<幅跳びのポイント>第6-3回:幅跳びのテクニック③(空中動作・着地編)反り跳び・はさみ跳びのやりかたを紹介
専門技術は幅跳びの難しさであり楽しさでもあります。なかでも幅跳びで一番魅力的なのは空中動作だといっても過言ではないでしょう。
空中でバタバタと足を動かす『はさみ跳び』
空中で大きく反る『反り跳び』
この2つの跳び方ができるようになれば幅跳び選手としてワンステップ上の段階に行けるでしょう。しかし、専門的な指導を受けていないと正しい空中動作を身に着けるのは難しいこと。
今回は
幅跳びのテクニック③(空中動作・着地編)
をテーマにご紹介します。
反り跳び、はさみ跳び、かがみ跳びの3つを実戦で使ってきた元7mジャンパーである管理人が空中動作と着地の動きについてご紹介。
今回の記事を読んでおけば空中動作を身に着けることができます!!
空中動作ができていないと着地でロスをして数センチ差でライバルに負けてしまうかも!?そんなことが起こらないように、空中動作を正しくとることで、跳躍力を最大限に生かした跳躍ができるようになります。
今回も前回に引き続き幅跳びシリーズ第6回で、第6回のシリーズではこれさえ押さえておけばそれっぽい跳躍ができるはず!っていうテクニックを局面ごとにまとめました。
第6-1回は助走編
第6-2回は踏み切り編
第6-3回は着地編
空中動作テクニック八百万
幅跳びでもっともキャッチ―な要素であろう空中動作。
空中動作がキマっている選手の跳躍はド派手でめちゃくちゃかっこいい!!
幅跳びを志す人がまずやることは空中動作のフォーム習得でしょう。空中動作の練習をはじめると踏み切りや助走の練習なんて地味過ぎてやってられなくなります。
空中動作を行う目的は大きく3つあります。
- 見た目がカッコいいから
- 前方回転力を打ち消すため
- みんなやってるから
記録に直接影響するのは②だけなのですが、いかにカッコよく跳ぶかとうのも幅跳びでは重要です。
空中動作は3種類
空中動作のフォームは3種類(細かく言えば4種類)あります。
- 基本となるかがみ跳び
- 最もポピュラーな反り跳び
- 発展型のはさみ跳び(シングルシザース)
これにはさみ跳びの2回バージョン(ダブルシザース)を含めた3種類+1が空中動作です。
一般的にはかがみ跳びが初心者向け、反り跳びが中級者向け、はさみ跳びが上級者向けと言われています。
しかし、男子の世界トップレベルの選手でも反り跳びの選手はいますし、女子選手だと世界レベルでも反り跳びが主流です。
また、日本記録保持者である橋岡選手も反り跳びだったりはさみ跳びだったりと大学でフォームが変わりましたし、フォームが変わったからと言って記録が良くなるわけでもありません。
重要なのはどのフォームで跳ぶかではなく、そのフォームの完成度をどれだけ高い次元にもっていけるかです。
空中動作は物理法則
区中道左は『慣性モーメント』や『起こし回転』という物理的な法則をクリアするためにとる動きです。
簡単に言えば、慣性モーメントというのは回転のしにくさを表したもので、大きな回転半径のものはゆっくりと回り、小さな回転半径のものは速く回るというもの。
野球でバットを短く持つとスイングスピードが上がってボールを打ちやすくなったり、フィギュアスケートで手を閉じるとスピンのスピードが上がったりするのもこの慣性モーメントによるもので、幅跳びでもこれを応用しています。
幅跳びでは滞空中に生じる前方へ回転しようとする力を空中動作で打ち消すことで着地の距離を稼いでいます。
つまり、滞空時間が短い選手は派手な空中動作を取る必要はなく、滞空時間の伸びる上級者ほど空中動作を大きくする必要がでてきます。
最初はかがみ跳びから始めよう
3種類のなか最も動きがシンプルなのがかがみ跳びです。
かがみ跳びでは空中で複雑な動きをする必要がないため、幅跳びの記録に最も大きな影響を与える『踏み切り動作』を邪魔することがありません。見た目は地味ですが、初心者から中級者と言われるレベルであればかがみ跳びで跳ぶことがレベルアップへの一番の近道だと言えます。
具体的に言えば、5m50まではかがみ跳びをメインにして強い踏切を意識した方が跳べます。
基本のフォーム、かがみ跳び
まずは一番基本となるフォームであるかがみ跳びのポイント・コツについてご紹介しましょう。
かがみ跳びは簡単なので初心者におすすめのフォームとして紹介されることも多い空中動作で、初心者というか素人がなにも考えずに跳ぶとほぼ確実にこの空中動作になります。小学生の大会ではほぼこれ。
ただ、初心者向けだからダメかというとそれは間違い。6m以下であれば下手に反り跳びをするよりもかがみ跳びのほうが有利な場面もあるでしょう。
また、かがみ跳びの動きは反り跳びやはさみ跳びで必要となる基本動作が詰まっています。かがみ跳びができなければ反り跳びもうまくできません。
まずはかがみ跳びをマスターし、それを応用することで反り跳びやはさみ跳びの練習をしましょう。
かがみ跳びとは?
