【短距離】男子200mはハイレベル化している!19秒台達成者数の推移で見る短距離の進化

陸上知識八百万

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男子100mで世界初の9秒台が出たのは1968年のこと。
ジム・ハインズ(アメリカ)がメキシコ五輪で9秒95(電気計時)をマークし、歴史を塗り替えました。


同じメキシコ五輪では男子200mでも世界初の19秒台が誕生。
トミー・スミス(アメリカ)が19秒83を記録しています。

スミスといえば、表彰台で黒人差別への抗議として黒い手袋をした手を突き上げるパフォーマンス(ブラックパワー・サリュート)が有名ですが、実はこの大会、短距離の“記録面”でも革命的な大会だったんですね。

そして時代は進み…

近年のスプリント界は、明らかに“別のフェーズ”に入っています。その象徴がやはり【厚底スパイク】の登場。
ナイキのマックスフライをはじめとした厚底モデルの普及によって、近年のスプリント界は更なるハイレベル化が進行中です。

ってことで今回は
男子200mもハイレベル化している!19秒台達成者を年別で見ると進化が見える
をテーマにご紹介。

男子200mの「19秒台達成者数」を年ごとに見ていくことで、スプリント界の進化を可視化してみようというのが今回のお話です。

ちなみに男子100mの方はどうかというと…近年のハイレベル化はかなり顕著。

これまで最多だった27人を大きく超え、2021年以降は毎年30人以上が9秒台をマークしています。
詳しくはこちら

世界記録こそ100m200m共にウサイン・ボルトが保持していますが、“トップの記録”ではなく“全体のレベル”は確実に上がっていると言えるでしょう。
その要因は断定できませんが、やはり2021年以降とリンクするのは

【厚底スパイクの普及】

これは無視できないポイントですね。

年別の200m達成者数

さっそく、2021年以降の200m19秒台達成者数を見てみましょう!
ちなみに、歴代で19秒を達成した選手は118人います。(執筆時点:WAのTop listsによる)

男子200mの年別19秒台達成者数と年間最高記録
達成者数 最高記録 記録の順位 最高記録者
2025年 18名 19秒51(+1.0) 9位 ノア・ライルズ
2024年 20名 19秒46(+0.4) 6位 レツィレ・テボゴ
2023年 20名 19秒47(+1.6) 7位 ノア・ライルズ
2022年 18名 19秒31(+0.4) 4位 ノア・ライルズ
2021年 10名 19秒52(+1.5) 10位 ノア・ライルズ
2020年 3名 19秒76(+0.7) 19位 ノア・ライルズ
2019年 13名 19秒50(-0.1) 8位 ノア・ライルズ
2018年 14名 19秒65(+0.9) 15位 ノア・ライルズ
2017年 7名 19秒77(0.0) 20位 アイザック・マクワラ
2016年 12名 19秒74(+1.4) 18位 ラショーン・メリット
2015年 11名 19秒55(-0.1) 11位 ウサイン・ボルト
2014年 8名 19秒68(-0.5) 17位 ジャスティン・ガトリン
2013年 7名 19秒66(0.0) 16位 ウサイン・ボルト
2012年 8名 19秒32(+0.4) 5位 ウサイン・ボルト
2011年 6名 19秒26(+0.7) 2位 ヨハン・ブレイク
2010年 7名 19秒56(-0.8) 12位 ウサイン・ボルト
2009年 6名 19秒19(-0.3) 1位
【世界記録】
ウサイン・ボルト
2008年 5名 19秒30(-0.9) 3位
【当時世界記録】
ウサイン・ボルト
2007年 7名 19秒62(-0.3) 13位 タイソン・ゲイ
2006年 6名 19秒63(+0.4) 14位 ゼイビアー・カーター
2005年 3名 19秒89(+1.8) 24位 ウォーレス・スピアモン
2004年 2名 19秒79(+1.2) 21位 ショーン・クロフォード
2003年 0名 20秒01(+0.8) 25位 バーナード・ウィリアムス
2002年 3名 19秒85(0.0) 22位 ショーン・クロフォード
2001年 1名 19秒88(+0.1) 23位 ジョシュア・ジョンソン

