【レビュー】「メタスプリント」はガッチガチなのに走りやすい!だけど性能を引き出すには高いスキルが必要だ!!
202X年
陸上界は厚底の炎に包まれた
2023年現在、「速く走りたい」のが目的であれば厚底スパイクを選ばない理由がないです。
しかし、ほんの数年ままでは薄くて硬いスパイクこそが「上級者向けスプリントスパイク」で、硬ければ硬いほど薄ければ薄ほど尊敬の眼差しを受けたものです。
そして薄底世紀末にリリースされたのが「メタスプリント」「ジェットスプリント2」「ソニックスプリントエリート2」のフラット3兄弟。
従来のスパイク技術の結晶と言える薄底時代末期のモデルのほうが厚底より速く走れるってことはなかろうか?
ってことで今回は
【レビュー】『メタスプリント』は意外にもシューズっぽくて走りやすい!
だけど反発を使うには高いスプリントスキルが必要だ!!
をテーマにご紹介。
アシックスが薄底スパイク開発の末に行きついたのはまさかの『ピンレス』。
ピンの抜き差しによるロスすらも排除することで0.04秒速く走れる!ということでピンをなくしてしまったとんでもないスパイクが今回レビューする「メタスプリント」です。
「フラット」と「ピンレス」を組み合わせることで他のスパイクとは一線を画す奇抜さをもったスパイク。意外にも『普通』にかなり走りやすくて、だけど扱いには高いスプリントスキルを要するスパイクだったのです!!
ちなみに、ピン付きの「ジェットスプリント2」は別記事でレビューしていますのでそちらを見てからのほうが今回のお話も分かりやすいです↓
今回も長いですよ!!
今回の構成も例によって最初は手に取った感じから。そして後半では実際に履いた印象をレビューしていきます。
メタスプリントは「ピンレス」で「フラット」な「カーボンスパイク」です!
今回紹介するメタスプリントはどんなスパイクか?っていうと…
『ピンレス』で『フラット』な『カーボンスパイク』です!
そのまんまだけど、実際に履いてもそんな感じ。
・ピンレス
・フラット
・フルレングスカーボン
メタスプリントは良くも悪くもこの3つの要素をそのまんま組み合わせた想像通りの履き心地と性能のスパイクで、つまり、ピンがなくてフラットで硬いスパイクです。それ以上でも以下でもなくて、魔法のように弾むとかそういう感じじゃないです。
で、気になるであろうピンレスってどうなの?ってところで言えば、別にピンレスだからどうってこともないです!!
まずはレビューの前段階として、画像や映像ではわからないこのスパイクを実際に手に取ってはじめてわかる特徴についてご紹介していきましょう!
カーボンプレートは思った以上に「薄い」し「硬い」!!
プレートは薄くて触っただけで軽さが伝わる質感で、ガッチガチに硬いです。そしてツヤッツヤ。
写真でこの『本物感』が伝わるかなぁ?プレートの切れ目もスパッと垂直に角が立っていて実際に手に取ると『プロ仕様』な感じ。
メーカーの写真ではわかりにくいのですが、このカーボンプレートは…
薄くてガッチガチでめっちゃカーボン!!です。
管理人は10足以上(数えてない)のスパイクを持っていますが、それらと比べると質感が別モノです。
他にもカーボンを使ったスパイクはありますが、これほど露骨に『カーボンですッ!!』っていうスパイクはない。
っと言われてもよくわからないと思うので具体的な事を言うと、プレートは手で叩くと『コンッ!コンッ!』って響くほど薄くて硬い!!
多分、普通の樹脂プレートの半分くらいの薄さと軽さで倍くらいの硬さなんじゃないかな?
まあ、だからなんだ?っていうと…
プレートは想像以上に薄くて硬い!!
あなたが思っているよりもっと薄くて硬い。
ピンはないけど足裏の凹凸のボコボコ感がけっこうある
ピンレスだから当然ピンはないのですが…
ピンがない代わりに足裏にデカイ凹凸あってけっこうなボコボコ感がある!
