【幅跳び】空中動作のコツ~反り跳び編~

幅跳びのポイント

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幅跳びのなかでも専門的な動きが求められるのが『空中動作』です。ほとんどの人が独学で見よう見まねの動きで対応しているのが現状だと思いますが、ちゃんとした動きをすれば20cmくらい記録が伸びるかもしれません。
そんな空中動作について全4回でのコツをご紹介するシリーズ。今回は3回目。
第1回:共通するポイント編
第2回:かがみ跳び編
第3回:反り跳び編(イマココ)
第4回:はさみ跳び編
第3回目である今回は、空中動作で最もメジャーである反り跳びのやりかたとコツをご紹介していきます。前回紹介した「かがみ跳び」は空中で足を抱え込むだけなので簡単でしたが、今回の「反り跳び」と次回の「はさみ跳び」の2つは複雑な動作が必要なので難易度も上がります。

ってことで今回は
空中動作のコツ~反り跳び編~
をご紹介。
初心者からトップ選手まで、多くの選手が使っているフォームが反り跳びです。
その名の通り反り跳びは空中で体を反る動作で、はさみ跳びと比べると難易度が低くて習得が簡単。それなのに効果は高いという誰にとってもありがたいフォーム。
中学・高校の幅跳び選手であれば、男女問わず習得しておくべき基本のフォームと言えるでしょう。
ぜひ、反り跳びをマスターしてかっこいい跳躍を完成させましょう!!

 

 

反り跳びのコツとポイント


まず、①有利な着地姿勢②習得しやすいっという2つが反り跳びのメリット。

反り跳びとはさみ跳びはかがみ跳びと違って前方回転力を打ち消す効果があります

これはつまり、かがみ跳びよりも反り跳びのほうが『有利な着地姿勢』をとれるということです。
そして、反り跳びははさみ跳びと比較すると動きがシンプルです。
そのため、高い技術がなくてもそれなりに練習すれば習得できるということ。

そんなわけで、反り跳びはかがみ跳びよりも前方回転力を打ち消す力が強く、はさみ跳びよりも簡単で難易度が低いという特徴のあるいいとこどりのフォーム。
それゆえに、多くの選手に使われる最もメジャーな空中動作となっているわけです。
しかし、簡単とはいえバチっと決めるにはそれなりに特別な技術が必要になります
反り跳びを決めるためのコツとポイントを順にご紹介していきます。

反り跳びは『反る』ことで前方回転力を打ち消すフォーム

まずは例によって、なぜ反り跳びが必要なのか?をちゃんと考えましょう。
かがみ跳びでは空中で前転しようとする力に負けてどうしてもつんのめった着地になってしまいます。そのため、ある程度のレベルになると回転力を打ち消す動作が必要になります。それが『空中動作』
かがみ跳びは前方回転力に逆らわない跳び方でしたが、反り跳びとはさみ跳びは前方回転力を打ち消すことで有利な姿勢をとろうという技術です。
反り跳びが必要な理由は『前方回転力』を打ち消すためで、その目的は有利な着地姿勢をつくることってことを忘れないようにしましょう。
かがみ跳びはシンプルに『強い踏み切り』『足を前に投げ出す着地』をするために空中動作を意識しないためのフォームでしたが、反り跳びは『空中での前転を防ぐ』ためのフォームです。かがみ跳びでは対応できない『空中の姿勢』を制御するためにとる動作が『反り跳び』なのです。

つまり、反り跳びでは『強い踏み切り』『足を前に投げ出す着地』ができていることが前提です。そもそも、強い踏み切りができていないなら前方回転力も弱いため反り跳びをする必要がありません。
場合によってはかがみ跳びで十分なこともあるでしょう。っていうか、初心者のうちはかがみ跳びの方が記録が出ると思います。

 

『空中で両足を揃える』のが反り跳び

なにをすれば『反り跳び』と言えるのでしょうか?
それは…
空中で両足を揃えたら反り跳びです。絵でいえば③~⑤の動きが反り跳びのポイント!!
空中動作は大きく「かがみ」、「反り」、「はさみ」の3種類がありますが、これらの違いは空中でリードレッグと踏み切り足をどの位置に持ってくるかでだいたい区別することができます。

かがみ跳びは「リードレッグを引き上げたまま」にするフォーム。
はさみ跳びは「リードレッグと踏み切り足を空中で入れ換える」フォーム。
そして、反り跳びは「リードレッグと踏み切り足を空中で揃える」フォームです。

「反り跳び」のなかにも揃えるタイミングによってかがみ跳びっぽいフォームや、はさみ跳びっぽいフォームになる場合もあるので明確に分類するのは難しい、というかあんまり意味がないのですが、大体のカテゴリー分けは可能です。
人によっては1回転半シザースは反り跳びの一種だという人もいますのであんまり細かいことは気にしなくていいと思う。

 

 

反り跳びのポイントは「我慢」と「大きな動き」!!

