100mのタイムを伸ばす陸上短距離の基本まとめ!!~知ってれば足が速くなる基礎知識~
陸上でそれなりの成績を残す選手のほとんどが幼少期からズバ抜けて足の速い人です。小学校の時から学年で一番足が速いとか、小中では一度も徒競争で負けたことがないとかそういう人の集まりが陸上部。さらにそのなかで勝つような人ってのはほぼ天才です。
管理人は『短距離は才能が95%』だと思っています。
『練習を頑張れば誰でも速く走れる』って言う人もいますが、それは『酒は毎日飲んでれば強くなる』っていうのと似てます。
酒強い人ってみんなそれ言うんですよ…!!
そんなわけで競技レベルになると才能も必要ってのは否定できないはず。
しかし、10秒台は無理でも市町村レベルの大会で入賞を狙うくらいならどうでしょうか?
っということで、今回は
知ってれば誰でも足が速くなる!短距離の基本
をテーマにご紹介。
たしかに10秒台で走れるのはごく限られた人だけです。しかし、大きな大会での優勝や10秒台は無理かもしれないけど、11秒台まで足を速くするってのは誰にでも可能だと思います!!
とはいえ、陸上部で頑張っていても11秒台に入れずに引退していく選手は数知れず…
そんな選手たちも『速く走るための基礎・基本』を知っていれば12秒の壁を破れていたかも!?
知ってれば速くなる!?短距離走の基礎・基本
10秒台は無理でもある程度のレベル、つまり「11秒台」までなら誰でも到達できるはず!
しかし、がむしゃらに走りまくっても足が速くなることはありません。人の3倍練習してもやり方が間違っていれば無駄です。
効率的に頑張るためには目標というか、目指すべき動きをイメージすることが大事です
ってことでここでは細かい技術ではなくて短距離の基本となる動きについてご紹介して行きます。
いろんなアプローチはあるけど、どんな場合でもベースとなるのがこの基本。知ってるだけで今より速く走れるようになるはず。
『反発』を使えば速く走れる!!
まず最初に…
速い人と遅い人の決定的な違いは『反発』を使って走れるかどうかです。
この『反発』を使うことが速く走るためには必須で、これが最初に意識すべき陸上の基礎・基本です。反発っていうのは作用反作用の「反作用」の部分で、地面から返ってくる力のこと。
速く走りたいのであれば、あなたもまずは『反発』を意識しましょう!!
盗塁の得意な野球選手や走力自慢のサッカー選手なら10秒台で走る人もいるでしょう。しかし、陸上選手なら10秒5くらいで走る大学生はたくさんいます。
身体能力で言えばおそらく野球やサッカーのほうが優れている場合も多いと思いますが、「速さ」でいえば陸上選手が勝ちます。で、この違いこそが「反発」を使えるかどうかです。
速く走りたいのであれば、陸上に特化した走り方を身に付ける必要があります。
陸上の「反発を使った走り」は「蹴らない走り」ともいえる
陸上選手が「反発」を使えるのはタータンを走るからで、力が返ってきやすいサーフェスで競技しているのが陸上の特徴。タータンで走るのに特化したフォームが陸上の理想的なフォームといえます。
陸上選手の走り方は『地面を蹴らない走り』で、地面を押すように走ることで足が流れず大きな反発を使うことができます。
一方、野球ややサッカーの場合は軟らかい土の上を走るので反発はほぼないため、走り方も反発を使わずに走れるフォームになります。
野球やサッカーの走り方はいわゆる『地面を蹴る走り』で、足首やひざ下を使い地面を引っ掻くように走ります。クイックな動きに対応しやすいのですが、大きな力は出しにくい。
陸上はこんな感じで前で足が回る↓
この投稿をInstagramで見る
陸上選手特有の接地したらすぐに足を前に持ってくる動きは『蹴らない走り』と言われ、感覚としては『押す』とか『踏む』動きです。
接地時間が短く「前捌きのフォーム」になるのが特徴で、反発を受けてトップスピードが伸びやすいだけでなく足の回転が落ちにくい動きになります。10秒台くらいのスピードになるとこの動きが必須。
野球・サッカーの場合は『蹴る走り』で、反発ではなく自分の筋力を使って走るフォーム。陸上的には「足が流れたフォーム」と言われ、よくあるダメなフォームの代表例としてよく出てきます。
これでも人によっては11秒台で走れると思いますが、トップスピードが維持できないのでやはり100mでタイムを出したいなら修正した方がいいと思います。どの走り方がいいってのはその競技の特性によって変わるので蹴るのが必ずしも悪いってことはないのですが、『陸上で速く走る』のであれば陸上の走り方を身に付けましょう。
反発を使う陸上のフォームはちょっと特殊で、経験者かどうかはみたらだいたいわかるはず。
プライオで『バネ』を意識すれば反発を使えるようになる!?
