三段跳びの基本とコツ②アームアクション編

三段跳びの基本

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前回、三段跳びの基本としてホップ・ステップ・ジャンプ編を紹介しました。

前回は跳び方が中心だったので足の動きへの言及がほとんどでしたが、三段跳びでは上半身も大切!!

ってことで今回は第2回。
三段跳びの基本とコツ②~アームアクション編~
をご紹介。
文字で見ても意味不明だと思うので、参考動画と解説をつけてわかりやすくなってるはず!!
幅跳びの延長でやるとシングルアームになるのですが、世界を見るとみんな両手を振ってるぞ!!

 

 

腕振りはシングルアームとダブルアームの2パターン

三段跳びにはシングルアームダブルアームという2種類のアームアクションがあります。
それぞれどんな動きかというと、幅跳びの腕振りはシングルアーム高跳びのトップ選手の腕振りがダブルアームです。ダブルアームはイメージしにくいと思いますが、垂直跳びとか立ち幅跳びの腕振りだと思っておけば大丈夫。
アームアクションはどちらがいいということもなくて、それぞれメリットデメリットがあります。
アームアクションの特徴を簡単にご紹介すると…

シングルアーム ・ランニング動作の延長なので違和感がない(簡単)。
・スピードを維持したまま跳びやすい。
・前方への力を感じやすい。
・大きく腕を回すので筋力が弱くてもバランスがとりやすい。
・スイングが速いので滞空時間が短くても大丈夫。
× ・常に腕を振っているので接地のタイミングをはずしやすい。
・腕だけを振りがちで全身の力が使えていない場合がある。
・腕が流れて力が抜けやすい。
・接地の衝撃に負けて体が開きやすい。
ダブルアーム
(上級者向き)
・1歩1歩に全身の力を乗せられるのでパワーを使いやすい。
・上下の力を使いやすい。
・空中で静止してタメが作れるので接地の準備ができる。
・前後に振るので力が横に逃げにくい。
・体が開きにくい。
・かっこいい。
× ・走りながら両手を揃えるのでタイミングが難しい。
・滞空時間が短いと腕振りが間に合わない。
・筋力がないと衝撃に腕が負けて振りきれない。

ザックリ言えば、簡単でスピードを生かしやすいのがシングルアームで、難しいけどパワーを使いやすいのがダブルアーム
まあ、ふつうは最初はシングルアームでやると思います。ダブルアームはタイミングが難しいのでやろうと思ってもはたぶん無理。また、一回ダブルアームができてしまうとシングルのタイミングがわからなくなってダブルアームでしか跳べなくなりますので注意!!
世界レベルで見ると男子はダブルアームが主流で、女子はシングルアームが主流です。そんなことからも、部活レベルならシングルで十分なパワーを出せます。

 

 

シングルアームはシンプルでスピーディ!!

女子選手はだいたいみんなシングルで、イバルグエンがダイナミックで参考になります。

ステップが潰れ気味になっても腕をグイっと振ると体が前に押し出されるように進み、ブレーキロスが少ない跳躍になっています。
シングルアームでは、特にステップの瞬間に一気に手と足を挟み込むことで速いスイングができます。それによって強い推進力が生まれて潰れそうで潰れないギリギリの攻めた跳躍が可能になります。弾むと言うよりもバウンディングやスプリントに近いイメージでグイグイ体を押し進める感じ。
動作自体も簡単というかランニングに近い動きなので初心者でも習得は難しくないでしょう。

シングルでは『肩を入れて腕を流さない』ようにしよう!!

足が流れるのは分かると思いますが、三段跳びでは腕も流れます!!
具体的に言うと、ステップを踏んだ後のジャンプのタメで右手の掌が上を向く!!(左踏み切りの場合)
あるいは、ホップとステップの間に左手が上を向いてもダメ。
つまり、後ろ手の肩関節が外旋してしまった状態を腕が流れていると言います
その場でやってみるとわかりますが、右手を真横に伸ばした状態で掌を上に向けると、体も一緒に右に開く感じがするはずです。
この体勢で踏み切っても地面からの力が逃げてしまうため反発を受けられないか、あるいは潰れてしまいます。
対処としては、右肩をグルっと内旋(掌を内側に回す)させるとあら不思議、肩がグッと入って体がギュっと締まります。この体勢を作っておけば体幹がふにゃふにゃになりません。
跳躍で体幹がどうこうっていうのは実は腹筋とかの筋力ではなくて、肩が入っていないという体勢の問題である場合がほとんどです。
肩を入れた体勢を作って腕を流さなければ体幹を使った反発感ある跳躍ができるはず!!