反り跳びのフォームをつくるために意識するポイントは絵でいうと③~⑤の場面です。

かがみ跳びでは③でリードレッグを降ろさない、はさみ跳びでは④で踏み切り足を我慢せずに前に持ってきます。これが反り跳びとの大きな違いです。
特に④の局面で踏み切り足を前に出すのをグっと我慢!!これが1つ目のポイント。
ここで我慢できずに踏み切り足が前に出てしまうと空中で小さくなってしまうので前方回転力が打ち消せずに前のめりになる、つまり着地姿勢が悪くなってしまいます。我慢して足を後ろに残すことが出来れば、空中でゆったりとした余裕のある動きができるようになります。

そして、一連の動きをどれだけ大きくできるかで着地姿勢が決まります!!これが2つ目のポイント。
一番ダメなのはチマチマと小さな動きの反り跳びになってしまうこと。反り跳びは空中で大きく動くことで前方回転力を打ち消して有利に着地する為の動きです。大きく動けないならかがみ跳びの方がいい。
”上手い”反り跳びと“下手な”反り跳びの差はこの大きく動けているかどうかで決まると思います。
上手い反り跳びはスローモーションのようにゆったりとみえる一方で、部活レベルだとチマチマと忙しい反り跳びをよく見ると思います。そんな時には『大きく動く』ことを意識しましょう!!
大きく動けるようになるだけで空中での余裕が全然変わります。

イメージとしては…
④の姿勢を頑張ってキープして砂場に着くギリギリで一気に⑤から着地!!
このイメージなら足を前に投げ出すいい感じの着地姿勢がとれるようになるでしょう。

イバルグエンをお手本にご紹介

お手本としてイバルグエン(コロンビア)の跳躍を紹介します。

イバルグエンは三段跳び専門の選手(とはいえ幅のPBは6m93)なのでボディバランスが良く、体を大きく使うところが参考になると思います。0.25倍速で100回みることをおすすめします。
ポイントは、強い踏み切りと空中の大きな動きでしょう。

イバルグエンの跳躍をみてわかるとおり、反り跳びは空中動作がシンプルなため踏み切りをしっかり行えることも反り跳びのメリットなんです。それを意識してみると、イバルグエンは踏み切り→空中動作→着地の3局面をしっかり明確にこなしているお手本のような反り跳びであることが分かると思います。わからなければあと100回みましょう。
強く踏み切りリードレッグをしっかり引き付け、手足を大きく使った『反り』が入り、着地では腕を大きく回してきてその反動で足をピーンと投げ出すことができています。
こういう反り跳びをイメージできると、力強さを失わずに落ち着いたきれいな着地が実現できるはず。

反り跳びは曖昧なフォーム

反り跳びはけっこう曖昧なフォームです。足のタイミングがちょっとずれるとかがみ跳びや1回半のシザースと区別がつかなくなります。
例えば、世陸ドーハの女子をみて、はっきりと反り跳びなのは誰でしょう?

このなかでは5分くらいからのロマンチュク(ウクライナ)のフォームははさみ跳びっぽい反り跳びだと言えるでしょう。
その後ミハンボ(ドイツ)は完全に1回転半のはさみ跳びで、7分くらいのプロクター(イギリス)はかがみ跳びっぽいけど反り跳びです。
では、8分くらいから跳ぶグエンはどうか?って言うと超微妙でしょ。グエンのフォームは『反り』の動作がないのでかがみ跳びっぽくも見えますが、ちょっとだけリードレッグをひいて空中で揃えているので反り跳びに分類されると思います。

こんな感じで、反り跳びっていうのはかがみ跳びとの区分もはさみ跳びとの区分が曖昧なフォームです
何をもって反り跳びというのかはハッキリとしませんので、反り跳びでは見た目のきれいさを追求することにはあまり意味がありません。
せっかく練習するならお手本的なきれいなとした反り跳びを目指すのが理想だとは思うのですが、結局は空中動作なんてのは跳躍の本質ではないのです。強い踏み切りをすることで着地姿勢が乱れるため、それに対応するための動きが空中動作。
空中動作がきれいなら記録が良くなるというわけではありませんので、細かいところにこだわりすぎないようにしましょう。
きれいなのを目指すならお手本にするのはイバルグエンです。

 

 

とにかく大きな動作をしよう!!

