<幅跳びのポイント>第7回:冬季練習とメニュー

幅跳びの練習メニュー, 幅跳びのポイント

Twitterもありまぁす↓

陸上のシーズンはだいたい4~10月までで、それ以外の時期は移行期冬季と呼ばれる鍛練期間です。
移行期なんてのはまあ適当に過ごせばいいと思うのですが、12月から2月くらいのいわゆる冬季練習については、どんな練習を積むかによって春先の調子や翌シーズンの記録にけっこう影響があります。特に高校生は4月にインターハイ予選が始まってしまうので、ここでしくじると3年生なら早くも引退です

ってことで今回は
幅跳び選手の冬季の過ごし方
についてご紹介。
冬季となると短距離選手は300mやらの長い距離を走り込むことが多くなります、はたして跳躍選手にそこまでの心肺機能が必要なのかでしょうか?幅跳び選手特有の冬季の過ごし方についてまとめました。

23年11月更新

 

冬季練習について考えよう

なぜ『冬季練習』と銘打って練習メニューを変える必要があるのでしょう?
寒くてスピードが出ないから
試合がなくて練習に注力できるから
強い学校がやってるから
どれも間違っていないと思います。

寒い時期には技術練習はできないし、陸マガに強い高校が走り込んでるって書いてあればそのまんまメニューをマネしてみることもあるでしょう。
環境は人それぞれですので冬季練習の意味付けはなんだって良いと思います。陸上は思い込みで記録が変わるスポーツですので、自分の信じた理由で頑張ればいいです。
ただし、なぜその練習をなぜやるのか?をちゃんと考えるようにしましょう。

冬季練習は走り込みが基本

冬季練習と言えばこれっていう定番の冬季練習メニューがあり、代表的なのが走り込みです。あとはウエイト。
短距離選手はもちろん、短い距離しか走らない跳躍選手であっても冬季の間は400m系の『300×3×3』みたいなメニューが基本となります。
陸上の練習は『量より質』が基本ですが、冬季に限って言えば『質より量』。多少質が落ちても普段出来ない練習を取り入れることで、走りの幅を広げることを優先します。
また、冬の間は気温が低くて体が動きにくいためスピードが出ません
無理にスピードをあげれば怪我のリスクも高まるため、スピードを落としたなかで出来る練習でメニューを組んでいくことになります。そんな状況ではそもそも『質の高い練習』は望めません。
ただし、適当に走ればいいわけではないのは当然です。低いスピードであっても内容の濃い練習を考えると、『走り込み』に行きつくのです。

 

 

シーズン中に跳躍練習するために冬季のうちに走っておこう!!


陸上は基本的に速く走れば勝ちですので、短距離選手にも走り込みが必要なのはわかると思います。
では、幅跳びの選手について考えるとどうでしょう?
幅跳び選手にもスプリント能力が必要なのは前提として、跳躍種目は遠くに跳ぶと勝ちですので、速く走ったところで跳べなければ無意味です。であれば、冬季でも跳躍練習をした方がいいような気がするのですが…
陸上ch的結論としては
シーズン中に跳躍練習に注力するために冬季のうちに走り込んでおけ!!
跳躍選手が冬季で走り込みをしておく最大のメリットは、シーズンが始まってから跳躍練習に注力できることです。冬季のうちに基礎的な課題をクリアしておけば、シーズンが始まってからはもっと専門的な技術練習に時間を割くことができるはず。

 

 

幅跳び選手の冬季練習

ここから先は、跳躍選手あってもある程度の走り込みも必要という前提のなかで、冬季練習を跳躍専門という狭い範囲に限って見た場合に、他の種目の選手とどう取り組み方が変わってくるのかを紹介します。

幅跳び選手の冬季練習の目的は…
基礎的な土台作りと跳躍のベース作りです。
「速く走れるようになる」のが目的ではなくて、「跳べる体を作る」のが目的です。

跳躍種目は短距離と比べても走る距離は短く、より短い時間で大きなパワーを出力する種目です。
走り込みでは『スプリントの基礎』の習得が期待できますが、ひと冬を短距離選手と一緒に走りっぱなしですごしただけでは『跳躍の土台』が作れるとは思えません
跳躍に特化して考えると、短距離と同じメニューの冬季練習だと跳躍のベース作りが不十分です。
ってことで、幅跳び選手がやるべき冬季練習のメニューをご紹介!!
ここで紹介する練習をうまいこと組み合わせて中期的なメニューを組んで行きましょう。

