【幅跳び】空中動作のコツ~はさみ跳び編~

幅跳びのポイント

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幅跳びのなかでも専門的な動きが求められるのが『空中動作』です。ほとんどの人が独学で見よう見まねの動きで対応しているのが現状だと思いますが、ちゃんとした動きをすれば20cmくらい記録が伸びるかもしれません。
そんな空中動作について全4回でのコツをご紹介するシリーズ。今回は4回目。
第1回:共通するポイント編
第2回:かがみ跳び編
第3回:反り跳び編
第4回:はさみ跳び編(イマココ)
空中動作はレベルが上がるに従ってかがみ跳び→反り跳び→はさみ跳びと変化して行く傾向があり、はさみ跳びをしている時点である程度のレベルの選手だと言えるでしょう。
ちなみに管理人は6m80までは反り跳びでしたが、伸び悩んだので思い切ってはさみ跳びに変えてみたことからそれ以降はずっとはさみ跳びです。

ってことで今回は
空中動作のコツ~はさみ跳び編~
をご紹介。
ある意味では憧れの空中動作であり、ある程度の技術が要求される動作でもあるはさみ跳び。『シングルシザース(1回転半シザース)』『ダブルシザース(2回転半シザース)』の2種類があるのですが、ダブルシザースはトップ選手以外には不要のため、ここではシングルシザースにスポットを当ててそのやりかたとコツについて紹介して行きます。

 

はさみ跳びとは?

今回ははさみ跳びについて紹介していきます。

なかでも空中で足を1回だけ入れ替えるのがシングルシザースで、高校レベル以上以上のいわゆる中・上級者に多く使われているフォームです。特に7m前後の選手に多く、近年では世界大会の女子選手も多くがはさみ跳びです。
ダブルシザースは空中で2回足を入れ変えるフォームですが、これは8m近いジャンプができないと意味がないので今回は省略。

空中で足を前後に開くのがはさみ跳び

はさみ跳びは空中で股関節を前後に開くフォームです。
はさみ跳びと反り跳びの違いはなにか?っといえば、リードレッグをおろしたときに踏み切り足を前に出すのがはさみ跳び、我慢して後ろで揃えるのが反り跳びだと言えます。
絵で言えば④の局面がポイント!!

空中でリードレッグと踏み切り足を入れ替える動きがはさみのようには見えるため、英語ではシザースと呼ばれます。また、前後に足を切り返すことをはさみ込み動作と言います。
反り跳びでは体の下で両足を揃えて我慢する局面がありますが、はさみ跳びではリードレッグをおろす反動で踏み切り足を前に出します。反り跳びでも足がピッチリと揃っていない場合にはさみ跳びっぽ見えることもあるためその差は明確ではありませんが、模式的に示せば足を揃えるか前後に開くかが反り跳びとはさみ跳びの違いです。
空中で止まる反り跳びと違い、はさみ跳びは常に体を動かしていることも特徴。動きが多く空中でやることが多いことも上級者向けのフォームといえるポイントです。

上半身は反り跳びと同じ動き

はさみ跳びと反り跳びの上半身の動きは同じです。ダブルシザースになると足を2回転するので手も2回転しますが、シングルシザースと反り跳びは足が1回転なので手も1回転で同じです。
反り跳びの上半身の動きをそのまま使えるため、一度反り跳びを習得した選手であればスムーズにはさみ跳びに移行できるでしょう。ただ、反るイメージではなくぶら下がるイメージでやったほうが良いと思います。

 

 

はさみ跳びは上級者向けのフォーム?

はさみ跳びは上級者向けのフォームと言われることがあります。
しかし、はさみ跳びは中級者にもおすすめのフォームです!!
たしかにダブルシザースは7m50くらい跳べるだけの滞空時間がないと動作が中途半端になりますので上級者向けだといえますが、シングルシザースであれば反り跳びよりちょっとだけ難しい程度です。簡単とは言いませんが、体の動きをある程度コントロールできるなら習得可能です。
はさみ跳びはかがみ跳びや反り跳びと違って動きが多くて意識することも増えるのである程度のレベルでないとうまくできないとは思いますが、反り跳びがしっかりとできるならはさみ跳びもできるでしょう。
男子であれば6m中盤のジャンプができる選手であれば十分にはさみ跳びを使えるはず!!