写真でもボコボコ感がわかると思うけど、ピンの代わりにハニカムの凹凸が生えています。特に、土踏まず辺りにある出っ張りが結構存在感あって、支え台的な感じすらする。
実際に走るまでは「ピンレスだからそりゃもう裸足感覚でしょ?」な~んて思ってたけど、それはちょっと間違ってました。
実際には、ピンがない代わりに凹凸があって、その出っ張りが地面を噛むので足裏にはボコボコした感触がけっこうあるぞ!
この凹凸、ピンよりもむしろ邪魔な気すらする。っていうか、従来のスパイクでピンが邪魔って思ったことないからなぁ…
点で刺さるピンと違ってボコボコした山が地面をグリップするから「裸足感覚」とは全然言えない。特に中足部の出っ張りは意外にも支え台的な感じがして結構な存在感があるぞ。
「裸足感覚」ってやつを求めるならたぶんジェットスプリント2のほうがいいです!
っと言っても、ボコボコは不思議なもので走りだすとあんまり感じないので気にしなきゃ気にならないです。そもそも、裸足感覚を求めてないなら問題なし。
ピンがなくてもグリップに不安はない!
ピンレスと聞くとグリップは大丈夫?って思いますよね。
気になるグリップ感については問題なし!!
少なくとも晴れ日にタータンで走る限りでは滑る感じはしません。そりゃあ後列4本のスパイクに比べればグリップする感じは弱いですが、5mm4本のジェット2と比べたらほぼ一緒。コーナーでもスタートでも普通に走っていれば滑ることはないです。
あえて雨の日に使いたいとは思わないけど、晴れの日限定であれば全然問題ないです。
そりゃあ、考えてみればシューズだってピンないけど滑らないんだから大丈夫よ。
足入れはタイト。同じアッパーのはずのジェット2より緩い!?
【写真】ジェット2とアッパーはまるっきり同じ
他の上級者向けスパイクと同じように足入れはタイトです。若干細目な気もしなくもないですが、特別何か言うような足型ではないと思います。『HL-0メッシュ』は足あたりが柔らかいので履き心地自体はかなり良くて長時間履いても痛くならない。ただ、あえて欠点を上げるならばダイナラップが邪魔ではある。
そして、管理人は気付いた…
メタスプリントはジェットスプリント2よりワンサイズ緩いぞ!!
ジェット2とメタスプリントは同じアッパーなのでサイズも同じだと思うじゃん?
管理人は先にジェット2の28.5cmを買っていて、これがジャスト。そのためメタも試着もせずにネットで28.5cmを買ったんです。
正直言って、ジェットよりワンサイズでかいぞ!!
失敗しました。多分メタはワンサイズ下げて28.0cmを買うべきでした。なんなら、27.5cmにしてタイト目に履いた方が良かった気すらする。
同じアッパーでソール形状もほぼ一緒なのになんでサイズ感が違うのかは謎ですし、普通は上級モデルになるほどタイトになるので油断していました。まさか緩くなるとは…
もし、ジェット2を持っていて同じサイズで良いかな?って考えている人がいるならば、ワンサイズダウンがおすすめです。
っていうか、安い買い物じゃないので試着した方が良いです。
基本的にはジェットスプリント2のカーボン版!?