なぜ2001年以降なのかというと、世界陸連のシーズンリストの検索が2001年以降だったから。まあこれだけあれば十分でしょう。(データベースをポチポチ調べたので間違えあったら教えてください)
こうして見てみると色んなことが見えておもしろいですね。

2021年以降に注目すると…
10人 → 18人 → 20人 → 20人 → 18人
と推移していて、2021年以前の最高が14人(2018年)だったことを考えると、100mと同様にここ数年で一気にハイレベル化していることがわかります。

ちなみに、世界記録はトミー・スミス以降では以下の5回しか更新されていません。
・トミー・スミス(アメリカ):19秒83(1968年)
・ピエトロ・メンネア(イタリア):19秒72(1979年)
・マイケル・ジョンソン(アメリカ):19秒66(1996年6月)
・マイケル・ジョンソン(アメリカ):19秒32(1996年8月)
・ウサイン・ボルト(ジャマイカ):19秒30(2008年)
・ウサイン・ボルト(ジャマイカ):19秒19(2009年)

ボルトってもう20年近く前なのか…笑

 

2021年以降のハイレベル化は間違いない!

今回の一つの大きな結論が、
2021年以降、男子200mは間違いなくハイレベルになっている!
ということ。
これは体感的にも明らかではありますが、数字で並べてみてもハイレベルになっているのがわかりますね。

かつては19秒台を出せば間違いなく世界大会の決勝に残れたし、メダルだって狙えたのですが、今となってはシーズン中に19秒台を出す選手が20人もいる世界になってしまっています。

トップ層に限ってみれば全体的にレベルが上がっているわけですが、
これはもう、どー考えたってスパイクの進化が原因でしょ!
…わからないけどね。

原因は他にも
・アフリカからアメリカに来る選手が増えた
・21年以降は世界大会(世陸・五輪)が連続した
・スプリント理論がある程度確立した

とかっていうことも考えられるんだけど、2021年っていう年が厚底によって革命が起こった年であることを考えれば、やっぱ厚底と記録を結び付けてしまうのも自然なことですよね…

 

厚底前夜の2015年からハイレベル化の傾向があった

厚底がハイレベル化の最大の原因だとは思うのですが…
実は、200mのハイレベル化は厚底スパイク登場“前”から始まっていた可能性があります。

初めて10人以上が19秒台を出したのは2015年で、これより過去には10人以上の年はありませんでした。
そして2015年以降では、10人を下回ったのは2017年とコロナ渦だった2020年の2回だけ。

19秒台が続出しているのは『厚底が出た2021年以降』なのではなく、『何があったのかわからない2015年以降』だと言うこともできます…

現時点では明確な要因は断定できません…
ハイレベル化の要素については誰かが研究してるだろうから、数年後に分析が出てくることでしょう。
2021年以降であれば『厚底』と結び付けて考えることもできるのですが、どうやら、200mでは厚底スパイク登場前から全体のレベルが上がりつつあったようです。

 

2003年の達成者0は異常事態!アンチドーピングが影響した?

2003年は19秒台達成者が0なのですが
19秒台がシーズンを通して一人も出なかったのは1986年以来の事態です。
(管理人調べ)

調べてみると、表にある2001年の他に、89,90,91年が1人(90と91はMJ)だけでしたが、87年以降はこの4回を除けば複数の19秒台達成者が出ています。
このことからも、2003年は特殊な年だったと言えるでしょう。

ちなみに、2003年のランキング3位は末續慎吾さんの20秒03で、ガトリン(21歳)が20秒04の5位、ボルト(17歳)が20秒13の9位となっています。
ボルトはこの翌年の2004年から2016年までの13年間のうち、ケガで200mに出ていない2014年以外の12回も19秒台をマークすることになります。
そんなわけで、この年もまた、時代の転換点と言えるでしょう。

