【幅跳び】テントグルーの世陸ブダペスト決勝の跳躍から幅跳びを学ぼう!!
現代の男子幅跳びにおいてはテントグルーが第一人者といえます!!
世陸ブダペストでもテントグルーが8m52の記録で勝ち、東京五輪と併せて五輪・世陸を制覇しました。
幅跳びは世界的に低迷(というかパウエル、ルイス、ペドロソが強すぎた)していて、優勝記録はだいたい8m60以下です。
今回のテントグルーは優勝候補として前評判通りの記録を出してで勝つべくして勝ったという印象。
では、テントグルーの強さはどこにある?ってのが今回のお話。
ってことで今回は
世陸ブダペストのテントグルーから幅跳びを学ぼう!!
をテーマにご紹介。
時代のトップ選手の技術を見れば幅跳びのスキルアップにつながるはず!
特にテントグルーはいわゆる一発屋ではなく、安定して好記録を出す技術系のジャンパーなので学べるところも多いはず。よく見てマネしてみれば自分の跳躍をレベルアップするヒントがみつかるかもしれません。
管理人の視点ですので、違うだろってところもあるかもしれませんが、それは知らん。
ちなみにテントグルーは老け顔ですが1998年生まれ(25歳)です。
テントグルーは重心移動がすっごく上手
まず、6本目に8m52を跳んで優勝したテントグルー(ギリシャ)の跳躍から技術的に学べるところを見ましょう。
テントグルー選手の跳躍の特徴は
踏み切り直前でスムーズに重心を落として高く跳び出す跳躍
テントグルーの跳躍は派手さがないので「なんでこんなに跳べるんだろう?」って思う人も多いと思いますが…
テントグルーのすごさは踏み切り直前~踏み切りの技術の高さにある!
っと管理人は思っています。
スピードがあるわけでも、バネバネなわけでもないのに実績を残せるのは高い技術によって安定して好記録を残せるから。
一応、100mは2021年に追風1.9で10秒70という記録が残っています。さすがに10秒5台くらいでは走れると思いますが、助走をみても決してスピードがあるようにはみえません。
ってことで、「技術系」であろうテントグルーの跳躍から幅跳びの技術を学びましょう!
なんといっても踏み切りの重心移動がうまい
テントグルー選手の跳躍はなんといっても「重心移動」が上手です。
まずは上の動画を0.25倍速にして踏切3歩前から跳び出しまでを10回みてきて下さい。
10回みましたか?
踏み切り直前の右足で接地する時に、大きく重心を下げる動作が入っているのが分かると思います。
「踏み切り前に重心を下げる」ってのは幅跳びの基本で、これ自体はみんなやっていることなのですが、テントグルーはこの下げが大きく、それでいてスピードが下がらない。減速が少ないので見た目にはスィっと踏み切り板に吸い寄せられて加速するようにすらみえます。
この技術はかなり地味です!が、かなり高度な技術です!!
画像:(https://youtu.be/qzZR2haiTBc?si=HfApIViAiA95-IZE)15秒付近
上の状態は踏み切り1歩前で一番重心を下げた状態ですが…
トップスピードで走りながらこんなにしっかり重心を下げられるのはかなり凄いです!
是非、自分の跳躍を動画にとって1歩前を比べてみてください。スムーズに重心を下げるのは非常に難しくて、たいていは大きな減速が伴うか、リズムが崩れて踏み切りに入れなくなっちゃうはず。
トップ選手でもこれだけしっかり重心を落とせる選手はなかなかいません。
今回の出場選手で言えば言えば、エハマー(スイス)なんかはほとんどこの動作がなくてスピードだけで跳んでます(それはそれですごい)。王、モントレールあたりは重心を下げるのがうまいですが、テントグルーほどスムーズに踏み切りには入れません。
ちなみに、この局面(踏み切り1歩前)での減速は致命的で、踏み切り直前でスピードを維持することが記録に直結するっていう話は別記事の中でも書いてるのでそちらも参照ください↓
ってことで、テントグルーの跳躍から学ぶ跳躍技術1つ目は…
1歩前の重心を大きくかつスムーズに下げることができれば踏み切り準備動作は完璧!!
「よく駆け抜けるように…」なんていいますが、それはそれでいいんですが(エハマーとかそうだし)、テントグルーの跳躍をお手本にするならば「駆け抜ける」っていうよりも「うまく跳び出す」のが大事で、そのための体制づくりが大事だっていうのがわかると思います。
テントグルーは「捌き」がうまくて軸を作れるから踏み切りで潰れない
テントグルーは踏み切り1歩前で重心を落とすがの上手ですが、そこから踏み切りへの入りも非常にうまいんです。
また動画を見て下さい。今度はピノックも出てきます↓
具体的に言えば…
テントグルーは踏み切り足を低い位置でスーッと持ってきて膝を伸ばして踏み切り板に接地できるから「軸」ができて潰れない!!