並べるとほぼ同じ構造なのがわかります。
メタスプリントってどんなスパイク?をすっごく簡潔に言うと
メタスプリントはガッチガチになったジェットスプリント2です。
ジェットスプリント2の反発あるバージョンと言っても良いかも。
ジェットスプリント2を履いたことがある人であれば、あれをガッチガチにしたらメタスプリントになるってのがメタスプリントを説明するのに一番わかりやすい表現だと思う。
ジェット2の走り味が好きで、だけどもうちょっと硬ければなぁ…っと思っている人は絶対メタスプリント買った方が良い。
ピンの有無とプレートの硬さが違うので履き心地や接地の感触に違いはあるのですが、方向性は一緒。
ただ、プレートの弾み方は結構違うので反発の使い方は結構違う。詳しいことは後述します。
ちなみに、重量はメタスプリント144g、ジェット154gだったのでメタの方が10g軽いです。でもわからんよ。
フラット走法特化型スパイクなのは間違いない
メタスプリントを評価する上で、走りがフラットなのか?フォアなのか?で大きく評価が変わると思います。
メタスプリントは『足首を固めて短い接地のなかで大きな力をかけて素早く切り返す走り』を出来る人がそれをするためのスパイクと考えたほうが良い。
シュっとした見た目が似ているスーパーフライエリート2と並べると、ジェット2とメタスプリントは明らかにつま先の反りが少なくて「フラット」なのがわかりますね。
『長めの接地で押し込む走り』の人は反りがあって重心移動がしやすい傾斜のあるスパイクや厚底の方がいいでしょうねぇ…
メタスプリントにはフラットの難しさがある
メタスプリントはジェットスプリントと同じような設計思想のスパイクです。つまりフラット特化。
『フラットスパイク』って基本的にどれもブレーキがかかりずらいので「走りやすい」んですが、一方でスピードを出そうと思うとスパイクのアシストがないので難しい場合が多いです。
その点で言えば、メタスプリントは最強クラスに扱いずらくて高度な技術を要するスパイクでしょう。スパイクの性能を使ってスピードを出すのはかなり難しい印象。
詳しくはレビューの中でも言及しますが、ジェット2よりもフラットの要求度合いは全然高くて、「フラットプレートを曲げて走る」っていう甘えた走り方は許容してくれません。ナイロンプレートであればしなって吸収してくれるような状況でも、カーボンプレートだと反発が瞬間的すぎるから全部弾かれちゃう。
つまり、フォアのクセがあるならメタスプリントはやめておいた方が良いッス!!
この特性は割と顕著だと思います。間違いなくフラット特化型のスパイク。
ピンの有無ってあんまり関係ない?
ジェット2と並べて比べるとピンの有無以外は大体似ていますが…
ピンレスだからといって何かが大きく違うってことはないです!!
ピンのある『ジェット2』とピンのない『メタスプリント』を履き比べすると、硬さや凹凸感といった構造的な違いこそあるものの、ピンの有無については特に何の印象はない。
なんていうか、ピンがあるかないかなんか走ったらわからんよ!!
そりゃあ当然、後列4本あるようなスプリントスパイク(スーパーフライエリート2とか)と比べれば明らかにグリップ感は違いますし、後列4本の方がピンでグイグイ行ける感覚は間違いなくあります。
ただ、それはそのスパイクの特性の違いであって、ピンの有無以外がだいたい一緒のジェット2と比べたら走った感じでピンの有無による差は感じません。
他にも、アディダスの6本ピンのようなプレートで走る系のスパイクと比べてもグリップ感については大きな差はないと思います。
良くも悪くもピンレスである必要が分からないっていうか、ピンレスのデメリットは別に感じないけど、ピンがないことによるメリットも別に感じませんでした。
ピンがないからプレートの屈曲に自由度が…って言うにはカーボンが硬くてそもそも曲がらない。
ピンがないと足裏感覚が…って言うにはハニカムの凹凸がでかい。
ピンによるロスが…って言うには今まで9mm9本ピンでもそんなこと感じてこなかった。
そんなわけで、管理人のレベルではピンがあろうが無かろうがどっちでもいい!!
まあでも翻って考えるとそれもそのはず…
トップ選手が履いても0.04秒しか変わらないってんだから一般の人が履いたってピンレスの恩恵なんてわかるはずねぇんスよ!!
11秒そこらで走ってるのにピンをなくしたことで0.04秒速くなったのが体感できたとしたらそりゃもう気のせいでしょう。なんならジェット2の方が速く走れるよ!
ピンレスって奇抜すぎるから履くまではそれはそれは変わったスパイクなんだろうなぁと思っていましたが、実際に履いてみると履き心地はかなり普通です。ピンがないって言われなければピンはある。
スタートやコーナーでも別に滑る感触はないし、疾走局面でも普通に走れちゃいます。
ってことで、メタスプリントを実際に履いて一番感じるポイントは「ピンレス」ではなくて「ガチガチカーボンプレート」です!
ってことで、長かったですがここまでがメタスプリントってどうなん?
ってお話でした。
ここからがいよいよ実際に走ってみた感想とレビューです!!
【実走レビュー】
メタスプリントは走りやすいゾ!!
