<幅跳びのポイント>第7回:幅跳び選手の冬季練習

幅跳びの冬季練習

陸上のシーズンはだいたい4~10月までで、それ以外の時期は移行期冬季と呼ばれる鍛練期間です。
移行期なんてのはまあ適当に過ごせばいいと思うのですが、12月から2月くらいのいわゆる冬季練習については、どんな練習を積むかによって春先の調子や翌シーズンの記録にけっこう影響があります。特に高校生は4月にインターハイ予選が始まってしまうので、ここでしくじると3年生なら早くも引退です

今回は
幅跳び選手の冬季の過ごし方
についてご紹介します。

短距離選手は300mやらの長い距離を走り込むことが多いでしょうが、跳躍選手にそんな心肺機能が必要なのか?幅跳び選手特有の冬季の過ごし方についてまとめました。

 

 

冬季練習について考えよう

冬季練習とはいったいなんなのか。なぜ冬季と銘打って練習メニューを変える必要があるのでしょう?
寒いから?
試合がないから?
強い学校がやってるから?
どれも間違っていないと思います。私も冬季練習をする理由なんてのは先人がやっていたからにほかなりませんでした。寒いから技術練習はできないし、試合がないから短距離のメニューに混ざってみたり、強い高校は走り込んでるって言うから陸マガみてそのまんま真似して走ってみたりしていました。
冬季練習の意味はなんだって良いと思います。陸上は思い込みで記録が変わるスポーツですので、自分の信じた理由で頑張りましょう。

一般的には走り込む時期

なんだっていいとはいえ、冬季練習と言えばこれっていう練習はあります。代表的なのが走り込み。短い距離が専門の短距離選手であっても、冬季は400m系の『300×3×3』みたいなメニューをやってみたりします。
冬季には『質より量』という考え方もあり、試合期にはやらないようなメニューを積極的に取り入れたりもます。陸上の練習にはいろいろ考え方がありますが、スピードを落として(寒いので落ちる)その分距離を伸ばすというのが『量より質』の練習です
陸上の練習をスピードと距離で分類するとこんなイメージ↓

冬季で走りの土台を作る

なんで走り込むのかってのはだいたいが『土台を作るため』っていうのがその理由です。抽象的すぎてイマイチよくわからない表現ではありますが、これは2つ意味があります。
1つ目は基礎体力がつくということ。400mも走ったら最初のうちは満身創痍になるでしょうが、これをひと冬続ければ春には400mをしっかり走りきれるようになっているはず。
2つ目はフォームを作れるということ。スピードが上がれば体の制御はむずかしくなりますが、冬季ではスピードが落ちるのでフォームを意識して走りやすい

基礎体力がついてフォームがしっかりするってことで、走り込むと土台ができます

幅跳びに走り込みは必要か?

短距離選手にとっては走り込みは大切です。では、幅跳びの選手にも走り込みって必要なのでしょうか?
必要です。

幅跳びも足が遅いとダメ。速く走れればそれだけで楽に記録を伸ばせます。それなりに走り込んで土台をつくって短距離選手並みの走力を身につけたいところ。

ってことは当たり前!!
陸上で足が遅くていい競技なんてありません(投擲は除く)。足が速い方がいいから幅跳び選手も冬季は走り込んだ方が良いっていうのは間違ってはいません。でもそんなことより大切なものがあるかも。
前のシーズンを振り返って、自分に足りないモノがスピードだと思うのであればひと冬走り込むのも良いでしょう。
でも、走りに土台があるように跳躍にも跳躍の土台がある。跳躍の土台がないのに足が速くてもそれはそれで幅跳び選手としてはダメです。

 

 

幅跳び選手の冬季練習

跳躍の土台を作るのが跳躍選手の冬季練習です。
土台ってなんなのかは人によって思うところが違うでしょうが、跳躍に必要な要素ってだいたい共通だと思います。
跳躍選手は短距離選手と比べて走る距離は短く、必要なパワーは大きく、かかる負担も大きい。ひと冬を短距離選手と一緒に走りっぱなしですごして跳躍の土台が作れるとは思えません
走る事が必要なのは前提として、幅跳び選手が冬季でやっておいた方が良い事をご紹介。

幅跳び選手にとって冬季練習とはなんなのか?