まずは絵でご説明。
赤い足がリードレッグです。
かがみ跳びはリードレッグを1回も下げずに着地するフォームです。
踏み切ったらそのまま足を上げっぱなしでそのまま砂場に刺さるように着地するのが特徴です。踏み切り足は踏み切り板をしっかり押しきったあとに畳みながらおなかの前まで持ってきます。
絵で言うと④~⑥の局面で体育座りのようにかがんだ状態になるので、かがみ跳びと呼ばれています。
初心者向けの跳び方なのですが、なんと、8mレベルでも行けるんです!!
フルらに選手は陸上歴が浅い選手で、逆に新鮮。
下手な反り跳びやはさみ跳びよりもきれいなかがみ跳びのほうが良い記録が期待できます。
かがみ跳びのやりかた
絵の番号で説明します。
①しっかりと地面を押し切る
②リードレッグを保持する(保持は最後までキープ)
③踏み切り足を畳んで前に持ってくる
④頂点付近で両足が揃って両手がバンザイの体勢になる
⑤リードレッグが自然と下がってくるけど踏み切り足は意識しておなかに抱える
⑥だんだん前のめりになってくるので手を前に出す
⑦前傾がきつくなるので両足が伸びて来る
⑧腕を振り下げて両足を一気に前に投げ出して着地する
ちゃんとやろうと思うと意外と難しいと思います。
ポイントはリードレッグを高い位置でできるだけ長い間保持し続けること。
やってみるとわかると思いますが、空中で前方回転力がかかるとどうしても足が伸びて下がってきてしまいます。足が下がってしまうとただの素人跳びになってしまいます。ここで耐えてリードレッグをどれだけ抱え続けることができるかが、かがみ跳びがキマるかどうかの分かれ目です。
かがみ跳びがキマっているかどうかの見分け方は、着地でお尻が付けるかどうか。足から刺さってつんのめるような着地になってしまっているとすれば、それはまだかがみ跳びの完成度が低い証拠。
かがみ跳びのメリット・デメリット
かがみ跳びは前方回転力に逆らわずに跳ぶフォームです。
そのため、かがみ跳びには前方回転力が強いと着地でのロスが大きくなるという致命的な欠点があります。つまり、滞空時間が伸びると着地がうまくできなくなります。
6m50くらいの跳躍になると前方回転力に負けてしまい、おそらく30cmくらいロスすることもあるでしょう。一方で、前方回転力が弱いレベルである5m台であれば、かがみ跳びで十分です。
かがみ跳び最大のメリットは、踏み切りと着地動作に専念できるということでしょう。初心者にオススメという本意はここにあり、未熟な競技者であっても跳躍の基本動作をしっかりととることができます。
踏み切り板をしっかりと押し切り着地では足を前に投げ出すという、上級レベルになっても変わることのない幅跳びの基礎基本をみにつけるにはかがみ跳びが最適でしょう。
また、着地動作はどんな空中動作であろうとほぼ共通で、このかがみ跳びのやり方が基本となります。初心者のみならず中級者であってもかがみ跳びを試す価値はあります。
最もポピュラーな反り跳び(hang)
空中動作で最もポピュラーであろう反り跳び。幅跳び選手であればほぼ全員がこの反り跳びを経験しているはずです。日本語ではその見た目から『反り』と呼ばれますが、英語ではhang(ハング)と呼ばれており、『ぶら下がり』という意味です。
反りを意識すると踏み切りが中途半端になったり動きが小さくなりがちなので、ぶら下がりを意識した方がダイナミックなフォームが作れると思います。まあそのへんは感覚の話ですので人それぞれです。
反り跳びでは上下に手足を伸ばすことができるため、かがみ跳びに比べて慣性モーメントが大きくなり有利な姿勢で着地することができるようになります。
反り跳びとは?