 

 

ダブルアームはパワフル!!

パワフルなダブルアームといえば、オルソンが真っ先に浮かびます。
オルソンは2004年アテネ五輪の金メダリストで、世陸エドモントンでは現役末期のエドワーズとも争った選手。192cmの大きな体を使った大きなアクションのダブルアームが特徴で、踏み切り前に両手を前でしっかり揃えてから後ろに引きます。多くの選手が彼の跳躍を見てダブルアームを志したことでしょう。
オルソンはダブルアームのなかでもアクションが強調されたフォームなのですが、この複雑な動きによって最初のホップから非常にパワフルな跳躍が実現しています。
最近の選手ではナポレスあたりがかなりパワフルなので参考になります。

ダブルアームでは上半身がブレないので、接地の強い衝撃を受けてもそれを反発として受け止めることができ、見た目には荒々しくてもしっかりと最後まで弾むことが出来ます。
強い上半身があればこそのフォームなので初心者には難しいですが、習得出来れば全身の力を使った力強い跳躍が出来ます。
タイミングをとるのが非常に難しく、技術がないとブレーキも大きく成りやすいのですが、成功すればめちゃくちゃかっこいい!!

ダブルアームはタイミングと瞬発力が命

シングルでもそうですが、特にダブルアームではタイミングが非常に重要。
接地の瞬間に腕も使って真下へ力を加えることでより大きな地面からの反力を得るのがダブルアームです。
そのため、必ずしも大きく振る必要はなく、瞬間的にグっと力を出せるならそれでも大丈夫。
また、『腕』ではなくて『鎖骨』を動かす意識を持つようにしましょう。
ダブルアームは腕だけではなくて上半身の力を一気に使うアクションですので、背筋なども一緒に強く動かすことで瞬発的な力を発揮します。
このとき、腕だけを振っても体の重心はほとんど動きません。もっと体の芯を上下させる感じで、具体的には肩ではなく鎖骨から腕が生えている感じで腕を使うようにしましょう。

シングル+ダブルの変則ダブルアームもある!?

腕振りは2パターンと言っておきながらじつはもう一つあります。
それが、シングル→ダブル→ダブルという変則ダブルアーム
教科書的なダブルアームはホップで両手をそろえてダブル→ダブル→ダブルで跳びますが、ダブルの雰囲気でありながらもっとスムーズに跳躍に入りたい場合には、ホップだけシングルにしてステップ・ジャンプはダブルで跳ぶということも可能。
で、その代表的な選手が世界記録保持者のジョナサンエドワーズです。

世界記録ならもはや変則なのか?って感じですが。
この変則ダブルアームだと、助走のスピードを生かしたホップとパワフルなステップジャンプを両立することが出来るのです!!
エドワーズの跳躍は他の選手と比べてかなりスピードが高く、普通なら弾かれてしまうような局面でもなぜか潰れずに鋭い跳躍ができます。また、腕をあまり振らないことからも一瞬で力を使う技術がハンパないことがわかります。
特に強さとスピードを両立したステップは芸術的で、これはアームアクションがスタイルにピッタリ合っているからこそでしょう。

 

 

腕振りから見るタイプ別の跳躍スタイル

三段跳びはそれぞれの選手の特徴が非常に出やすく、みんな違ったフォームで跳んでいます。
世界のトップ選手達をザックリとタイプ分けして、参考にしてみましょう!!