(マニアックな技術ですが、踏み切り足っていうのは低い位置を運んでくるのがイイんですよ。)
いわゆる「捌き」っていう技術。
テントグルーは踏み切り足をスーっと低い位置を通して前に出してかかとから踏み切り板に入っています。
踏んだ瞬間にかかとから頭までが一直線になっているのが特徴(テントグルーはクセで頭は前に落ちてるので厳密には一直線にはなってないんですが…)で、これはかなり理想的な踏み切り姿勢だと思います。お手本としてこれ以上の選手はいないとでしょう!!
一本の軸ができることで、膝でのクッションのロスがなく助走スピードを跳躍力に効率よく変換してポーンと弾かれるような跳躍をすることができます。
え、どういうこと!?
ここからはもうちょい具体的にご紹介。
テントグルーは踏み切りの瞬間の「軸」がすごい!!
今度は踏み切り足の接地の瞬間に注目して、テントグルーとピノックの跳躍を比べるととってもよくわかります。
画像:(https://youtu.be/i7qWNeNQBkM?si=2mHcSSCD77Jza3Yc)44秒付近
画像:(https://youtu.be/i7qWNeNQBkM?si=2mHcSSCD77Jza3Yc)1分40秒付近
テントグルーとピノックの踏み切りの接地から乗り込みまでの瞬間です。どちらも同じ8m50を跳んだ跳躍なのですが、踏み切りの姿勢がかなり違うことがわかります。よくわからないって人は膝の曲がり具合を見てください。
もはやこうして比べちゃうとテントグルーの踏み切り技術が優れているのが一目瞭然ですね…
同じ飛距離なのでどっちが正解ってことはないんですが…
テントグルーは1本の軸を作ることで反発をロスなく跳躍に変換する姿勢が作れています!!
その結果、「潰れない跳躍」ができてスピードがなくても高さをだすことができ、安定的に好記録を出すことができています。
一方のピノックは踏み切りでは屈曲を使って全身のバネによってバイーンと跳んでいます。
動画で見ればわかりますが、これはスピードを生かした跳躍ってやつで、1歩前ではかがむような動きをしてそこから上体を反り上げるようにして踏み切りに入ります。全身を使うのでタイミングがバチっと合えば跳べるのですが、いわゆる1発を狙う跳躍ってやつですね。
ハマればデカイのですが、見た目ではわからないような一瞬のタイミングのズレで記録が大きく落ちるので難しい跳躍でもあります。
ってことで、テントグルーに学ぶ跳躍技術2つ目は…
踏み切り足をスーッと出して一直線の「軸」を作ればスピードがなくても跳べる!!
重心を下げただけじゃ潰れちゃいますが、テントグルーは膝を伸ばして踏み切りの瞬間に「軸」を作ることでスピードを跳躍力に変えています。イメージとしては棒高跳びのポールの突っ込みがわかりやすいと思います。
これができると効率的な跳躍ができるのでスピードがなくても高く跳び出すことができますよ!
テントグルーから「勝ちパターン」を学ぼう
世陸ブダペストの試合展開をみると、テントグルー選手の勝ちは1本目で濃厚になったように思えます。
ってわけで、テントグルーから勝ちパターンってやつ学びましょう。
幅跳びは1発が出ればそりゃあ勝てるのですが、もつれた場合には試合展開で勝負が決まることもあります。
1本目で勝負はほぼ決まった?優勝ライン8m50は共通認識
今回のテントグルーの試合運びから学べるのは…
安定した跳躍が出来る選手は1本目を決めるのが勝ちパターンだ!!です。
前述のように高い踏み切り技術があるテントグルー選手は8m50前後を安定して跳ぶ力があり、出場選手もみんなが8m50くらいが優勝ラインだと読んでいたはずで、それに勝つには一発を出すしかない。っという予想だったと思います。
そのなかでテントグルーは一発を狙うのではなく1本目でしっかりと8m50を跳びました。
決してハマった跳躍ではなかったように思いますが、安定して記録を残せるという持ち味が発揮された1本目で、これによって大方の予想通りの展開になったと言えます。
逆に言えば、みんなが恐れていた負けパターン(つまりテントグルーが勝つ展開)に1本目から持ち込んだ展開だったんです!!