走り込み系

まずは一般的な走り込み系の練習をご紹介。
基礎的な意味としてフォームを作る走るのに必要な筋力がつく心肺機能がアップするといった重要な効果があるのですが、それは短距離でも跳躍でも共通なのでここではあまり触れません。
あえて跳躍の色を出すのであれば『プラス走②』がおすすめ。

メニュー 目的と方法
インターバル走

300m×3
250m×5
決まった距離を2~3分程度のレストを挟んで走る練習。
冬季の間は距離をいつもより長めに設定するといい。
タイムを設定することで、最初のうちは余裕を持ってフォームを意識して走ることが出来る。
最後は体力がギリギリになった状態で効率のいい動きを模索しよう。
プラス走①

(300+200+100)×3
距離が減っていくタイプのプラス走。繋ぎはウォーク。レストは5分くらい。
だんだんと距離が短くなるので、体力的にキツくても頑張れば走れてしまうので精神的な負荷は軽いものの、体力的な負荷は限界を超えやすいので内臓にくる。
プラス走②

(300+100+200+100)×3
長い距離の間にダッシュを挟むタイプのプラス走。レストはウォーク。
最初のダッシュはまだ体力があるのでスピードを出せるものの、次の長い距離を乳酸がたまった状態で走ることになる。
最後のダッシュでは体がほとんど動かないため、より効率的な接地や足運びが要求される。
ダッシュでは『リラックスしながらもスピードを出す』という跳躍に近い動きが嫌でも身につきます。

 

 

プライオメトリクス系

バウンディングやボックスジャンプといった『バネを使った練習』のこと。外力を受け止めてバネとして反発に変換する感覚を養う練習です。
冬季ではスピードではなくパワーを意識して跳ねることで、シーズン中と違う刺激を入れることができます。
これだけだとメインの練習にはなりにくいので、補強的な位置づけや雨の日のメニューとしてもつかえる。

メニュー 目的と方法
ボックスジャンプ ボックスを使って跳び下りたり跳び乗ったりする練習。
体を真っ直ぐにして『軸』を意識してみたり、接地を短くして『反射』を意識してみたりすることで、跳躍の基礎的な感覚が養える
そもそもボックスジャンプがちゃんとできないと跳躍でいい記録は出ないぞ!!
バウンディング 自分の力だけでバネを引き出す練習。
スピードをバネにしたり、踏み込んでバネを使ったりと奥が深い。
100mバウンディングなんかをすれば自分がいかに雑な跳躍をしているかわかるはず!!
丁寧に、それでいて力強い効率的なバウンディングは跳躍の肝です。
立ち五段跳び バウンディングをよりパワー重視に発展させたのが立ち五段跳び。
ロスのない重心移動、強い反発、効率的な軸感覚といった跳躍の全ての要素をこれだけで網羅出来る最強の練習
15mくらい跳べると結構すごい。
不思議なもので、頑張っても跳べないのにリラックスするとグーンと伸びたりする。
ハードルジャンプ ハードルを連続ジャンプで跳ぶ練習。
1歩でポンポン両足ジャンプで行っても良いし、タタターンのリズムで片足ジャンプでもいい。
ボックスジャンプよりも実戦的で、目標物があるので感覚的にもやりやすい。
ハイハードル10台ができれば大したもんだ!!
アンクルホップ 体から膝までを伸ばしたまんまでポンポン小さくジャンプするドリル。
軸を作ること、膝でクッションしないことの2つの要素はこれさえやっておけばバッチリ身に着くはず
逆に、これが出来なきゃ跳躍には向いてない。
階段ダッシュ プライオか?と言われれば微妙。
速さを求めるのではなく、1歩1歩感触を確かめながら昇る階段ダッシュ。
一説に『幅跳びの踏み切りは階段を昇る感じ』とも言われる通り、重心を持ち上げる感覚は通じるものがある。
足裏で地面を押す感覚や、重心に力を加えて運ぶ感覚が養える