練習は何をやっても良いと思いますが、その練習の意味を考えることが大切です
冬季は単純に寒くて技術練習が出来ない期間とも言えます。技術練習ができないので走る系の練習を中心に設定しがちですが、せっかくシーズン中に身に付けた細かい動きを忘れてしまう恐れもあります。でもそれも善し悪しで、シーズンで染み込んでしまった悪いクセをリセット出来る機会でもあります。
シーズン中だと週に1回くらいは技術練習をする必要があっても、冬季は2カ月くらい一切砂場を開けないで過ごして走力アップに集中することができる期間と考えることも出来ます。
週に2回くらい5kmとかの長距離を走って基礎体力を付けることが出来る時期でもあります。

いろいろな選択肢がある冬季ですが、幅跳び選手に特有なのは走力跳躍力のどちらを鍛えるか選ぶ必要があることかもしれません。
この冬を走力アップのために使うのか?それとも跳躍力アップのために使うのか?
幅跳び選手はそのバランスを考えなければなりません。もちろん、シーズン中と練習を変えないというのもありでしょう。

 

冬しかできない事をやろう

冬は試合がありません。ってことは、11月から3月までの間は試合を無視して練習だけに集中できます。1年のうちでこれだけ長く練習のことだけを考える時期は当然ながら冬季だけ。せっかく試合がないのだから、この時期にしか出来ない練習をやっておきましょう。

走り込み

シーズン中はスピードを落とせないため、走り込みはなかなかできません。冬季では寒くてどうせスピードなんか出せないので距離を踏んでおきましょう。
走り込みのメリットは
フォームを作れる
走るのに必要な筋力がつく
心肺機能がアップする
足が速くなる
といったところでしょうか。中学生や高校生でまだ体が出来上がっていない選手であれば、ただひたすら走り込むだけでも足が速くなるはずです
また、スピードが低いのでフォームを意識しやすく、普段おろそかにしがちな部分を意識して走るなどすれば1本1本にしっかり課題を持って取り組むことができるでしょう。
そしてなにより心肺機能があがります。こればっかりは頑張って辛い思いをしないと向上しません。夏場はフィールドだからって言う理由を付けて逃げている長い距離にも冬場はちゃんと取り組みましょう。
トップスピードを高めるためにも心肺機能は必要で、特に跳躍本数が増えてきた試合後半では案外こういう練習が効いてきます。

ウエイトトレーニング

冬は肉体改造のチャンスウエイトは高付加の代表みたいなトレーニングですので、シーズン中は他の練習との兼ね合いからあまりしっかりと取り組めないと思いますので冬のうちにやっておきましょう。
ウエイトをガッツリいれられるのは冬季だけ。2月くらいまではウエイトをしっかりやって、3月4月でスプリントの動きに落とし込むようなスケジュールを組めば筋肉は強い味方になります。筋肉は裏切らない。

跳躍では瞬間的に大きな負荷がかかるからというのが躍選手にウエイトトレーニングが必要な理由です。
特に踏み切りの瞬間にはスピードをジャンプに換えるために体が大きく振られます。この時に筋力が足りないと、頭を支えられずに腰が曲がってしまったり、体が引き起こせなかったりします。
幅跳びの場合は特に背筋系の筋力が記録に影響してきます

ウエイトトレーニングをすると手っ取り早く筋量が増えるため、頑張るとけっこう体つきが変わります。筋量が増えるとそれなりに体重が増えたり動きが変わってくるので、バランスを考える必要はあります。
シーズン中のウエイトでは軽めの重量を扱う場合が多いでしょうが、冬季は普通にウエイトトレーニングをして良いと思います。ベンチで言えば100kgを目指すくらい。
代表的なトレーニング内容は
BIG3(ベンチプレス、デッドリフト、スクワット)
クリーン
ヒップスラスト
といったあたりでしょう。
デッド、スクワット、クリーンでは腰を痛めやすいので必ずベルトを付けましょう!!