はさみ跳びのメリットはスピード感

はさみ跳びは『助走スピードを生かすフォーム』であるため、そもそもスピードがないなら使う意味がないという意味では上級者向けのフォームだといえるでしょう。
幅跳びの記録は踏み切りとブロックさえできていればいいのですが、はさみ跳びの場合は完成度が低いとキレがなくてぬるーっとした跳躍になりがち。それだと踏み切りも弱くなります。
『高いスピードをもっているけど強い踏み切りをしようとすると失速してしまう』という選手がスピードを生かした跳躍をするためにはさみ跳びを使うことは有効ですが、スピードがない選手がやっても踏み切りが弱くなるだけかもしれません。
はさみ跳びは失速を最小限に抑えてよりスムーズな跳躍をするためのフォームと考えていいでしょう。
目的なくなんとなくではさみ跳びに変えたとしてもあんまり意味はありません。

はさみ跳びはやるものじゃなくて勝手になるものという話も…

管理人はある段階でフォーム変更をして反り跳びからはさみ跳びへと切り替えましたが、はさみ跳びの選手に話を聞くと『あるとき気が付いたらはさみ跳びになっていた』という選手がけっこういます。
っというのも、シングルシザースは反り跳びから足がバラけただけのフォームであるため、反り跳びの選手がバランスを崩した拍子に自然とはさみ跳びになることがあるのです。
で、バランスを崩すほどの強い踏み切りができた感覚を再現して跳ぶと、自然とはさみ跳びになってしまうというのです。
陸上界には一般に天才と言われるような人が集まっていて、感覚でこういうことができてしまう人が大勢いるのです。ランニング動作の延長であるはさみ跳びは、そういう人にとっては特別な動作ではなく結果として起こる動作にすぎないのかもしれません。

 

 

はさみ跳びと反り跳びはどっちがいい??

陸上ch的な結論としては…
はさみ跳びでも反り跳びでもどっちでも記録は変わらない!!
はさみ跳びのほうが難しいので記録も伸びそうな気もしますが、実際には空中動作がどうであっても飛距離はかわりません。結局は、踏み切りと着地でどれだけいい形をとるかで幅跳びの記録は決まるのです。
跳躍全体のバランスで空中動作の向き不向きがあるため、フォームがどうだからといって記録はほとんど変わりません。
とはいえ、はさみ跳びにトライすることで跳躍の幅が広がってレベルアップにつながることはあるでしょう。
反り跳びかはさみ跳びかはそれぞれが目指す跳躍スタイルで選ぶとイイと思います。

スピード感のはさみ跳び、パワー感の反り跳び

はさみ跳びは空中で動き続けるフォームで、反り跳びは空中でストップするフォームです。
そのため、助走の勢いを生かした跳躍がしたいならはさみ跳びを選ぶといいでしょう!!
逆に、踏み切り局面を強調してより丁寧な跳躍をしたいなら反り跳びを選ぶのがおすすめです。
はさみ跳びの長所はなんといってもスピード感で、助走の動きと跳び出しの間に壁がなくスピーディでスムーズな跳躍ができます。空中に向かって駆け上がっていくような『階段を上るイメージ』の跳躍にははさみ跳びのほうが向いていると思います。
一方、はさみ跳びだとスムーズゆえに局面ごとの意識が曖昧になやすいため、踏み切りが流れたりブロックが甘くなる可能性もあります。踏み切りでガツンとパワー感を出したいのであれば反り跳びのほうが向いているかもしれません。
どちらも感覚的な話であるため見た目の動きとはあまり関係がないかもしれませんが、空中だけでなく助走から着地まで全体を考えてしっくりくる跳躍フォームを選ぶのがベスト。

反り跳びは前後、はさみ跳びは上下を意識する

反り跳びから足がばらけるとはさみ跳びになるって言いましたが、実際はもっと複雑です。
反り跳びで足が揃うのはリードレッグをおろす反動が少ないからで、はさみ跳びで足がバラけるのはリードレッグをおろす反動が大きいからだと言えます。この違いはリードレッグのおろし方。
見た目には同じに見えますが、反り跳びではリードレッグを後ろに引っ張る感じが強く、はさみ跳びではリードレッグを下に踏む感じが強いです。
感覚なのでそうでもない人もいますし、どっちが良いとかいうことでもないのですが、はさみ跳びに『空中を走る』感覚があるのはこのためです。

 

 

はさみ跳びにすれば6m跳べるようになるのか?