2003年の事態についてはなぜこうなったのかはわかりません。
この年はメジャーリーグ(MLB)でもドーピング検査が始まるなど、スポーツ界全体でアンチドーピングの流れが強まっていた時期でもあり、その影響があったのかもしれません。
本当のところはわかりませんけどね。

選手別のランキングトップ回数をみると、ライルズが7回でナンバー1

2001年以降でランキングトップになった回数を選手ごとにみてみると↓の通り

選手 回数
ノア・ライルズ 7回
ウサイン・ボルト 6回
ショーン・クロフォード 2回
ヨハン・ブレイク 1回
レツィレ・テボゴ
タイソン・ゲイ
ゼイビアー・カーター
ジャスティン・ガトリン
ラショーン・メリット
アイザック・マクワラ
バーナード・ウィリアムス
ジョシュア・ジョンソン
ウォーレス・スピアモン

ボルトが6回なので、ライルズの方がランキング1位になった回数は多いんですね。
19秒19という金色に輝く世界記録は不朽の価値がありますが、全体のレベルが上がるなかでトップであり続けるライルズの強さもまた、見ている者の胸を熱くしてくれます。

ちなみに、陸上界のレジェンドであり、一時代を気付いたマイケル・ジョンソンがシーズンランキング1位だったのは90,91,95,96,2000の5回。
“時代”という見方をするならば、今この時代は後世ではライルズの時代として扱われることでしょう。

“ポストボルト”の次は“ポストライルズ”!?

200mにおいては、群雄割拠のなかにありながらも、“ポストボルト”の座に就いたのはライルズと言えるでしょう。
だって、7回もワールドリーダーになっているわけですからね。文句なしでしょう。

そんなライルズも、いつの間にかもう若手とは呼べない年になっています。

ライルズは1997年生まれなので2026年にはもう29歳。
ボルトがロンドンで引退レースを走ったのが31歳の誕生日を迎える直前の30歳だったことを考えると、一時代を築いたライルズも、もういつ引退してもおかしくはないでしょう。

そうなると、次に注目なのが“ポストライルズ”の存在ですね。
テボゴ、レベル、アンソニー、ナイトン、ケビナシッピと言った2000年代前半生まれの選手はもちろん、さらに下の世代には
・ガウト・ガウト(オーストラリア)
・ワラザ(南アフリカ)
・ブーンソン(タイ)
・ミラー(アメリカ)
といった、これまでの尺度でみると化け物クラスの選手が何人もいます。
かつてのライルズがそうであったように、“若手”がレジェンドが引退した穴を瞬く間に埋めてしまい、そこから数年間の陸上界をジャックするのかもしれません…

っと言いながらも管理人はまだ「ライルズは若手」と思っています。

【まとめ】200mも間違いなくハイレベル化している!
そろそろ“ポストライルズ”もみえてくるか?

今回は、
男子200mの19秒台について注目して、年ごとの達成者数とワールドリーダーを調べてみました。

なぜそのような結果が出たのかは置いておいて、
・ボルトが6回、ライルズが7回ワールドリーダーになっている
・2023,24年は20人が19秒台
・2015年以降、ほとんどの年で10人以上の19秒台が出ている
・2003年は達成者ゼロという特殊な年
・ボルトの19秒19が輝く
数字を並べてみるとこんなことがわかりました。

2021年はどうみてもハイレベル化しているわけですが、何でですかね?
26年が低調に終われば世界大会というのも一つ大きな要因であることが見えてくるし、この傾向が続けば厚底革命の結果ということもできるでしょう。
ボツワナやジンバブエのような国の活躍から、留学や環境整備の結果とみることもできるかもしれません。

何にせよ、200mもなかなかにハイレベル化してますねぇ。

そして、ライルズがランキングトップを取った回数は7回と、ボルトの6回を超えたことも注目です。
若手としてポストボルトの筆頭だったライルズですが、一時代を築き、もはやポストライルズの影が見えてくる年齢になっています。

ライルズに引導を渡す選手は次世代選手は一体誰なのか…!
陸上短距離はまだ進化の途中…観戦の楽しみは尽きません。






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