ウエイト系

管理人の現役時代はウエイトはやらなくていいって言う風潮がありましたが、そんな私も今ではベンチ140kgです。設備がなければできませんが、バーベルがあるなら積極的に使いましょう。
2カ月くらいウエイトしたところですぐに筋肉が増えてマッチョになることはありませんが、ある程度ウエイトトレーニングをすることで『目的の筋肉をピンポイントで使う感覚』を養えます。
ウエイトではピンポイントに筋肉を使うため、一度鍛えておくとあとで意識しやすくなり、特にお尻や背中などの普段意識していない筋肉でも自在に動かせるようになります。
あと、単純にパワーはあるに越したことがないのでやれるうちにやっておきましょう。

メニュー 目的と方法
BIG3
ベンチ
スクワット
デッド
施設があるならバーベルの基本種目3つは一通りやっておくと良いと思います。
とはいえ、なかなか環境がないとは思いますので、ベンチとデッドだけでも十分。
ベンチなら80~100kgで十分。デッドも腰を痛めないように注意して、MAX重量を求めるのではなくパワーを出す感覚を養う感じでやりましょう。
ヒップスラスト バーベルを腰の上に乗せて上下動させるトレーニング。やり方はyoutubeでも観て下さい。
お尻の筋肉にダイレクトに刺激が行くので、今お尻を使えていない人は使えるきっかけになるかも!?
クリーン 競技に一番つながるトレーニングと言われているのがクリーンです。
重量挙げの動きと思っていいのですが、やり方を間違えると腰を壊すので最初は軽い重量で瞬間的に出力するようにしましょう。
脚で地面を押して重さを受け止める感覚や瞬発的な動きはほぼ陸上競技です

 

 

練習メニューのサンプル

上で紹介したような練習を組み合わせることで冬季のメニューを組めます。シーズン中と違って、細かい設定はあまり意味がありませんのであまり深く考えすぎず、シーズンインに向けて大きく波を作ってコンディションを作っていきましょう。

例1.定番のメニュー
曜日 メニュー
(300m×3)×2
ウエイト
(300+200+100)×3
バウンディング
階段
(300+100+200+100)×3

例1は週に3回ランニングするメニューで、一般的な冬季トレーニングの例です。厳冬期でもシーズン前でもあまり考えずに使えるメニュー。
走る練習が連続しないように組んであって、同じ部位を連続で使わないようになっています。それでもけっこう疲れがたまりやすいので、週後半ではバウンディングと階段を入れていて、ここでは練習強度が下がるイメージです。
全体にスピードを落としすぎないような練習で、冬季とシーズンでそれほど環境を変えずに行うので部活ではこれくらいのメニューになることが多いと思います。

 

例2.走り込むメニュー
曜日 メニュー
(400+300+200)×3
(300+100+200+100)×3
ウエイト
(300+200)×4
バウンディング
200m×5

例2は走り込みを多めに入れたメニューで、厳冬期にはこれくらいのほうがやってる感じが出ます。
距離を踏むのでスピードは落ちるため、フォームを意識して体をうまく使うように意識すると良いでしょう。

例3.跳躍もするメニュー
曜日 メニュー
(250m×3)×3
跳躍練習
ウエイト
(300+100+200+100)×3
200m×5
跳躍練習

冬季でも跳躍練習を続けるメニュー。走る距離も長すぎないようになっています。
跳躍をする場合には走るメニューでもある程度のスピードを維持するように意識し、9割の力感でトップスピードを出すような感じにしましょう。実際には寒いとスピードが出にくいですが、短い接地で弾む感覚を忘れないように。
あまり寒い日に跳躍をするとケガしやすかったり力が出にくかったりするので、できるだけ暖かい日に跳ぶようにしましょう。

 

 

冬季練習ではスパイクを履かないでいいぞ!!

そもそもの話、冬季では普通はスパイクを履きません!!
理由はいろいろありますが、「寒いとケガしやすいからスパイクを履かない」というのがたぶん一番の理由。
1シーズン使ったシューズの会買いドキでもあるので、おニューのシューズをクリスマスプレゼントにもらったりお年玉で買ったりして充実した冬季練習を過ごしましょう。

冬季練習向けのおすすめシューズ

冬季ではスパイクを履かないのですが、接地感覚を養うためにはスパイクっぽい感覚のシューズが必要です。
各メーカーがそれっぽいシューズを出していますので、おすすめシューズをご紹介!!