ゴールドジムブラックレザーベルト
腰は痛めると一生引きずります。また、ベルトをすると腹圧のかけかたがわかるようになるので、運動能力も上がります。

BIG3はいわずもがなですので説明不要でしょう。
ただし、やりかたは競技特有のものがあり、チーティングをしてもオッケーです。チーティングっていうのはベンチプレスのケツ上げや、ちょっと勢いを付けてバーベルを上げるようなやり方です。チーティングを使わない「ストリクト」なやり方の方が筋肉には効きますが、別にチーティングをしたって問題ありません。

陸上のウエイトトレーニングと言えばクリーンです。
クリーンはデッドリフトのスピード特化版みたいなもんだと思っても良いと思います。軽い重量でやらないと腰が1発で壊れるので、最初はバーだけでやっても良いくらいです。慣れてきたらちょっとだけ重りを増やしましょう。

そして特にオススメなのがヒップスラスト
やりかたはYOUTUBEで検索すれば掃いて捨てるほど出て来るので省略しますが、お尻の筋肉をピンポイントで鍛えることが出来ます。走るうえで非常に重要であるにもかかわらず、走っているだけではなかなかつかない大臀筋。ヒップスラストをやると400mを走ったあとのような強烈な刺激が得られます。これをやるだけで走る時にも意識しやすくなるでしょう。

 

冬はバネを鍛えてやりすごそう!!

バネってのは半分は生まれ持ったものですが、鍛えればそれなりに強くなります。
跳躍種目では記録に直結するバネの強さですが、バネを鍛える練習はこれまた負荷が高くて怪我のリスクがありシーズン中にはなかなかできない。
バネを使った跳躍については次回まとめようと思っています。
冬のうちにバネを鍛えておけば、春先のジャンプが見違えるように弾むかも?
バネを鍛えるっていうのにもバネをガンガン使って鍛えるものと、バネの感覚を鍛えるものがあります。
走るのが嫌だからではありません。バネを鍛える方が跳躍にプラスだから走らないだけです。

プライオメトリクス!!

バネといえばプライオメトリクス。急に筋肉や腱を伸ばすと体が勝手に反発するという『伸張反射』を使うトレーニングです。筋肉と跳ぶのではなくて腱で跳ぶ感じで、反発を全身で受けて弾みます。
代表的なのが
ボックスジャンプ
ハードルジャンプ
アンクルホップ
立ち五段跳び
といったトレーニングで、連続ジャンプです。これが上手に出来る人は幅跳びも跳べるってことは想像がつくと思います。

ボックスジャンプはバネを使った動きを覚えることができ、バネの強化も出来るというプライオメトリクストレーニングの基本でありゴールです。これだけやっとけばいいかも。

ハードルジャンプ立ち五段跳びではバネに加えて乗り込み動作もはいってくるので、実際の跳躍に近い動きになります。これができるようになると跳躍のレベルも上がるはず。ハードルジャンプはハイハードルで連続5台、立ち五段跳びは着地を入れて15mくらい跳べるようになると足が速くなくても幅跳びでも6m後半くらいは跳べると思います。

ポイントとしては、頑張っていないのにメチャクチャ弾むようにすること。出来るだけ接地時間を短くするように意識し、しっかりとトゥアップをして足首は固めましょう
反発はごく短い一瞬で起こるため、意識できるような時間はありません。もし頑張っているとすれば、筋力で跳んでしまっていると思います。

注意として、プライオメトリクス系のトレーニングは突然腱断裂を起こす可能性がありますので、やりすぎは禁物。特にアキレス腱に少しでも痛みや違和感があった場合には即中止しましょう。

 

無駄な努力は無駄

努力しても足の遅い人はいっぱいいます。努力しなくても足の速い人もいっぱいいます。『強い人よりも何倍も努力して初めて強い人と並べる』ってのはそんな甘いもんではありません。
だってそれじゃあ強い人も努力してるんだから絶対追いつけるわけないじゃん!
足を速くしようと努力しても足が速くならないのであればそれは無駄な努力です!!