反発を使った走りを『バネがある』と表現することがあります。
すっごい抽象的でよくわからないかもしれませんが、バネがあるっていうのは反発を体がうまく受け止めて弾んでいる状態のことで、反発を使うと接地が短くなり弾んでいるようにみえるためこれを「バネ」と表現しています
つまり、バネ感のある走りができればそれが『反発を使った走り』ということ!!
で、どうやったら「バネ」を使えるかっていうと…
プライオメトリクスで腱を使う感覚がわかればバネを使えるようになる!!
(は?プライオメトリクスってなんだよ…!?)
って感じで良く分からないと思いますが、この動画を観て下さい。
これはステファン・ホルムっていう高跳び選手の動画で、跳躍の選手は反発を受け止めるスペシャリストです。
動画の50秒くらいからが分かりやすいと思いますが、かる~く跳んでるのに170cmくらいのハードルをポンポン越えています。これが『反発』を使った動きで、プライオメトリクスの動きを極めた陸上選手の動きです。
プライオメトリクスっていうのは伸ばした状態の足が接地の衝撃で引き伸ばされて、その反射で腱が収縮する動きのこと。
和訳すると…
プライオ→もっと
メトリクス→伸ばす
「引き伸ばされた腱が反射で収縮する力」を使うのがプライオメトリクスの動きで、『伸脚バネ』ともいわれます。
バネっていうくらいなので、これができれば反発を使えます。
動画のホルムは全然頑張ってないのに170cmをバンバン跳んでいるのをみてわかるように、プライオメトリクスの動きは無意識に反射で収縮するため頑張っていないように見えるのに大きな力が出るのが特徴です。
速い選手ほどリラックスして見えるのは、「筋力」で走っているのではなくてプライオメトリクスで「反発力」を使って走っているからなんですね。
ちなみにプライオメトリクスの反対は「アイソメトリクス」(長さが変わらない収縮)で、空気イスとか体幹トレーニングのプランクとかです。
「膝」や「足首」の関節はプライオで勝手に曲がって勝手に伸びる!
プライオは関節の曲げ伸ばしがほぼないことがポイントで、空気がパンパンに入ったボールのようにポンポン弾みます。
これが「蹴らない走り」ってことにもつながるのですが、膝や足首を動かして「蹴る」のはNG。末端の関節は固めたままの意識が正解です。
実際には衝撃を受けた瞬間に曲がるのですが、これは衝撃で勝手に曲がっているだけで一瞬の沈み込みで素早く元の角度に戻ります。
この動画の弾みっぷりがとっても参考になります↓
この投稿をInstagramで見る
膝や足首は曲がりはするもののクッションせずにすぐ跳ね返っているのがわかると思います。これがプライオメトリクスの動きで反射を使って動いている状態です。力感が少ないのにパワフルに弾んでいるのがわかると思います。
この「プライオの感覚」を覚える練習でよく取り入れられるのが「ボックスジャンプ」や「ハードルジャンプ」です。動画では何も置かずにジャンプしていますが、これは結構上級にならないと感覚をつかむのが難しいと思いますので最初はなにか道具を使うと良いでしょう。
100mのタイムは『最大速度』と『速度維持』が決め手!!
100mを速く走れるかどうかは2つの要素が大きなウエイトを占めています。
それが、最大速度と速度の維持です。
また、100mの速度変化を示した速度曲線というグラフがあります。
出典:https://www.researchgate.net/
100m走ではスタートしてだいたい50~60mくらいまでには最大疾走速度に達します。そしてその後どんどん失速していきゴールとなります。
この構造はスタートが速い選手であっても遅い選手であっても共通で、どんな選手でも50~60mくらいまで加速してそこからは減速していきます。
意外なことに、この速度の曲線は世界トップ選手でも一般選手でもほぼ同じ形となります。っていうか、小学生でも同じ形になるそうです。
前半型や後半型という言い方をしますが、トップスピードに達するまでの距離はどの選手もほぼ一緒で、最高速度と失速しやすいかどうかが足の速い人と遅い人の違いなのです。
高い速度を維持すれば記録も良くなる
当たり前のことなのですが、実際にやってみると非常に難しい。
最大速度40キロで走れる選手が2人いたとするとスタートから50mまではほぼ横並びになります。ここからゴールまでで37キロまで失速するか、38キロで維持出来るかで記録が大きく変わります。
短距離走の後半では『失速を最小限に抑える』ことが大切です。しかし、実際には失速をおさえることは不可能です。
記録の違いはトップスピードの違い
スピードの曲線が同じ形になるのであれば、記録の違いはトップスピードの違いに大きく起因することになります。50~60mでトップスピードに達した時、その速度が大きければ大きい程記録が良くなるということです。
考えなくても当たり前のことのように思えるかもしれませんが、これが短距離走の本質です。
練習をしていると細かいことを改良しようとしがちですが、『トップスピードを上げる』ことが速く走るために最も重要なことです。
ちなみに…
ボルトの世界記録(9.58)は最大速度が44.5キロ、フィニッシュ速度が43.4キロでした。
桐生選手が初めて9秒台(9.98)を出した時は最大速度が41.8キロ、フィニッシュ速度が40.4キロでした。
ボルトと桐生選手の走りには最大速度で約3キロの差があり、フィニッシュ速度の差もほぼそのまま3キロです。
このことからも、ピークの高さが違うもののスピード曲線は同じであることがわかります。
つまり、失速を押さえることは誰にでも無理で、速く走るためには最大速度を高める必要があります。
この『最大速度』を高めることができるかどうかが、タイムを伸ばせるかどうかのカギとなります。
レースは4局面に分けて考えよう!!