だけど高反発を使うには高いスプリント技術が必要
【写真】凹凸があるので以外にも傾斜をつけて接地することもできるゾ
メタスプリントを履いた印象は?っというと…
走りやすいけどスピードが出しにくい!
反発を推進力にするには高いスキルを要する!!
走りやすいけど扱いずらくて超上級者じゃないと本領を発揮できないスパイクだと思います。
まず一番に言いたいのは、メタスプリントはすっごく走りやすいんです!
硬いのに脚への負担も少なくて、接地の自由度も高いのでシューズを履いているような感触でスプリントができる。
でも、不思議なことに全然タイムが出ないんです…
気持ちよく走れるし力感も悪くないのにタイムをみると全然ダメ。感覚と動きがズレちゃってるんです。
そうつまりこれは…扱いずらいスパイクだったんです!!
扱いずらいスパイクって色々あるけど、たいていの場合は硬いだけなので管理人みたいに体重と筋力さえあれば履けちゃうんです。だけど、メタスプリントは技術がないと履きこなせない。
傾斜がないせいもあって、ちょっとでも雑に走ると反発が上に向いちゃってビックリするくらい進まない。この扱いずらさはマジモンです。
でも、走りやすくはあるんですよね…
走りやすいのに扱いにくい。どういうこと!?
っていうことを、管理人的に色々考えました。購入から2カ月、なかなかこの謎が解けずにレビューが書けませんでしたが、なんとなくわかってきたので「メタスプリントのポイント」をピックアップしてレビューしていきましょう!!
今回のレビューのポイントはこちら↓
・なんか知らんけどめちゃくちゃ走りやすくはある
・硬いだけあって反発はかなり強くて短い!
・踏んでも踏んでも進まない!?走り方迷子になる。
・『正しい走り』を身に付けるための練習道具として優秀かも
何度も言いますが、走りやすいんです。
でも、スピードを出すには技術を動員してうまく走る必要があるんです。
みんなに優しいけど妥協は許さないスパイク。
・なんか知らんけどめちゃくちゃ走りやすくはある
メタスプリントはめちゃくちゃ走りやすい!!
これは実際に履いてみて一番感じたところで、しばらく履いてもこの印象は変わりません。
フラットスパイクって凹凸が少ないから歩いたりちょっと走るだけだとブレーキ感が少なくて走りやすく感じるものではあるんですよね…
(でも、メタに関してはこれがちょっと危険な感触なのかもしれません。)
メタスプリントは硬いスパイク特有の押し出される感じとかカクンとする感じがなく、接地の自由度がかなり高いです。好きなように踏めるスパイク。履き心地はスパイクよりシューズに近い印象をもちました。
ガッチガチプレートとは裏腹に、走った感触というか接地のタイミングがドリルシューズとだいたい一緒で、ウインドスプリントから余計なものを全部取っ払ってシャープでガチガチにしたような履き心地と言えばいいだろうか…
接地の自由度が高くてかなりスムーズ
【写真】フラットで面で着くこともできるため接地の自由度が高い!
メタスプリントの最大のメリットは…
接地したいところで接地出来てブレーキロスが少ない!
多分これだと思います。
接地の自由度に関してはピカイチで、なんならかかとから着いて走ることも出来ます。
また、拇指球からでも小指側からでもスムーズに入ることができるため、接地でのブレーキロスはかなり少ない体感があります。
いわゆる『支え台』のある傾斜の強いスパイクだと接地位置が強要されることが多くてそれが嫌って人も多いですが、その感覚を突き詰めていきたいならメタスプリントは最良の選択肢になりえる。
ただ、スムーズなのは接地の瞬間だけで、そこから重心移動していくのはかなり難しいです。
自由な半面、スパイクからのアシストはほぼない
メタスプリントは自由に走れるってこともあってそれが「シューズに近い」印象になるんだと思います。
ただ、悪く言えばこのスパイクはほとんどアシストしてくれないとも言えます。反発置いとくから使いたいなら勝手にどうぞって感じ。
一般的に言えば柔らかいスパイクは当然アシストも弱くなるのですが、メタスプリントは硬いのにアシストが弱いのでちょっと変な感じがする。
この感触はほかのスパイクとは一線を画すものがあって、反発はあるけどスパイクを感じないっていうか、「スパイクに走らされてる感」がないんです。
真逆の感覚、つまりスパイクが走らせてくれる感覚が強いスパイクには『クロノインクス』があって、インクスはスパイク成りに走ればタイムがポーンと出ちゃう。昔大学の同期が「ミズノは何も考えずに走ればいいから楽チン」って言ってましたが、まさにそれ。たぶん多くの選手にとってインクスの方がタイム出ると思います。
メタスプリントはどうやって走ればいいか教えてくれないから難しい!
