍距離が伸びるということだ。
物理的には11秒台であれば7mが跳べるし、12秒台であれば6mが跳べる

ここからは、この結果から幅跳びの技術について考えてみる。

 

 

幅跳びで必要なのはスピードよりも角度だ!!

もちろん7mであっても考え方は同じだが、ここでは最初の大台である6mについて注目して考えよう。
まず、幅跳びに必要な要素は
・助走スピード
・跳躍の高さ
・着地動作
この3つだと私は思っています。詳しいことはシリーズでまとめているのでそちらを見て頂きたい。

今回は跳躍スピードと角度が跳躍の記録にどう影響するのかを調べてみた。想像通りの結果となったといえばその通りなのだが、跳躍の角度が記録に与える影響が思ったよりも大きいことがわかった。

高校レベルなら12秒台でなんとかなる!!

今回の結果をみれば、スピードがどれだけ速かろうが角度が低いと全然だめだと言うことがわかる。
6mを跳ぶために必要な100m走力は12秒3~9の間にあるのだ。つまり、12秒9でもちゃんとした技術があれば6mは跳べるということでもある。
考えて欲しい。
12秒9の選手が12秒3まで走力を上げるのと、跳躍の角度を5度上げるのではどちらの方が難しいだろうか?
12秒3なんてのはどれだけ頑張って練習したって才能がなければ一生到達できない可能性もあるタイムだ。もともと足の速い人にとってはどうと言うことのないタイムだが、高校に入ってから13秒台から12秒3までタイムをあげるってのは容易ではないだろう。

幅跳びで6mを跳ぶ簡単な方法がみつかった。
今すぐ走る練習をやめろ!!
そのかわりに跳躍角度を5度上げる練習をしろ!!

今高校で幅跳びをやっていて、足が遅くて悩んでいる人がいるとすれば、それは無駄な悩みだ。12秒台で走る走力があれば6m~6m50くらいの跳躍が可能なのだ。さすがに12秒台で7mはきびしいものがあるが、6m50も跳べれば都道府県大会の予選を通過することはそれほど難しくはない。なんなら都道府県大会入賞もあり得る。
12秒台の走力であっても高校レベルであればなんとかなる!!

13秒台で6mを跳ぶのは無理ダヨ!!

角度を上げれば簡単に6mを跳べる。ただそれは12秒9で走れる走力があった場合の話だ。
正直いって高校生で13秒台であれば才能は無い。サッカー部の方が速いだろうし、なんにもやってないのに足の速いっていう人の方が速いくらいだろう。
そんな人は技術練習で角度を上げたところで一生6mジャンパーにはなれないのだ。30度で跳び出せば跳べないことは無いが、12秒台で走れない人が30度で跳び出せるとは思えない。
12秒9で走る走力を付けるべく努力を惜しんではいけない。幅跳びを頑張るのは12秒9で走れるようになってからだ

速く走ったって遠くに跳べるようにはならない

速く走った方が跳躍距離も伸びるような気はする。っていうか実際伸びる。しかしその伸びは思ったほどではないらしいことがわかった。
11秒3はとっても速い。大学でも名門校でなければリレーメンバーに入れるくらいのレベルだろう。そして11秒8はバカにされるくらい遅い。実際私が11秒8くらいでバカにされていたから間違いない。遅い。
しかし、計算上は幅跳びであれば跳躍の低い11秒3の選手と跳躍の高い11秒8の選手が同じ記録なのだ。
大学レベルでもそこそこ速い選手と、高校の地方大会の予選でも落ちる程度の遅い選手という2人を並べたら100mではお話にならない。しかし、これが幅跳びとなると同じレベルで勝負ができるのだ。
幅跳びにはロマンがあるなぁ!!
幅跳びは遠くに跳ぶ競技であって、速く走る競技ではない。速く走ったって順位が上がるわけではないのだ。速く走れば幅跳びも跳べると思っていたら大間違い。速く走るよりも高く跳ぶ方が記録は伸びる

 

 

 

 

高く踏み切った方がいいのはわかった。
でもここで出てくるのが
高く踏み切るとスピードが落ちる問題だ。
高く踏み切るために減速をしてしまうとかえって記録が落ちる。だから減速を押さえてできるだけスムーズに跳び出した方がいい。そう言われている選手は多いはず。
高く跳び出そうとするとスピードが落ちるから低く出ろ。
私もそう言われてきた。
しかし本当にそうなのだろうか?
もしかして、減速してでも高く跳び出した方が有利なのでは?

次回!!
高さと速さを天秤にかけてみる編

へ続く…

 

 

 






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