陸上競技初心者のための100m練習メニューの組み方

速く走るコツ, 短距離の基本, 足を速くする方法

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陸上競技をやっていると練習メニューの組み方で困ることがあります。
毎日練習しているとメニューがマンネリしてきたり、なんだか物足りない感じがする日もあることでしょう。部活であれば部長やブロック長が組んでくれたメニューをただなんとなくこなすだけになってしまっているかも。
しかし、練習メニューの組み方や意味をちゃんと理解すれば練習効率を上げることができます

今回は、
『陸上の基本的なメニューの組み方』
をご紹介します。
初心者から中級者に向けて、短距離の基本となる練習メニューの組み方についてご紹介していきます。一人で練習している人でも今回紹介する内容を意識してメニューを組んでいけば、より効率的で無駄の少ない練習が積めるはず。

ちなみに、今回のお話はちょっとややこしいと言うか専門的なところもあります。
もっと単純に考えたいのであればこちらの記事のほうがおすすめ↓


 

ドリルの種類はこちらでご紹介しています

 

 

 

1週間のメニューサンプル

このページを見ている方はメニューの組み方なんかより具体的なメニューを求めてこのページに行きついたという方がほとんどだと思いますので、まずは具体的なメニューサンプルをいくつかご紹介します。

初心者のための練習メニュー

最初に陸上経験1年未満の初心者選手のための練習メニューをご紹介。
初心者のうちは体がまだできていないため、負荷をかけすぎるとケガに直結します。そのため、初心者がまずやるべきメニューはトップスピードを出す練習を取り入れつつ、負荷をかけ過ぎずにフォームを崩さないことを優先したメニューです。
トップスピードを上げる、長い距離を走れる持久力を付けるといった『走るための基礎能力』を上げるための練習メニューで、スプリントの土台となる能力を付けることに主眼を置いています。
初心者のうちに基礎的なことをすっとばしているとあとあと伸び悩んでどうしようもなくなりますので、まずは怪我なくメニューをしっかりとこなすようにしましょう。

例1.スピードと距離を両立したパターン

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
80m×5×2 ダッシュ
150m×4×2 テンポ走
アクティブrest ジョグ
150m×5 ウェーブ走
SD ダッシュ
200m×5 テンポ走
off rest off
ポイント:
8割程度の力でフォームを意識して走る。
メニューをこなせる体力を付ける。

距離を200mまでに抑えて負荷がかかりすぎないように調整したメニューで、距離を踏みすぎないので疲労の蓄積が少なく、初心者にありがちなシンスプリントなどの疲労による故障を回避できます。150mを中心にすることでコーナーも走りつつ初心者でもなんとか走り切れる距離でしょう。
初心者のうちは200mまでの距離で十分負荷が足りますので、長い距離をダラダラ走るのではなく200m程度の距離をしっかり走るようにしましょう。
また、フォームを意識しながらもある程度のスピードを出せる距離のため、スピードに対して体をどう動かせばいいのかを感じながら走ることができるはず。スプリントは体をどう動かすかをコントロールする能力が非常に大事なため、筋疲労をして乳酸が出た状態でいかに効率よく動くかが大事です。
疲労困憊になりにくくケガのリスクを低くすることができるため、入部から間もない初心者や春先でスピードが上がりつつあるような場合に使えるメニューです。

例2.瞬発力を重視したメニュー

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
80m×5×2 ダッシュ
100m×5 テンポ走
ジャンプ系 バネ
SD ダッシュ
120×3×2 テンポ走
250m×5
or
100m×5
テンポ走
off rest off
ポイント:
短い距離を中心に、ジャンプ系の練習を取り入れて
瞬発力を伸ばす。

週のうち1日をジャンプ系のトレーニングにすることで、瞬発力を含めた基礎的な運動能力の向上を狙ったメニュー
ボックスジャンプ・ハードルジャンプなどの跳躍系練習を通して陸上的な体の使い方を身に着けることができる練習です。陸上では短い接地で強い反発を受ける『プライオメトリクス』の動きができなければいけませんが、ジャンプ動作を取り入れることで瞬発的な力の使い方を覚えることができるはず
このサンプルでは平日は学校の校庭を想定しているので長い距離を設定せず、土曜日に距離を踏むようにしてあります。。土曜も短い距離のダッシュにすればより瞬発力を重視したメニューになるでしょう。

例3.距離を重視したメニュー

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
120m×5×2 テンポ走
200m×5 テンポ走
SD ダッシュ
150×3×2 テンポ走
100×5×2 テンポ走
300m×5 テンポ走
off rest off
ポイント:
スピードは控えめに距離を踏むことで
ロングスプリンターに必要な能力を身に着ける。