『走りやすい』のに『扱いにくい』とはこれいかに?
って感じではありますが、そう感じるんだからそう書くしかないんです。
接地の自由度とそれに伴うシューズ感覚は間違いなく走りやすさに繋がっていますが、その裏で要求されるのは「地力」、つまり自分の走り方が確立していないと上手く走れない。
そういう意味では、間違いなく上級者向け。走り方がわかっている上級者が履けばタイムも出るはず。
・プレートが硬いだけあって反発はかなり強い!そして短い!!
メタスプリントのひとつの特徴はカーボンプレートによる反発の強さでしょう。
硬いだけあって「プレートの反発」でいえば管理人のもってるスパイクでナンバーワンだと思う。たぶん反発だけでいえばガッチガチの代名詞である先代のプライムSPより強いんじゃない?
ただ、厚底のようなビヨ~~ンっていう反発ではなくて、バツンッ!!っていう反発なので特性が違う。反発にトゲがあるというか…
反発の特性はかなりシャープで、接地した瞬間にすぐ反発が返ってきちゃいます!
接地から反発までのラグが全くなく、強烈な反発が接地した瞬間にダイレクトに返ってきます。
しなりがほぼ感じられないガチうすカーボンの反発のシャープさはナイキのスーパーフライエリート2やJAフライを凌いで管理人歴代ナンバーワンです。体感としての反発のスイートスポットはサイバーブレードの半分くらいしかない。タメみたいなものがなくて踏み込んだ瞬間に全部の反発が一瞬で発揮される感じの反発感です。
別の言い方をするとめちゃくちゃ弾かれる!
反発はたしかに強いけど接地や踏み込みが少しでもズレると反発が逃げちゃって足が回るだけで体が進まない現象に陥るのでかなり難しいスパイクな印象。
非常に短い時間で大きなパワーを地面に伝える必要があるので、要求されるスプリントスキルは超上級クラスだと思いますね…
逆に、タイミングよく踏めればどんどんスピードが伸びていく。高いスプリント技術を持っていて関節をガチっと硬める筋力がある選手なら『めっちゃ進む~!!』ってなるはず。
硬いのが好き?じゃあたぶんこれも好き
フルレングスのカーボンプレートはめちゃくちゃ硬いです。扱いにくくはあるけど、こういうの好きな人は多いはず。
10秒台の選手であってもこれほどの硬さを必要とする選手はそれほど多くないだろうし、ほとんどの一般選手には扱い切れない硬さだと思います。
ただ、硬いプレートが好きな選手にとっては嬉しい硬さです!
フラットで支え台がなくてアホみたいに硬い
そんなスパイクが欲しいと思っていたので、管理人としてはこれはこれでベストな一足なんじゃないかと思っています。(速く走れるかどうかは別の問題)
管理人は幅跳び専門なのでプレートは硬ければ硬いほど良い派で、体重もあるのでガッチガチプレートが好き。幅用のプレートと同じ硬さのスプリントスパイクがあればなぁっと思っていたのですが、現状ではメタスプリントが理想形に一番近い気がしています。
ほら、硬いスパイクってどうしても傾斜が強くなっちゃうじゃないですか?幅スパってフラットで硬いんですよ。意外とそういうスプリントスパイクってないんです。
・踏んでも踏んでも進まない!?走り方迷子になる。
高いスプリント技術があれば強烈な反発を使えるのがメタスプリントですが、未熟なスプリンターが履くとどうやって走ればいいのかわからなくなると思います。
管理人も購入から2カ月、悩んでしまってなかなかレビューが書けずにいました。
そう、『走り方迷子』になってしまうん可能性があるんですよこのスパイクは!!