努力をするのであれば、適切なポイントに適切な量の努力をしましょう。時には諦めましょう。どこを目指すのかにもよるとは思いますが、強い人が走り込んでいるなら逆に自分は走り込まないくらいの反骨精神が跳躍には必要です。強い人と同じことをやっても越えられないと思います。
適切な努力ってのがなんなのかは考える必要がありますが、冬季練習は頑張れば速くなるってものではありません。試合を見据えて自分に必要な練習を組むことが大切です

頑張ったからって強くはならない

強豪校が走り込んでいるってのは事実です。が、必ずしも走り込んでいるから強豪なわけではありません。
強豪校出身の選手と飲むと『うちの練習は日本で一番つらかった』ってことを口にしますが、強豪校の選手全員が強いわけではありません。たしかに400m系は強豪校が目立ちますしロングスプリントは練習量である程度決まると思いますが、跳躍に関しては無名校で強い選手もけっこういます。
頑張れば頑張るだけ速くなるから冬季は死ぬ気で走り込む方が良いっていうのは中学野球部でアホみたいな量の米を泣きながら食べさせられるようなもんです。量も必要だけど質もないがしろにしてはいけない。
『足の速い選手が走り込んでいろいろ身につけてより速くなる』っていうのはたしかにある。でもそれって自分に当てはまりますか?
坊主にしたって甲子園に出られるのわけではありません。

辛い練習をしたら速くなるってのは正解ではありません。冬季に出来る最高を考えてやってみたらが辛い練習だったのであればそれは正解です。

 

大切なのはシーズンでちゃんと跳べること

6mギリギリで12秒台だった選手が走り込んで11秒台で走れるようになったとしても、春シーズンで5mしか跳べなければ県大会には出られずに引退です。インハイ路線やインカレ路線なんて関係ないって人はそれでいいのかもしれませんが。
幅跳びが専門なのであれば12秒台のまんまでも6m50跳んで県大会の決勝に行ける方が正しい練習だと思います。
幅跳びは足が速い方が有利なのは間違いありませんが、足が速くても跳べないとダメ。足の速さを跳躍につなげるための体作りや基礎作りが跳躍に必要な冬季練習です

シーズンインに気をつけろ!!

冬季練習をいつまでもやっていると春先の大会で失敗します。3月末にある記録会なんかは失敗してもいいのですが、インハイ予選での失敗は最悪。3年生なら引退だし、それ以外でも夏まで記録会ばっかりで暇になります。
3月中旬の卒業式くらいにはにはいったん1週間くらいのリフレッシュ期間でも設けて、元気な状態でシーズンを迎えるようにしましょう
3月に入ったらスピードトレーニングに切り替えておかないとシーズンインが遅れます。冬季練習は2月までにひと通りの結果をだしてさっさとやめましょう。不思議なもんで、3月まで走り込んでいると5月くらいまで調子が上がらなくなります。

冬季練習なんか別にしなくてもいい

冬季練習ってそもそも必要なのか?
1年中砂場で跳んでた方が幅跳びは上手になると思います
シーズンで調子良くきてるのに練習を大きく変えることはそれなりにリスクがあります。技術練習をしないせいでせっかく身に付きかけていた技術がスッポリ抜け落ちて翌シーズンでスランプに陥る可能性もあります。
東京選手権のように時期が早い試合の標準突破を狙うのであれば春1発目の試合からフルスロットルで試合に臨む必要があります。一般的には冬季練習が大事って言われますが、冬季で調子を落としたり怪我をしてしまったら本末転倒。
まずは自分に冬季練習が必要なのかってことから考えましょう。

スパイクが一番大事

春先に記録を伸ばす一番楽な方法はスパイクを新しくすることです。新品のスパイクの跳びやすさはどんな練習よりも記録に直結します。
ミズノ、アシックス、アディダス、ナイキの4メーカーから幅跳び用のスパイクがでていますので自分に合ったスパイクを探しましょう。オールラウンド用で跳んでいるのであれば、ひと冬サボっていても幅跳用のスパイクに変えれば記録が伸びます。
個人的にはミズノがおすすめです。

ってなことで幅跳びの冬季練習について紹介しました。
冬季練習が好きな人は幅跳びやめて400mに転向した方が良いと思います。






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