ウインドスプリント(アシックス)

ドリルシューズといえばこのウインドスプリントです。一度廃盤になったものの、一部のユーザーの熱い支持によってまさかの復活。管理人も旧モデルを2足買いだめしていました。
ソールは非常に薄くてフラットなゴムソールなため、接地感覚はほぼスパイクです。最大の特徴はフラットソールによる接地感覚の良さで、反発はないものの履き心地はほぼスパイク。クッションがないのでジョギングには使えないものの、冬季のスパイク替わりとして使うにはこれが最適でしょう。
ミズノにもレーシングスターっていうのがありましたが、今は廃盤になっていてステップでのみ売っています。

ビルトトレーナー(ミズノ)

ミズノのトレーニングシューズがこのビルトトレーナーです。
ウインドスプリントよりもソールが厚いため若干クッション性があり、耐久性も高いためバウンディングなどのジャンプトレーニングにも使いやすくなっています。(厚いといってもクッションは硬いので接地感覚は良いです。)
スパイクの代わりとしてはウインドスプリントのほうが近いのですが、トレーニングシューズとしての汎用性はビルトトレーナーに分があります。
フラットなソールになっているので接地感覚が非常に良く、これでひと冬練習すれば春には間違いなくレベルアップできているでしょう!!

 

 

ウエーブデュエル3(ミズノ)

プレート内蔵の薄底シューズがこのウエーブデュエル。管理人も初代モデルを使っているゾ!!
デュエルシリーズはいろんな種類があるのですが、無印のウエーブデュエルが良いと思います。
ドリルシューズに比べると若干ヒールが高くなっているので超フラットではないものの、いわゆる『薄底シューズ』で接地感覚が良くて、それなりにクッションがありながらも軽量で走りやすいです。また、樹脂プレートが入っているのでブレにくくて割とスパイクに近い履き心地でもあります。冬季が終わってシーズンにはいっても普通に使えるのでファーストシューズとしてもおすすめ。

ソーティマジック(アシックス)、ウエーブクルーズ(ミズノ)

ソーティマジックウエーブクルーズは上級者向けのマラソンシューズで、超薄底でフラットなソールが特徴です。ロードで使うには上級の脚力が必要ですが、タータンでの走り込みには最適。
スパイク並みの超軽量シューズで、耐久性以外の性能は最高級で、『良いシューズ』の日本代表です。移動で使うにはもったいないものの、タータンで使う分には耐久性も問題なし!!ただ、ジャンプで使うとすぐ潰れます。
ドリルシューズだとソールがゴムなので接地の瞬間に硬さがあるのですが、マラソンシューズはソールが非常に柔軟で、地面を掴む感覚を求めるならこれが最適です。

ウエーブエンペラー(ミズノ)

薄底でありながらある程度のクッションを備えた上級者向けシューズ。ウエーブデュエルの柔軟バージョンと言ってもいいかもしれません。
ソーティやクルーズと同じように非常に柔らかくて接地感覚が良いシューズでありながら、かかと部分にはクッションがあるのでジャンプトレーニングにも使える。管理人も昔これの前身モデルを履いてその良さに衝撃をうけて以来ミズノを履き続けています。

ミズノの契約選手は結構これを履いている選手が多い気がしますね。

ターサージャパン(アシックス)

アシックスの薄底クッションモデルがこのターサージャパンです。スプリントシューズとしては一つの完成系で、接地感覚の良さとクッション性の良さに履き心地の良さを併せ持った最高のシューズです。が、アッパーは破れやすい。
設計はかなり古いのですが、現代のシューズと違って足当たりが柔らかくて履き心地は最高。10年くらい前まではかなり人気があったんですが最近はほぼみませんね…
かかとにゲルが入っているので若干重たさはありますが、ウエーブエンペラーよりもかかとのクッション性は高いのでバウンディングが多いならこちらもアリ。

 

今回のまとめ

辛い練習をすれば強くなるわけではなく、無駄な努力は無駄です。とはいえ、冬季の間に走り込みなどのシーズン中にできないような練習をしておくことは、たとえ幅跳び選手であっても重要です。
陸上の技術は土台があってこそのもので、シーズン中に技術練習に注力するためにも、冬の間はしっかり走り込みましょう。
大切なことは冬季練習を頑張ることではなく、シーズンでちゃんと跳べること!!
シューズを選んだりメニューを考えたりして練習の質を上げることは、シーズンが始まったときにレベルアップするためです。
春にうまくシーズンインするためにはしっかりと目的をもって冬季練習に取り組むことが大切です。






Twitterで更新をお知らせしています↓