反り跳びの肝はできるだけ大きな動きをすることです。特に身長の高い選手は意識して大きく動くようにしましょう。
全身を大きく使い、ダイナミックな空中動作をすることが反り跳びで最も重要なポイントといえます。動きが小さくなるとだんだんとかがみ跳びに近づいていき、前方回転力を打ち消すことができなくなります。
反り跳びではとにかく両手両足を大きく使うことが大事!!
大きくゆったりと空中動作をとることが反り跳びのコツです。いろいろ考えることもあるかと思いますが、大きく動くことだけを意識したほうがいいフォームで跳べます。

 

 

『反るイメージ』と『ぶら下がるイメージ』の2つ反り跳び

ここからは反り跳びを習得するためのイメージを紹介します。反り跳びの習得には2つのアプローチがあるのです。
それが『反るイメージの反り跳び』『ぶら下がるイメージの反り跳び』です。
感覚の話なのでほかにも違う感覚があるかもしれませんが、この2つのどちらかに当てはまる場合がほとんどでしょう。どちらが正解ということもないので、自分のイメージに合う意識を探してみましょう。

ここでも絵の番号を使って解説していきますので一度絵をみておきましょう。

『反る』反り跳び

絵の③と④の動作を意識して跳ぶと『反る』反り跳びになります。
反る場合には「大きく」というよりも「我慢」を意識すると良い。

「反り跳び」という名前ですので、意識としても『反るイメージ』を持っている選手が多く、写真や動画を見て反り跳びをマネすればこの反るイメージになる場合が多いと思います。イメージがしやすいので最初はこのイメージでやるのがいいと思います。
『反る』反り跳びでは体を後ろに引っ張るイメージで、跳び出した後に全身を大きく反ります。
タイマッサージみたいな、ロメロスペシャル観たいな感じ?
飛び出した後に腕や足を後ろに大きく引っ張り、エビ反りのような姿勢で跳んでいき、着地で一気にかがむイメージです。空中で腕を後ろに回す意識や、お腹や胸を前に突き出すイメージもこの『反る』反り跳びです。
このイメージのいいところは、体の動きを意識するので初心者でもイメージしやすいことでしょうか。『反る』という動作をすればいいので、特別な練習をしなくてもそれっぽい反り跳びができるようになります。

ただし、『反る』イメージには重大な欠点があるので注意。
それが踏み切りがおろそかになりがち!!ってこと。

『反る』場合には踏み切りが弱くならないように注意!!

『反る』場合の注意点は…
反るイメージだと踏み切りの途中で空中動作をはじめてしまいがち!!

しっかりとリードレッグを引き上げて体が浮いてから、感覚としては頂点まできたくらいから反りましょう。「反る」ことを意識して跳躍すると、『踏み切り』がダメダメになりやすい!!
いいですか?幅跳びは『跳ぶ』のが大事で、跳ぶのは踏み切りです。だから踏切りが一番大事。空中動作はしっかりと跳んだ後です。
空中動作のせいで踏み切りが弱くなってしまっては本末転倒。強い踏み切りが終わってから反るように注意しましょう。
そういう意味では、「反る」イメージだと空中動作は上手くなるかもしれないけど記録には結びつかないかも。

『ぶら下がる』反り跳び

絵の⑤と⑥の動作を意識して跳ぶと『ぶらさがる』反り跳びになります。
実は、反り跳びを英語にすると『hung(ハング)』って言います。で、hungを日本語に直すと『ぶら下がり』となります。洋服をかけるあのハンガーのことです。
つまり、反り跳びは『ぶら下がり跳び』だったのです!!
では、反るのが間違いかというとそういうわけでもなく、見た目の動きでは反っています。どういう経緯で『反り跳び』といわれるようになったのかは知らないのですが、日本人は『反る』イメージ、欧米人は『ぶら下がる』イメージで反り跳びしているのでしょう。
反っているから『反り跳び』であり、ぶら下がる意識だから『hang』なのであって、どちらが正しいということではありません。しかし、この『ぶら下がるイメージ』は反り跳びの感覚として非常に有効です。
っていうか、どちらかといえばこちらのイメージの方がいいと思います。

ぶら下がって「ぶら~んぶら~ん」と大きく!!