長めの距離を中心にしたメニュー。陸上をやっていなければ絶対に走らないような距離です。
スピードは出にくいものの、長い距離を走り切る体力とそれに必要な効率的なフォームを習得することができるはず。陸上は出力も大事ですが、レベルが上がるほど力をいかに効率的に使うかというのが大切になってきます。初心者のうちに効率をイメージした練習をしておくと将来役に立つはず。
また、これくらいのメニューがしっかり走り切れるようになればもう初心者の域を脱しています。

 

 

中級者のためのメニュー

初心者を脱したと思ったら次は専門性の高い練習を取り入れましょう。
陸上競技はどれだけ特化した能力を持っているかで勝負が決まります。中級者が試合でいい結果を出せるかどうかは専門性を持っているかどうかです。もしある程度の走力がついたと思っているのになかなか試合で結果が出ないってときにはメニューに専門的な練習を組み入れるようにしましょう。

例4.ショートスプリントの爆発力を鍛えるメニュー

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
300m×3 テンポ走
30×5,60×4,
80×3,100×2
短ダッシュ
アクティブrest ジョグ
加速走(100m×5) ダッシュ
150m×4 ウェーブ走
200m×5 テンポ走
off rest off
ポイント:
加速を意識する。

加速力とトップスピードを高めるためのメニュー。
短い距離で一気にパワーを出すには短ダッシュや加速走が有効。高いスピード域でも動きをコントロールするために、リラックスしつつ高いスピードを出すことを意識しましょう。

例5.筋持久力を鍛えるメニュー

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
SD ダッシュ
300m×3×2 ウェーブ走
アクティブrest ジョグ
120m×3×2 テンポ走
変形ダッシュ ダッシュ
(300,200,100)×3 テンポ走
off rest off
ポイント:
スピードを上げながら距離を踏む。

スピードの維持に重きを置いたメニュー。
長い距離を走って疲乳酸がたまった状態でさらに距離を踏むことで筋持久力を鍛えることができます。
ロングスプリンターだけでなく、100m専門の選手あっても筋持久力を鍛えることで後半の失速を抑えることができるようになります。

例6.バネを鍛えるメニュー

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
30×5,60×5
+バウンディング
短ダッシュ
120×5 テンポ走
アクティブrest ジョグ
坂ダッシュ ダッシュ
ドリル 動き作り
200m×5 テンポ走
off rest off
ポイント:
負荷をかけてバネを使う。

普通に走っているだけだとバネを使い切ることは難しいため、坂やバウンディングを組み込んだメニュー。
バウンディングや坂ダッシュは非常に負荷が高いものの、得られる効果も非常に高い。レストと高負荷のバランスをとらないといけないので全体でみると難易度は高くなる。

 

 

練習メニューの基本

練習メニューを組む時にはいろいろな事を考えて総合的に決める必要があります。
まずはそのなかでも練習の基本中の基本となる概念的な部分をご紹介します。人や学校によってメニューの考え方はいろいろあるので、これもひとつのパターンだと思って下さい。

練習計画は3カ月、1カ月、1週間で組もう!!

練習メニューを組む時には、長期中期短期の3つの期間を区切って構成するのが基本です。専門的にはマクロサイクルメゾサイクルミクロサイクルと呼びますが、意味は長期、中期、短期です。
設定する期間は人によって違い、マクロを1年とする場合もありますが、学生の場合は1シーズンとなる3~6カ月を長期として設定すればいいと思います。
ここでは、長期を3カ月、中期を1カ月、短気を1週間と設定した場合を想定します。

長期のメニュー(3カ月)

なぜ長期のメニューを決めるかと言うと、『いまやっている練習の成果が出るのがだいたい3カ月後』だと言われているからです。長期のサイクルではザックリとした練習の方向性を示すので、メニューというよりも目標に近いものかもしれません
長期で考えるのは『何を練習の軸とするのか?』です。
長期サイクルのなかで練習の方向性を決めることで、日々のメニュー作りの軸ができます。
3カ月後に今の自分よりもここを強くしたい!!というポイントを決めてるといいでしょう。

長期サイクルの例・夏までに足が流れないようにする
・体幹を使った走りを身に付ける
・100mの前半を速くする
・トップスピードを上げる
・ストライドを伸ばして歩数を100mで1歩を減らす

中期のメニュー(1カ月)