これも絵でご紹介。
反り跳びはリードレッグと踏み切り足を空中で揃えるフォームです。跳び出した後に反るような形で両足が体の後ろに巻き上げられて揃い、両手を振り降ろす反動で両足が一気に前に出てきます。③~⑤で反りかえる選手が多いので日本では反り跳びと、④~⑥の局面でぶら下がっているような姿勢になるので英語ではHANGと呼ばれています。
世界レベルではスウェーデンのモントラーがわりとわかりやすい反り跳びです。
反り跳びのやりかた
これまた絵の番号で説明します。
①しっかりと地面を押し切る
②ブロックがおわったらリードレッグを降ろす
③両手は下から後ろに回してくる
④リードレッグが体の後ろ(下)で踏み切り足と揃う
⑤両手を頭上に上げてぶら下がりの姿勢を取る
⑥両手を体の軸と揃えて前に持ってくる
⑦上体を被せて反動で足を前に投げ出す
⑧両手を後ろに引いて着地動作に入る
考えると難しいですが、やってみると案外簡単です。
ポイントは上下方向にしっかりと伸びること。上下方向に大きく体を広げることで慣性モーメントを大きくするのが反り跳びの目的です。
空中動作の目的は慣性モーメントを大きくすることであって、反ることではありません。そのため、意識は『反る』ではなく『ぶら下がる』の方が的確だと思います。特に⑤~⑥にかけては腕を大きく高く伸ばすようにし、ここでは大きくゆったりとした動きをしましょう。これができると跳躍の後半でスーっと浮く感覚になります。実際には浮きませんが回転力が弱まって飛距離が伸びる感覚に陥ります。そしたら成功。
また、前半部分の②~④は跳躍の頂点を過ぎるまで時間をかけて行うといいでしょう。ここの動作が早くなってしまうとちょこまかと細かい小さなフォームになり、モーメントが小さくってしまいます。
感覚的には頂点を過ぎるまでは両足は体より前に出さないように耐えます。
足と言うよりも両手を意識して、腕はぶら下がり姿勢をしっかりと作って着地で一気に振り降ろすように意識するとうまくできると思います。
ってことで、反り跳びは全体にゆったりと動くことがポイントです。動作を急ぐとモーメントが小さくなります。
反り跳びのメリット・デメリット
反り跳び最大のメリットは簡単に慣性モーメントが稼げることでしょう。
はさみ跳びと比べると動きが簡単なため、ちょっと練習すれば誰にでも大きな動きができます。大きな動きはそれだけで慣性モーメントを大きくしてくれますので、着地動作に余裕が出来て正確な着地が可能になります。
強いて反り跳びのデメリットを挙げるとすれば、ランニングフォームからの移行がしずらいことでしょう。
10秒台前半のスピードをもつような世界トップクラスの選手になると、助走の動作を急にピタっと止めて反り跳びの動作に移行するのはそれはそれで難しいでしょう。しかし、一般的な選手にとって反り跳びのデメリットは特にないと思います。
世界レベルでも女子選手の多くは反り跳びですし大学レベルの選手でも多くが反り跳びですので、7mオーバーでも問題なく使えるフォームです。
最大級のカッコ良さ、はさみ跳び(hitch kick)
高校レベルになるとほとんどの選手が反り跳びで跳びます。足が速かろうが5m台だろうが7m台だろうが反り跳びです。そんななかではさみ跳びをしているとめちゃくちゃ目立ちます。
みんなと一緒じゃ嫌だ
特別な存在になりたい
俺とやつらを一緒にしないでくれ
そんなアナーキーなあなたにオススメなのがはさみ跳び(ヒッチキック)です。
はさみ跳びっていうのは英語で言うとヒッチキックと呼ばれる跳び方で、空中で足をバタバタさせるあれです。カール・ルイスの空中動作は空中散歩と称されるほどに華麗でカッコいいものでした。
跳躍にカッコよさを求めるのであればはさみ跳びにしましょう。
注目度はケタ違いで、中学生がいる大会だと6mくらいしか跳んでいなくてもちょっとした歓声が起こるほどのそれっぽい跳躍ができるようになります。