前述のように、間違いなく反発は強いし、走りやすいのでガンガン気持ちよく走れるんです。でも、タイムをみるとすっごく遅い!!ってことがあるんです…
あれ?っと思って違うスパイクに履きかえて同じように走るとで0.5秒くらい(100mでね)速くなったりして、完全に感覚がバグります。
反発は強いし、走ってて変な感触もないのにタイムが遅い。でも、ハマると速いんですよ…困っちゃうなぁ。
管理人的回答としては、
メタスプリントが難しいのは接地の自由度が高いがゆえに高い接地スキルが必要で、かつ反発が短いせいで重心移動が難しいから。
だと思います。接地が上手で短時間で重心移動出来ることを前提にしたスパイクで、速く走るためにはそういう動きをする必要があります。
メタスプリントは短い接地でタンタン走るほうがいい?
力感があるのにタイムが出ない。つまり反発がどっかに逃げちゃってる。これに関しては管理人2カ月考えました。
で、行き着いた結論は…
メタスプリントは接地をタンタンやって走ると反発が使える!!
これです。
管理人は幅が専門で二段平行9mm9本ピンを使い続けていたのもあってか、接地で押し込むクセが付いてたみたいなんです。接地の瞬間に体を乗せてグッと押しこんでいたのですが、たぶんこれがメタスプリントにはダメ。
メタスプリントはもっとタンタン走った方がタイムが出ますよ!笑
一歩一歩で推進するっていうのではなく、重心をスムーズに移動させる意識で走るとメタスプリントのいいところが使える気がします。踏んで乗るのではなく、踏む瞬間には乗り切ってる方がいい。
『正しい走り』を身に付けるための練習道具として優秀かも?
管理人が2カ月悩んで管理人なりに究明したポイントは…
メタスプリントは反発の方向と接地のタイミングが合わないと速く走れない!!
これです。
つまり、メタスプリントで速く走るには軸を作って体の真下に接地するいわゆる「乗り込み」のスキルが必要!
いや、それは他のスパイクだってそうだし、なんなら速く走るためのキホンのキでしょ!!ってことはわかってるんです。
でも、メタスプリントではこれが少しでもダメだと他のスパイクより顕著にタイムが落ちるんです!!
特に接地位置に関してはかなりシビアな印象で、乗り込みが遅れて接地が前寄りになると上向きの反発が発動しちゃうから減速が凄いです。スタートからゴールまで、100mと言う距離を最後まで乗り込み続けるスキルがないとタイムが出ないと思います。
走りやすさとは裏腹に、雑な走りを一切許容してくれない。
裏を返せば
このスパイクで気持ちよく走ってタイムが出せるようになればスプリント技術が習得できてると言えるのでは!?
正直、試合用にするにはベストなスパイクとは言い難いところはある。でも、これ練習用としてスプリントスキル向上を狙って冬季練習とかで使うのいいんじゃない?
1万出してウインドスプリントを買うなら2.5万出してメタスプリント買うのもアリだ!!
「真下接地」と「短い接地」がメタスプリントを扱うポイント?
メタスプリントのいいところを引き出すだめの走り方は2つあると思います。
①体の真下に接地する
②短い接地時間で切り返す
超ザックリいえば『フラット走法』なのですが、それだとそのまんま過ぎるのでもうちょい具体的に言うと…
真下接地でかかとが落とさず走れるならメタスプリントが合うはず!!
逆に、フォアについてしっかり乗り込むタイプの選手だと厚底の方が良いと思う。
接地の瞬間に正確なポジションをとる必要がある
まずは①接地位置に注目したポイントから。
メタスプリントで一番難しいポイントが多分これで、接地が真下じゃないと反発を推進力に使えない!!
接地するとすぐに反発が返っきてしまうので、体より前に接地しちゃうと上方向の反発が来てピョンピョンしちゃって全然進まない!!