長期のメニューでは方向性を決めましたが、中期のサイクルでこれをもっと具体的なメニューに落とし込みます。
たとえば、長期で『前半を速くする』と決めたとしたら、中期ではそれを3つに分割して
1カ月目はスタブロを押す練習中心
2か月目は前傾を保つ練習を中心
3カ月目は中間疾走につなげる練習を中心
といった感じで、中期のメニューを3つ組み合わさることで長期の目標をクリアできるように設定します
もちろん、4つでもいいし2つでもいいのですが、3つが一番わかりやすいと思います。
ちゃんとこなせば目標とする結果が得られそうな練習を考えて、それをいつまでにこなすのかを決めるのが中期のメニューです。

短期のメニュー(1週間)

一般にメニューっていうとだいたいがこの1週間の練習メニューのことを言うと思います。1日ごとにそれぞれ何をやるのか決めて、1週間で一回りするような練習メニューを組みます

『前半を速くする』とした場合の1ヶ月目だとしたらこんな感じ

曜日
練習 走練 技術練 走練 技術練 補強 実践 休養
メニ
ュー
インター
バル
SD インター
バル
SD   TT OFF
距離 200 50 200
+100
50   100  
セット数 5   3        
レスト 10min   R 10m
r  walk
       

こういうのを体調とか進捗をみながら毎週作っていくのが短期メニューです。
セット数とかレストも目的によって変わりますし、体調が悪ければその日のメニューを変更することもあります。この短期のメニューを4つ組み合わせると中期で設定したメニューになるようにしましょう
この例の場合は、SDを中心にしているので週に3回もスタブロを使う練習が入っていますが、1カ月のうち4週全部これじゃあSDやりすぎですので中期的にバランスを取るようにしましょう。

具体的に何をやるのかを決めるので結構悩むところではありますが、だいたいパターンがあるのでそれに沿って作っていけば失敗はしません。
学校によっては火曜日がきつい日で水曜日が軽い日など、曜日ごとに強弱が決まっていたりもします。だいたい日曜はOFFですね。

負荷を計算しましょう

メニューを組む場合には練習に強弱を付ける必要があります。
毎日負荷の高い練習ばかりを続けていると、最初は筋力がついて良い感じですが、3カ月くらいするとどこかしら怪我をします。
高負荷な練習は練習効果が高い一方で、体へのダメージも大きいです。長い目でみて、補強などでしっかり体を作るようにしましょう。そういう意味でも長期・中期でメニューを組む必要があります。
初心者はシンスプリント足裏の筋膜炎などになりやすいので、練習効果ばかりを追うのではなく、怪我にも配慮した負荷を設定しましょう。

高負荷な練習

①物理的なダメージが大きい練習
・バウンディング
・アスファルトでの坂ダッシュ
これらは単純に一歩の衝撃が大きいので高負荷と言えます。こういう練習は膝や腰に大きなダメージがありますので、週に1回か2回までにしましょう。

②筋肉への負荷が大きい練習
・短ダッシュ
・インターバル走
一歩一歩の衝撃高はそれほど大きくなくても、スピードが高かったり回数が多い練習も高負荷になります。筋肉に疲労が蓄積すると、肉離れや疲労骨折に繋がります。筋肉の張りや脚に違和感がある場合には避けましょう。

低負荷な練習

単純に疲れない練習は低負荷だと考えて良いと思います
同じ動きであっても本数や力感を買えると負荷も変わります。
本来は高負荷な短ダッシュでもセット数が少なければ負荷は下がりますし、バウンディングでもフォーム重視で小さく跳ぶだけであれば低負荷と言えます。
あとは一瞬しか力を入れないような練習やフォームチェックのような技術練習は低負荷です。
週に6日間練習があるとすれば、2日くらいは低負荷な練習を入れるようにしましょう。

練習のバリエーション

メニューを組む時にはどういう練習を組み合わせるかを考えるのですが、そもそもどんな練習があるのかを知らなければメニューも広がりません。
基本的にはSDと短ダッシュと走練をやっておけば大丈夫。雷管はひとりじゃ鳴らせません。

TT

タイムトライアルのこと。努力度は100%で、全力でやることが大切。
距離は100~400mまで、専門に応じて試合と同じようにやります。
練習の成果がちゃんとでているのかを確かめる指標になりますので、できればスタブロと雷管を使ってできるだけ試合に近い感じでタイムをとりましょう。
週に1回やっているところもあれば、3カ月に1回くらいしかやらないところもあります。
実践練習でもあるので、TTでうまく出来ないことは試合でもうまくできません

SD

スタートダッシュのことで、短ダッシュのうちスタブロを使う練習の場合はSDと呼びます。10~60mくらいの短い距離で、スタートの技術を磨く練習です。
技術練習ですので、何セットやるとかにこだわりすぎずに納得いく動きでやる方が良いと思います