はさみ跳び(ヒッチキック)はシザースとも呼ばれています。これが英語圏で通じるのかわかりませんが、日本ではシザースジャンプという言い方もはさみ跳びと同義です。
ここではややこしいのでシザースって言うことにします。なぜならばシザースジャンプにはシングルシザースとダブルシザースがあるから。この違いは空中で何回バタバタやるかです。1回バタっとやるのがシングルシザース、2回バタバタっとやるのがダブルシザースです。両足がすれ違う『はさみ込み動作』の数でシングルとダブルに区分されています。
シングルシザースが簡単でカッコいい
空中で1回だけ足を入れ変えるのがシングルシザースです。
滞空時間を考えると7mくらいの記録を持つ選手でないと2回入れ変えるのは不可能ですので、はさみ跳びをしている一般選手の多くがこのシングルシザースというフォームで跳んでいます。
シングルシザースは反り跳びと似ていてちょっと足の動きが違うだけです。そのため、難易度自体は反り跳びとほとんど変わりません。反り跳びよりもカッコ良いのに簡単にできるというのもシングルシザースの魅力。
手っ取り早くカッコいいフォームを手に入れたいのであればシングルシザースがオススメだ!!
シングルシザースとは?
これまた絵で説明。
シングルシザースは左右の足を空中で1回入れ替えるフォームです。絵で見てもダイナミックさがわかりますね。
反り跳びとシングルシザースは似ています。そのため明確にどこが違うというのは言いずらく、どちらともつかない跳躍をする選手も非常に多い。
足を出すのが遅めなシザースや、脚を出すのが早めの反り跳びもありますので、どこからがシザースなのかは謎。イギリスのグレッグ・ラザフォードは反り跳びに近いですがシザースだと思いますし、ロシアのメンコフなんかはかがみ跳びっぽく見えるけど分類的にはたぶんシザースです。
模式的に絵で示すと④で足の位置がしっかりと入れ替わるのがシザースで、ここで足が並ぶのが反り跳びです。
②~④で空中を走っているようなフォームになるのがシングルシザースで、ちょっとした違いしかないのに見た目のインパクトは反り跳びよりもあります。
世界レベルでは、ローソンがわかりやすいと思う。
ちなみに不肖わたくしも最終的にはこの跳び方でした。
シングルシザースのやりかた
基本的には反り跳びの発展型と考えていいです。腕の動きは反り跳びと同じで、足の動きもちょっとタイミングが違うだけです。反り跳びでは空中でゆったり大きく動くイメージですが、シザースの場合はもっと明確に上下方向にパッ!パッ!とキレ良く動くイメージです。
①と②は反り跳びと同じ。
③リードレッグを下にビンッと伸ばす感じで反動で踏み切り足を前に持ってきてはさみ込み
④踏み切り足に乗る感じ
⑤腕を前に持ってきながらリードレッグを前に持ってくる
⑥リードレッグが踏み切り足に追いつく
⑦足を投げ出して出来るだけ遠くに着地する
初めてやる場合は大きな段差に登るようなイメージで足を回すと良でしょう。踏み切った後に1mくらいの高さの段差にリードレッグを置いて体を押し上げるような感覚。反り跳びは体の後ろ側に意識がいきますが、はさみ跳びでは体の前側で足を回すことを意識するといいかもしれません。
シングルシザースのメリット・デメリット
最大のメリットは他の跳び方に比べて前方回転力を打ち消す力が強いことでしょう。シザースをすれば着地直前まで上体は直立を保つことも難しくなく、着地動作を楽に取れるので跳躍に余裕が生まれます。
また、動きがランニング動作に近いのでスピード感ある跳躍ができるのも特徴でしょう。
空中で動きが止まる局面がないので空中での我慢が必要ありません。シザースのタイミング(足が入れ替わるところ)でグイっと謎の力に押されるような伸びのある跳躍ができます。もしかすると反り跳びよりも自然に何も考えずに出来るフォームなのかもしれません。