今回の出場選手のPB,SBでは8m50以上を跳ばれてしまうともう1発を狙うしかなくなり、いわば他の選手は全員が1本目からテントグルー選手に追い込まれた状況になりました。
実際、経験値の低いランキングトップだったアルドリン、十種専門のエハマーは2本目もファールで脱落。ゲイル、マクリオドもファールや失敗が目立つ結果に。
予選から好調のピノックが2本目で1発跳んでトップに立ったのですが、それはそれでピノック選手の凄さと言えます。
ってことを鑑みて、試技の結果と平均記録を見てみましょう↓
選手 | 最高 | 全試技平均 | 上位3本平均 | 1本目 | 2本目 | 3本目 | 4本目 | 5本目 | 6本目 |
テントグルー | 8.52 | 8.43 | 8.47 | 8.50 | × | 8.39 | × | 8.30 | 8.52 |
ピノック | 8.50 | 8.25 | 8.43 | 8.40 | 8.50 | – | 8.03 | 7.96 | 8.38 |
ゲイル | 8.27 | 8.18 | 8.18 | – | 8.17 | × | × | 8.11 | 8.27 |
マクリオド | 8.27 | 8.09 | 8.09 | 7.90 | 8.27 | × | – | – | × |
王 | 8.05 | 7.98 | 7.98 | 8.05 | 8.02 | × | 7.88 | × | – |
モントレール | 8.00 | 7.93 | 7.93 | 8.00 | – | × | 7.92 | 7.87 | × |
ジュスカ | 7.98 | 7.83 | 7.83 | 7.98 | × | × | 7.65 | 7.85 | × |
ウィリアムズ | 7.94 | 7.69 | 7.69 | 7.94 | 7.53 | × | × | × | 7.60 |
エハマー | 7.87 | 7.87 | 7.87 | × | × | 7.87 | |||
パラダ | 7.86 | 7.83 | 7.83 | × | 7.79 | 7.86 | |||
アルドリン | 7.77 | 7.77 | 7.77 | × | × | 7.77 | |||
デンディー | 7.62 | 7.57 | 7.62 | 7.51 | 7.62 | – | |||
ファールは「×」、明らかな失敗とパスは「ー」にしています。 |
テントグルーは有効試技は全て8m30を超えていて高い記録を安定して出しているのが分かります。当然、平均記録も高い。
恐らく6本目までに8m50を超える跳躍ができる自信はあって、上手く合わせればイケるっていう試合をしたと思われます。大きく狙わなかった結果、6本目に上手く合って逆転に成功したんでしょう。エイト以降の3本をみると、下位の選手との実力の差を感じます。
対するピノックは2本目で気持ちが切れちゃったようにも見えます。
2本目でトップに立つ8m50を跳んだものの、3,4,5本目では合わずに全体の平均では劣っています。予選からPBを更新する程の好調で、2本目でトップに立っちゃったらそりゃあもうそれ以上モチベーションを保つのは難しいでしょう。ジャマイカ勢は一発の傾向があるので追い込まれたときに強い場合もあるんですが、今回は2本目でトップに立ったことで気持ちが切れちゃって6本目までもう1発を狙う元気が残っていなかったのが敗因か。結果論ではありますが。
もし、2本目が49だったらもしかしたら…
ってことで、今回の試合からみえる2つの勝ちパターンは
・安定した跳躍が出来るなら1本目でそれなりの記録を出してあとはしっかり合わせる!!
・1発を狙えば勝機があるなら、序盤だけでなく終盤でもう1発を狙う!!
これです。記録ではなく勝つ試合もたまには必要ですからね。
逆に言えば、負けパターンは一発がないのに1本目から置きにいくですね。そりゃ負けるますわ。
まとめ
今回は、世陸ブダペストのテントグルーの決勝試技から幅跳びの技術を学ぶ!をテーマにご紹介しました。
管理人の視点なので全然間違ってるかもしれませんが。
派手さがないのでイマイチわかりにくいかもしれませんが、ものすごい高度な技術を持っているのがテントグルーなんです。
時代の王者、テントグルーの跳躍は…
・準備動作での重心の落とし方が上手
・踏み切り足をスーッとだして踏み切りで軸を作るのが上手
この2つの技術によって、安定して好記録をマークすることができているように思います。
また、安定感を生かして1本目で他の選手をけん制する記録を残すことができたのは今回の勝因と言えます。
テントグルーは踏み切り一歩前で減速を最小限におさえながらも大きく重心を落とすことができて、踏み切り足を低い位置スーッと出してかかとから入ることで一本の軸ができた踏み切り姿勢が取れます。
その結果、助走を効率的に跳躍に変換することができるのでスピードが高くなくても高く跳び出すことができます。
これは技術の関与が大きい跳躍なので再現性の高く、今大会でも1本目から8m50をマークして「勝ちパターン」に持っていくことができました。
一方のピノックはタイミングが合えば大きいタイプの跳躍で、今大会でもうまくハマって優勝まであと一歩のところまで来ました。もし、2本目でトップに立っておらず、6本目でやる気ギンギンだったらまた違った結果になっていたかもしれません。
幅跳びって奥が深いですねー
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