バネ人間タイプ【ピチャルド】

キューバ等のカリブ系に多いのがこのバネ人間タイプ。細身の体でバネのようにバインバイン弾む跳躍で一発当たると大跳躍になります。
代表的な選手がピチャルド

ピチャルドは世界歴代5位の18m08のPBをもち東京五輪でも優勝した選手。
このタイプは助走から跳躍まで全てがリズミカルで、バンザイするように上下に大きく体を使ったダブルアームでバネのように弾む跳躍をします。
なんでこんなに跳べるのか不思議なくらい弾むので天才なんだと思います。

滑らかな技術タイプ【テイラー】

ホップからジャンプまでが綺麗に繋がっていてブレーキが少なく滑らかな跳躍をするのがこのタイプ。
代表的なのはテイラー

ほかにもクラドックなんかのアメリカ勢がこのタイプで、コーチが付いてちゃんと技術を洗練させている感じがします。
助走から着地までが連続して調和していて、腕振りもダブルアームでありながら無駄がなくタイミングよく大きく振りすぎないまとまった跳躍をします。
教科書的なフォームなので参考にするならこのタイプが良いと思います。

 

パワフルタイプ【ザンゴ】

多少潰れようともタイミングがずれてバランスが崩れようとも、とにかくパワーでなんとかしてしまうのがこのタイプ。
代表的な選手がザンゴです。

2021年に室内初の18m台となる18m07をマークし、世陸ドーハ・東京五輪で銅メダルを獲得した選手。コーチのタムゴーも同じような感じで跳んでいました。
ウエイトトレーニングのような力強いダブルアームで接地の瞬間にドカンと音が聞こえそうな跳躍で、多少潰れても腕で無理やり持ってきてしまうパワフルさ。
これだけ跳んでるんだからそりゃ当然技術もめちゃくちゃ高いですが、見た目にはとっ散らかってます。
特にステップで弾かれてジャンプの前にはかなり体勢が崩れることもあり、無理やりジャンプまで持って行く感じでかなりダイナミック。タムゴーは跳べずに頭から砂場に突っ込んだこともありました。
常人離れしたボディコントロールができないとマネできないでしょうが、潰れてもリカバリーする技術は非常に参考になります。

大股でもってくるタイプ【オルガ】

ここからは女子でシングルアームになります。
長身で細身の北欧系選手に多いのがこの大股で持ってきて跳んでいくタイプ。代表的な選手はオルガです。
15m前後の場合は上下に跳ぶよりも水平方向に跳んでスピードを生かした方が有利なのでしょう。
前後に大きく開いた股関節をシングルアームと連動させて素早く挟み込む跳躍になり、ランニング動作の延長のようなスピード感があります。
特にステップからジャンプにかけては前後に大きく開くので、股関節がやわらかくないと体も一緒に開いてしまうので男子選手にはなかなかできないかも。

しっかり地面を踏むタイプ【マモナ】

しっかりと地面を上から踏んでバネを使って跳びつつもブレーキをかけないようにするタイプ。タイミングや力感など、部活レベルで一番参考になるのはこのタイプかもしれません。
代表的な選手はマモナ

比較的高めに跳びつつも接地を真上からすることでスピードロスは抑えられます。
腕を流さないでコンパクトに強く振ることで高さがあっても潰れず反発するのでバネ感がある跳躍になり、シングルアームでありながらダブルアームのような上半身の力感になります。

 

 

今回のまとめ

前回に引き続き、マイナーな三段跳びの基本をご紹介。今回はアームアクションについて細かく見て行きました。
ただでさえ意味不明な三段跳びですが、ダブルアームにしたらさらに意味分からなくなってそれもまた三段跳びのおもしろさ。そして奥深さ。
アームアクションは基本的に2つあって、シングルアームは簡単でありながらスピードを生かした跳躍に向いた腕振りで、初心者はまずはこの腕振りでロスのない跳躍を目指しましょう。
カッコ良さが欲しいならダブルアーム。タイミングが難しいものの、習得出来れば一歩の力強さは格段にアップ!!
ダブルアームが難しければ最初のホップだけシングルで振る変則ダブルアームもおすすめ。
世界のトップ選手もそれぞれ腕振りは特徴があってコレといった正解はありません。結局は自分がやりやすいように振るのが良い。
そして、アームアクションを意識するといままでただの補強練習だったバウンディングですらも探求できるようになり、立ち五段跳びなんかの記録もドンドン伸びると思います。






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