そして反り跳びよりもカッコ良いこともはずせません。
デメリットは、空中感覚がつかめていないとできないことでしょうか。そういう意味でも初心者向きのフォームではないでしょう。
空中でバタバタするのはただバタバタしているのではなくて必要なタイミングで必要な動きをしているのです。空中感覚がある程度養われてからでないとただ手足をバタバタさせるだけになってしまうかも。
また、5m台の跳躍では滞空時間が短すぎて足を回す時間が足りない
ダブルシザースで空中散歩
幅跳びヒエラルキーの頂点に君臨するのがダブルシザースです。
ダブルシザースのカッコ良さやインパクトはケタ違い。7mオーバーのジャンパー出ないとそもそもできないというこのフォームは車で言えばポルシェ・フェラーリ・ランボルギーニ。スープラやGTRやNSXがどんなに速かろうと、それとはまた格が違うのです。
幅跳び選手であれば誰もが一度は空中で何回足を回せるか試したことがあると思いますが、せいぜい2回が限度でしょう。そんな限界に近い動きを空中動作として取り入れることが出来る選手は上級レベルの限られた人だけ。
カール・ルイスをはじめ、黒人系の選手の多くがこのダブルシザースを取り入れているのですが、日本人選手でこの空中動作を行っている人はほとんどいません。日本選手権レベルでも数名でしょう。ただ、最近は橋岡選手がこのフォームで跳ぶことがあります。
ダブルシザースとは?
また絵です。
他のフォームに比べてだいぶ複雑ですね。
ダブルシザースは左右の足を空中で2回入れ替えるフォームです。英語で言えばヒッチキックですので、キックの数(空中を踏む数)を数えると④と⑥の2回です。空中で2歩歩くとも言えるでしょう。
その美しさたるやまさに空中散歩。優雅に空中を歩く様は跳躍の華やかさを何倍にも高めてくれます。空中を歩くそれだけの高さと滞空時間がないと成立しない最上級レベルの空中フォームです。
世界レベルでは多くのトップ選手がこのフォームで跳んでいますが、マニョンガの着地姿勢はきれいです。
マニョンガの着地前の足の投げ出しっぷりは惚れ惚れします…
ダブルシザースのやりかた
やりかたがわかったってそう簡単に出来るものではありません。
①~⑤まではシングルシザースと同じです
⑥踏み切り足でもう一度踏みこむ
⑦反動でリードレッグを高く持ち上げる
⑧踏み切り足を前に持ってくる
⑨リードレッグに乗り込んで着地姿勢をとる
つまり、シングルシザースで着地するであろうタイミングからもう一回足を回すのです。たいていの人は1回はさみ込んだだけで地面が近づいてきて着地せざるをえなくなるでしょう。たぶん7mジャンパーでないと滞空時間がたりません。
私も試しにやってみたことはありますが、空中動作に必死になってしまい着地の余裕がありませんでした。
ダブルシザースのメリット・デメリット
メリットはバツグンのカッコ良さ!!あとはランニングフォームのまま跳べることでしょう。
デメリットはそもそもできないこと。それに尽きます。ただ足を回すだけならなんとかなるかもしれませんが、それを跳躍としてまとめるのはほぼ無理でしょう。
なんだか妙に長くなったけどまだ着地できていませんのでもうちょっとつづきます…
着地動作テクニック八百万
空中動作の後はやっと着地です。
空中動作なんていうのは正直カッコ良さ以外はどうでもよくて、実際に良い記録を残すために必要なのは着地動作です。
簡単そうに見える着地動作ですが、選手それぞれのクセが如実に表れ、ちょっと練習したくらいじゃそのクセは治りません。着地って地面にぶつかるので本能的に防御姿勢をとるからなんでしょうね。
いろいろ考えると難しいのですが、これもちょっとしたテクニックで距離を稼ぐことができます。
腕を前に出す?下にさげる?