短ダッシュ

30~100mくらいの距離のダッシュのこと。スタブロを使うとSDになります。
『30+50+100』のように伸ばしていくパターンが多いですが、短くしていくパターンもあります。
基本は瞬発系のトレーニングですが、レストを短くすれば持久系にもなる陸上の基本的な練習

インターバル

短距離の場合は走練習はインターバルであることが多いです。
短ダッシュもインターバルといえばインターバルですが、100mよりも長い距離の場合はふつうは短ダッシュとは言わずにインターバルと言います。
『200m×5』とか、『300+100+200+100』とかいろいろありますが、こういう練習はインターバルの一種です。
ちなみに『300+100』みたいな場合は『さんぷらいち』っていう言い方をします。もし3セットなら『さんぷらいちさんせっと』です。しかし、『(300+100+200+100)×3』の場合は『さんいちにいいちさんせっと』です。

『200×5』みたいな単純なものもあれば、スピードを重視した場合には『120×4×2』のようにセットを区切って回復させて負荷を高めるものもありますのでそのバリエーションは無限。
距離、セット、レストの組み合わせでいくらでも効果を調整できるので、陸上の練習の超基本になっています。
何もわからなければこればっかりやっておいても大丈夫

レペテーション

インターバルと似たようなものですが、レストをしっかりとる練習です。
リフレッシュした状態で走るので、1本1本の精度を高くできまが、本数を多くすると時間がかかります。

テンポ走

テンポ走はフォームを意識する練習です。スピードはほぼ全力だけど気持ち的にはちょっと余裕があるくらいの感じ
70~80%くらいのいわゆる流しや、フォームを意識して90%くらいの力で走る練習のことをまとめてテンポ走と言う事があります。
なんとなく、コーナーでやるイメージ。

坂ダッシュ

グラウンドや競技場ではなく、道路でやる練習です。
適当な坂を見つけて走りましょう。
そんなにしょっちゅうやるものではありませんが、距離や勾配によっていくらでも負荷を変えられるフレキシブルな練習。

加速走

助走をつけてタイムを計る練習です。100mの加速走であれば、110mくらい走ることになります。
中間疾走を意識してトップスピードを上げる練習でもあり、リレーの指標にもなります。
これが速いのに100mが遅いっていう人はスタートが下手ということです。

補強

バウンディングとかウエイトとか、メインじゃない練習のことは全部補強って言います。
腹筋も補強。

技術練

タブロを使った練習や幅跳等の専門練習のことを技術練と言います。SDも技術練ですが、SDはSDです。
基本的には短い距離でやります。

 

 

困ったら200m走っておけ!!

練習メニューなんて考え出すとです。
一人でやってるならなんとでも組めますが、団体のメニューであればせっかく考えてもチームメイトの体調や意見によって簡単に変わってしまいます。
ごちゃごちゃ考えるよりもサクっと走っちゃった方が良いでしょう。
メニュー作りに困ったらとりあえずこれだけやっておけば大丈夫という鉄板メニューです。

短距離ならとにかく200mを走れ

200mはなんとでもこじつけられます。スピードも持久力も大切だし、心肺機能も高いレベルで必要。結局は200mが速い奴はなにやっても速い。

200mばっかりやっておけば失敗することはありません
ってことで、200mを中心にしたメニューです。

200×5と200+100

『200×5』『200+100』をやっておけば大丈夫。『にひゃくごほん』『にいぷらいち』です。
初心者から上級者まで、このメニューで足が速くならない人はいないでしょう。200+100を何セットやるかはどれだけ頑張るかによりますが、3セットできればかなり頑張れていると思います。
全力で出し切るも良し、ペースを落としてフォームを重視するも良し。

筋持久なら300m

ロングスプリンターなら300mを混ぜておけば大丈夫。300mをやってるやつが遅いはずありません。多分最高にきつい練習は300mです。
300m系をガンガンやっていれば1年後には県大会入賞に手が届くくらいにはいけるかも。

300+100+200+100がつらい

基本的に300mはどれもきついのですが、『300+100+200+100』は特に辛いメニューです。
あいだはウォーク。100mってのは罪なもので、どんなにフラフラでも頑張れば走れてしまう距離なのです。
スピードを落としてセットを増やすくらいならガンガン行って倒れた方が効果的!!

 

 

練習メニューって学校や人によって結構違うのですが、それを比べる機会ってほとんどないんですよね。誰がどんな練習をしているのかってよくわからない。
強豪校のメニューとかも雑誌とかをみているとよくありますが、それをやったから強くなれるというものでも全然ないのがむずかしいところ。
ただ、これが陸上のおもしろいところでもあります。
人がなにをやっているかではなく、自分がどういう走りをしたいのか、それを実現するにはどうすればいいのかを考えることが、メニュー作りのおもしろさです。






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