ぶら下がるイメージは空中動作の後半を意識したイメージで、絵の⑤~⑦を意識した跳び方です。
高い鉄棒に飛びついてぶら下がるような感じで、鉄棒をつかんだらぶら~んとしたまんま着地直前まで我慢!!
我慢が足りないと着地でつんのめってしまうので、とにかく動作を急がずに大きく動き、ぶら下がりの姿勢のまんまで最後の最後で一気に足を投げ出して着地姿勢にもっていきましょう。
ぶら下がるイメージだと手を大きく上にあげることができいるため、上下に大きく伸びたきれいな反り跳びができるようになります。

ぶら下がるイメージはちょっと難しい?

『反る』イメージに比べると『ぶら下がる』ってのがピンとこない人も多いと思います。
おすすめの練習は高鉄棒に飛びついてぶら下がることですが、学校に高鉄棒がないとできません。イメトレするしかない。
ぶら下がるイメージで大事なのは…
上下に大きく体を伸ばしてゆったりと跳ぶっというイメージを持つことです。
ぶら下がる時って体が伸びるでしょ。あれの感じで跳んでいく。
「反る」よりも跳躍の後半を意識したイメージなので、踏み切りは強く踏み切ることが出来ると思うので、大きく伸びる感覚がつかめれば、「反る」よりも「ぶら下がる」方が良い記録が見込めるかも?


 

 

反り跳びのメリットと注意点

ほかの空中動作に比べて反り跳びどんなメリットがあるのでしょうか?反り跳びのメリットを生かせば反り跳びを使う意味も倍増することでしょう。
反り跳びのメリットは…
・シンプルだから習得しやすい
・空中で余裕がある
・滞空時間が短くても完結できる
・大きな動きができる
こんな感じ。
つまり、簡単だけど跳躍全体をうまくまとめることができるフォームです。

シンプルだから習得しやすい

反り跳びの動きはかがみ跳びの延長です。かがみ跳びからリードレッグを戻せば反り跳びの完成。つまり、反り跳びはシンプルな空中動作だといえます。
やることが少なくて簡単なので習得難易度が低いのが反り跳び最大のメリットと言えるでしょう。
かがみ跳びが初心者向け、反り跳びが中級者向け、はさみ跳びが上級者向けという感じで分けることもあますが、反り跳びはシンプルで習得しやすいため、部活として練習できるような人ならだいたいできるようになるはず。
中学生以上であればちょっと練習すればそれなりの反り跳びができるようになると思います。

空中で余裕がある(バランスがとりやすい)

反り跳びはやることが少ないので空中で余裕があるフォームです。
言い換えれば、空中でバランスがとりやすいフォーム
ほかの空中動作では足をまわしてみたり膝を抱えてみたりとやることがいろいろあるのですが、反り跳びでやるべきなのは『我慢する』ことくらい
反り跳びは両手両足を大きく使えるためバランスをとりやすいため、空中でジタバタする必要がなく反った姿勢を維持することだけに専念すればいいんです。空中では余計なことを考える必要がないため、踏み切り動作が終わった後ゆっくりと空中動作を行い、着地にも余裕をもって入れます。
一つ一つの動作を意識しやすいため、初心者であってもバランスがとりやすく多くの人に会うのが反り跳びの大きなメリット。

滞空時間が短くても完結できる

跳んでから着地までの時間が短い選手だとはさみ跳びでは間に合わない場合がありますが、反り跳びなら滞空時間が短くても最後まで終わらせることができます。4m以上跳べる滞空時間があれば踏み切りから空中動作をして着地という一連の動作を余裕をもって完結できるでしょう。
しっかりと空中動作がとれるということは、着地姿勢に余裕ができるということ。滞空時間が短い初心者であっても、反り跳びならちゃんと着地までもっていくことができるでしょう。

大きな動きができる

反り跳びは空中でやることが少ないため、一つ一つの動作をゆっくりと大きく意識することができます。
ほかの動作と違って忙しくないというのは反り跳びの大きなメリットでしょう。はさみ跳びだと足を回すためにせかせかと小さな動きになりがちですが、反り跳びなら大きな動きのなかで着地動作に入れるため、確実な踏切りから空中動作と着地を行うことができるでしょう。。
中級者であればはさみ跳びよりも記録がよくなると思います。

 






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