これはフラットの特性なので「フラットスパイクってそういうもの」ではあるのですが、接地位置がシビアで前に着けば反発は後ろに寄っちゃうのでスピードが出ない。フォアのスパイクと比べると力を加えるのが難しくて、接地と乗り込みを時差なく素早く行う必要があります。
乗り込みが遅れれば反発は上向きに、接地を焦れば乗り込めない。
接地についてはかないりシビアで、たぶん、見た目では分からないくらいのすっごく一瞬の小さな違い、他のスパイクであればごまかせるような動きの誤差なんだけど、その数センチの接地の誤差がスピードに大きく影響しちゃうのがメタスプリント。
難しさがある一方で、接地の瞬間にスッと足を引いて上手く乗り事が出来ると蹴飛ばされたような推進力を感じる瞬間があります…
高い乗り込みスキルをもつ選手であればカーボンの推進力を受けられる一方、スキルが低い選手は全然ダメだと思います。
接地が長いと反発のいいところが使えない
次に②接地時間が短いことに注目したポイント。
接地位置にシビアなのはフラットの特性として、硬いプレートの特性である短い反発もメタスプリントの特徴だと思います。
ジェット2では柔らかくてしなりがあるため接地から乗り込みまで余裕があるのですが、メタスプリントは接地の瞬間には反発が返ってきてしまうので乗り込みのタイミングがシビアです。
プレートが硬くてもスーパーフライエリート2なんかだと踏んでから重心移動の局面があるので、グイっと踏み込めば反発を使うことができます。対してメタスプリントはフラットゆえに足裏を転がす局面がほぼなく、接地した瞬間に足をパンパン足を回していく必要があります。
この差が扱いやすさの差でもあるように思うのですが、とにかくメタスプリントは接地が長いとかかとが落ちてしまって反発感のないベタベタした走りになりがち。
管理人の体感的なポイントとしては、接地で足首をしっかり固めてかかとを落とさずに走ることさえできればスパイクからの反発を受けることができる印象です。
とにかく、非常に短い反発のスイートスポットを逃さないように体を固める必要がある。
【まとめ】
メタスプリントは走りやすいけど性能を引き出すには高いスキルが必要な『超上級者向け』のスパイクだった!!
今回はアシックスの『メタスプリント』をレビューしました。
ピンレスでフルレングスカーボンプレートを搭載したフラットスパイクというクセの塊みたいなスパイクですが、意外にも感触としては非常に履きやすく、ピンがないことそれ自体は全然気にならないんです。
ただ、反発が非常に扱いにくくて、タイムを出すには高いスプリントスキルを要求するスパイクでもあります。
まあ、それもそのはずでメーカーもトップ選手向けに開発したモデルですからね。ピンレスも0.04秒を削るための構造であって、12秒台の選手が部活で使おうっていうコンセプトのスパイクじゃないですから。
で、メタスプリントはどんな人におすすめ?っていうか…
それなりに体重・筋力があって高いスプリントスキルが高い選手におすすめ!!
女子選手や軽い選手だとプレートが硬すぎて反発が逃げちゃうし、乗り込みを習得していないと反発を推進力に使えないと思います。
タイムで言えば10秒台は必須!!だと思いますね。
いわゆる上級者向けの薄底スパイクってなんだかんだで筋力があれば扱える場合が多いのですが、メタスプリントは技術の要求度がズバ抜けて高い印象。
インクスやスーパーフライエリートであれば11秒台中盤でも十分扱えますが、メタスプリントはもっと全然難しい。11秒台の選手なら他のスパイクを使った方が記録は出やすいと思う。
必須なスキルを具体的に挙げるとすれば、中間疾走の踏み込みでかかとが落ちずに走れるスキルがないならこのスパイクを使う意味はあんまりないでしょう。
っとはいえ、「薄底スパイク」最後の商品群であり、つまりは、従来のスパイクの技術の粋を集めた超ハイスペックスパイクであるのがこの『メタスプリント』というスパイク。100年後に陸上ミュージアム(があれば)に間違いなく展示されていることでしょう!!
履きこなせるかどうかは別として、2010年代を経験した陸上選手であれば一度は手にとって履いてみたいスパイクですね!
っていうか、趣味のスプリンターなら絶対買うべき!陸上スパイクの奥深さが垣間見れて楽しいですよ。
ちなみに、定価は36,000円。2023年執筆時点では26,900円で買える。
カーボンスパイクをオーダーすれば5万は越えるのでこのスペックのスパイクとしては決して高額とは言えないものの、マックスフライが22,000円と考えればもうちょっと頑張ってもらいたいところではあるぞ。
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