下にさげるって日本語おかしい?まあいいか。
着地動作の腕の出し方は2種類あります。マニアックなテクニックですので選手の多くがこんなこと気にせず跳んでいると思います。正直どっちだっていいっていうか、どっちであろうと記録には影響は無いと思います。
が、映える跳躍を目指すなら手は下げましょう。手は下げたほうがカッコいいです。
1つ目は腕を前に出して着地の瞬間に引く方法。
特にテクニックは必要ありませんが、正確な着地ができるので、失敗して脚を手前についちゃって数センチロスするといった『もったいない跳躍』が減ります。
2つ目は腕をバーンと下げて着地姿勢を取る方法。
これはあえて意識しないと撮れない姿勢で、写真で撮るとバツグンにカッコいい。腕を回す反動で足を大きく前に投げ出せるので距離を稼ぐことができますが、着地の瞬間が荒れがちです。
マニョンガ、サマーイ、フォーブス、ゲールといった選手は腕を前に出すタイプです。
ローソン、王、メンコフといった選手が腕をさげるタイプ。
エチェバリアは中間タイプというか、前に出していながら着地と同時に下にさげるフォームです。
ってな具合に世界のトップジャンパーの間でも腕の回し方はそれぞれです。着地の腕なんかどうだっていいってことでしょう。カッコいい跳躍がしたいなら手は下げた方が良いと思います。ちなみに三段跳びだとダブルアームだからかみんな下げて着地している気がします。
足を外側から回してくる着地はダサイ
個人的に最も嫌いな跳躍スタイルです。
女子選手によくみられる着地のしかたで、両足を開きながら前に持ってくるスタイル。嫌いです。こういう着地する人って正確悪そう。知らんけど。
無駄が多くてかっこよくないし、わざわざ足を一回開いて外側から持ってくる意味がよくわかりません。前後だけでいいでしょ。技術がなかったり筋力が足りない選手に多いんだと思います。
右か左のどっちかに流す
着地の時に足を付いた位置よりも右か左にお尻を付きましょう。
足の位置にお尻を突こうとすると尻もちをついて背中が接地してしまう可能性が非常に高い。数センチのロスしたせいで5m98の自己ベストで生涯を終えるのは悲しすぎます。
流れすぎて着地で体が跳んでいく場合には足を手前に着きすぎです。足は遠くに着きつつも、お尻はその位置からほぼ真横か2cmくらいだけ手前に滑り込ませるようにしましょう。
足もお尻もできるだけ遠くに着地する
着地の時に何を意識するかですが、これは跳躍のレベル次第で変わってきます。基本的には一番最初に着く部分が一番大切です。つまり、かかとをできるだけ遠くに着地させるように意識しましょう。
初心者のうちはお尻をつくことすら出来ないと思いますので、そういう人はお尻をどこに着くかっていうのも大切です。しかし、ある程度のレベルになってからは、かかとをどれだけ遠くに付けるかによって記録が変わってきます。
お尻が付くのは最初の着地地点より微妙に手前になってしまうでしょうが、それはかかとを極限まで遠くに着けているということでもあります。
着地した跡を見るとこんな感じになっているはず。
本当に一瞬の出来事なので考えている暇はありません。オートマチックで思い通りの動きが出来るように何度も練習して動きを体に叩き込みましょう。
足を出来るだけ遠くに着地させて、その後はお尻も出来るだけ遠くに滑り込ませるようにします。
もしお尻が足よりも奥に着地するとすれば、足をもっと遠くに着けたはず!
お尻が足より手前に着いてしまったとすれば、お尻をもっと遠くに着けたはず!
ってことで足もお尻も出来るだけ遠くに着地するようにしましょう。
さすがにこんなもんか?長かった。
第6回をテクニック編として3編に分けてご紹介しました。結局は踏み切りが一番大事なのですが、やってて楽しいのは空中動作です。
陸上なんてのは趣味なんだから、良い記録を残すのも大事ですが楽しいことも大事です。マンネリしたら空中動作を変更してみましょう。
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