結局大事なのはどのフォームが一番記録がでるのか?です。
で、反り跳びからはさみ跳びに変えたら6m跳べるか?
っというと…それは無理です。
むしろ、6mなら反り跳びのほうが跳べると思います。
ここまで色々説明してきた通り、はさみ跳びは空中でやることが多いので技術が未熟な状態でやろうとすると踏み切りが雑になります。ってことで、
6mくらいだとおそらく踏み切りのブロックがちゃんとできていないと思いますので、はさみ跳びより反り跳びの方がたぶん記録も出ます。

なんメートルからはさみ跳びにするべき?

結局、どれくらいの記録ならはさみ跳びにしたほうがいいのか?

はさみ跳びを目指す場合の陸上ch的な目安としては…
5mまで→かがみ跳び
5m~6m30→反り跳び
6m30以上→はさみ跳びor反り跳び

これくらいのイメージで考えておくと技術レベルに合った空中動作が出来ると思います。もちろん、反り跳びは8mまで使えるので必要を感じなければ反り跳びのままで変える必要はありません。
PBが6m30くらいでまだ安定して6mを跳べない選手であれば、フォーム変更をするよりもまずは助走と踏み切りの技術をしっかり練習する方が先決です。
また、反り跳びの伸びあがる感覚は、はさみ跳びに変えた後でも非常に有効なのでまずは反り跳びをマスターしておくことをおすすめします。6m50くらい跳べるようになってからはさみ跳びに変えた方が技術を生かした跳躍が期待できるでしょう。

 

 

かっこいい跳躍がしたいならはさみ跳びでしょ!!

一般の人のイメージする『幅跳び』はカール・ルイスのような空中散歩です。つまり、ダブルシザース。幅跳びをやっていると言えば空中でバタバタやっているもんだと思われるのですが、実際には多くの選手が反り跳びです。映像を見せるとがっかりされることでしょう。
幅跳びは陸上競技の中で最も華やかでカッコいい種目(陸上ch調べ)なので、『記録を伸ばす』ことと同じくらい『カッコ良く跳ぶ』ことも大事。記録がしょぼくてもそれっぽく跳べると跳んでいるように見えます。
『かっこいい跳躍』というのは難しいテーマであり、それを実現するのは想像以上に難しいことなのですが、たった一つだけ跳躍のカッコよさを簡単に格上げする方法があるのです。
それが…
フォームをはさみ跳びにすること。
たったこれだけで素人目に見るとめちゃめちゃかっこいいジャンプをしているようにみえるのです。

素人にはシングルもダブルも区別がつかない

シングルシザースじゃあ空中散歩にならないように思えるかもしれませんが、陸上に詳しくない人からすればシングルシザースでも空中を歩いているように見えます!!
反り跳びで6mちょっとの跳躍だとみんなリアクションに困る映像しか残りませんが、これをはさみ跳びにするだけでめちゃくちゃ跳んでいるように見えます。はさみ跳びで6m以上跳べば中学生が多い大会だとスタンドから歓声が上がるでしょう。しかもうまくやれば記録も伸びるかもしれません。
シングルシザースであってもはさみ跳びであることには変わりありませんので、もし将来8mジャンパーになったとしてもダブルシザースに切り替えることも容易です。

 

 

 

はさみ跳び習得のためのコツとポイント

長かったですがここからが本題。はさみ跳びを習得する為にやるべきことはなんなのか?っていうことについてできるだけ長くならないように紹介して行きます

ブロックをしっかりと!!

全てのフォームに言えることですが、特にはさみ跳びではブロック動作が大切です。これは忘れないようにしましょう。
はさみ跳びはリードレッグを意識的におろすフォームのため、跳び出しが終わり切る前に足をおろし始めてしまう場合があります。これをやってしまうと体が浮かずに低い跳躍になってしまうため、記録は悪くなります。
『スピードを生かす』というのは低く跳び出すことではありません
はさみ跳びでスピードを意識するあまり、強い踏み切りと正確なブロックがおろそかにならないように気を付けましょう。

 

 

ハードルや台に足をかけて越える感じ

「はさみ跳びのやりかた」で最もイメージしやすいのは『ハードルに足をかける』『台を1段昇る』感覚です。サンショーの水濠を越える感じにも似ています。
そしてイメージだけではなく実際に砂場にハードルを置いて練習するのも有効です。
競技場では踏み切り板から砂場までが2mですので、砂場の手前にハードルを置いてそこにリードレッグの足裏をタッチすればそれだけではさみ跳びのフォームができるはず
高さは一番低くしておいてOK。跳び出してブロックした状態でハードルに向かい、足裏で軽くハードルに触りながら越えて行きましょう。この時の感覚を覚えておいて、ハードルをはずせばたぶんはさみ跳びになっているはず。
ただ、ハードルをタッチするだけだと力強さが感じられないかもしれません。その場合にはタッチではなく台をグイっと昇るイメージのほうがいいかも。見た目にはどちらも同じですが、ハードルをタッチするイメージは軽快感が出て、台を踏むイメージは力強さが出ます。

グンッていう感じでキレを大事に!!

はさみ跳びの動作はリードレッグをおろすことが最重要ポイントでここを意識するわけですが、ぬるーっとおろすのはダメ。
リードレッグが上がっているポジションから一番下の膝が伸びたポジションまで一気に移動させるのがポイント!!
バタバタするのではなく、空中で地面を一気に強く踏み抜く感じ。イメージとしては『グンッ』ていう足の動きです。グルーっと足を回すのではなくてグンッと一気に踏み抜く感じ。
空中でのキレを意識して、メリハリのある動きになるようにしましょう。

 

 

わき腹を使って足を力強く回そう!!

はさみ跳びはスピードを重視しているとは言うものの、実際には力強さも大切です。上記のようにグンッと踏み抜く時には足だけではなく体全体を使うようにしましょう。
足を意識してしまうとチョコチョコした小さな動作になってしまいがちですので、足を動かす時にはわき腹を意識すると良いでしょう。
リードレッグ(右足だとする)を上げる時には左の脇腹を伸ばし、リードレッグをおろす時には右のわき腹を伸ばします。
このようにわき腹を使うと、リードレッグをおろしたときには逆のわき腹が縮むので自然と踏み切り足を前に持ってくることが出来ます。つまり、切返し(はさみ込み)が自然とできます。
反り跳びでは腹筋(前側)が伸びる感じでしたが、はさみ跳びではわき腹(横側)が交互に伸びる感じです。脇を使うイメージをすると体が伸びるので、跳躍全体の感じも伸びやかになると思います。

前後ではなくて上下に体を使おう

足は構造上前後に動くのですが、イメージとしては上下に動かします。このイメージを掴むためにもハードルや台を踏むイメージは大事。
はさみ跳びではリードレッグをおろすときには踏み抜くイメージですので足は下に動かします。もしこのときにリードレッグを後ろに引っ張るイメージだと逆足は出てこないため反り跳びになります。
はさみ跳びはリードレッグを踏み抜いた反動で逆足が前に出て来るフォーム。反り跳びはリードレッグを後ろに引くことで体全体が反るフォーム。
見た目は似ていても動作の意識は大きく違うのです!!

 

 

今回のまとめ

空中動作のなかで最も上級者向けなのが今回紹介した『はさみ跳び』です。
シングルシザースは見た目としては反り跳びと似ていて、人によっては反り跳びの一種だと言う人もいます。しかし、体の動かし方は結構違うのです。
はさみ跳びでは空中でリードレッグと踏み切り足を切り返す『はさみ込み』が行われ、前後に股関節を開くフォームで、前方回転力を打ち消す力も強く働きます。しかし、動作が多いためそれなりの滞空時間と技術が要求されるフォームでもあります。
反り跳びより難易度が高いはさみ跳びですが、スピードを生かした跳躍が出来るのが最大のメリット。スピードがなければ長所がいかせないというのもはさみ跳びが上級者向けと言われる所以です。
また、反り跳びよりも必ずしも良いのか?といえばそんなわけでもなく、6m中盤までは反り跳びで丁寧に跳んだほうが記録も出ると思いますし、技術的な進歩も望めるでしょう。
それなりの技術を身につけていて、かっこよく跳びたいというのであればはさみ跳びは非常に有効な空中動作であることは間違いありません。
習得するにはハードルや台を踏んで行く感覚が一番わかりやすいはず。また、前後ではなく上下に体を使うのもポイント
空中でのイメージを体現するだけの筋力や技術が必要ですが、練習してみたら何かしら得られるものがあることでしょう!!

ってな感じで、全4回にわたってご紹介した空中動作編はとりあえずこれで終了。長い!!

 

 

 

 

 






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