イチについてヨーイドンで思いっきりゴールまで走るだけでは徒競争です。それでも速い人は速いのですが、レースの流れという概念を取り入れることで速く走ることができるようになります。
レース展開を組み立てることで、今持っている力を最大限使った動きができるようになり、記録も良くなります。
短距離走では1つのレースを4局面に分けて考えるとより効率的な走りが可能となります。
また、4局面に分けることで練習効果のアップも期待できます。
①スタート
②加速
③中間疾走
④フィニッシュ
このように1レースは4つにわけることが出来ます。それぞれの局面で意識するポイントを買えることで、無駄のないスムーズな走りができるようになるはず。
スタートはとにかくフォームをコピーする
『1歩1歩を力強くグイグイ押す』という人もいれば、『素早く足を切り替えて行く』という人もいますので、どういう意識が正解と言うことはなかなか難しいところがあります。
しかし、基本としてはスターティングブロックをしっかり押し切る動きが正しいとされています。
練習方法は…
ビデオに撮ってこの姿勢がとれるまでひたすら反復
これ以外にありません。意識ではしっかり押し切っているつもりでも、ビデオで撮ってみると膝がグニャグニャだったり、腕が全く使えていなかったりします。スタートを習得するには理想のフォームをまるっとコピーできるまで繰り返すしかありません。
グーンと斜め上に向かって伸びきる感じで、ロケットのように打ち出されるのが理想ですが、地面に刺さるイメージの人もいます。
スタートについては四の五の言わずに、とにかく形としてこのフォームをとれるようになってから、その先の意識的な事を考えましょう。
加速は焦らずグイグイ地面を踏む
スタートをしっかり押し切ったら、次は最大速度までスピードを上げていく局面です。
ここでは1歩1歩の強さが非常に大切です。パワーではなく、トルクを使うイメージができるとスムーズに動けると思います。
着いた足でしっかりと地面を踏んで押していくようにすると、グイグイ踏んでグングン加速する感覚が得られると思います。ここでピッチを上げようとしたりして踏み込みが弱くなってしまうと、自分では頑張っているつもりなのにまったく加速してくれなくなります。
速い選手と走ると記録が悪くなることがありますが、それはここの局面で焦って押しが弱くなることが一因だと言えます。
焦らずに1歩1歩を確実に踏むようにすると、力感よりも強い加速が得られるはずです。
中間疾走はポンポン走れ!!
50~60m付近で最大疾走速度に達すると次は中間疾走の局面となります。
ここまでくるとどんなに頑張ってもスピードは上がりません。あとはひたすら減速していくだけです。
そのため、中間疾走ではできるだけ減速を抑えることが大切です。
後半で捲くられた選手が『力んでしまった』と言うことがありますが、これは中間疾走で動きがズレて減速してしまったことを意味します。
加速では『グイグイ』走るイメージですが、中間疾走では『ポンポン』走るイメージを持ちましょう。このイメージができると、短い接地で弾む走りが出来るようになり、失速しにくくなります。
フィニッシュは胸を突き出す
フィニッシュではタイムが計測される胸を突き出すようにしましょう。胸と肩の境界があいまいなので、肩を出す人もいます。
実際にこのフィニッシュ動作をしたところでほとんど記録に影響はしないのですが、気持ち的には速くなる気がします。
近年、アメリカでは倒れ込むフィニッシュが流行っていたりするようですが、コケると痛いしたぶんあんまり速くならないと思います。
スピード=ピッチ×ストライド
『最大スピードを高める』ためには何をすればいいのか?そもそもスピードとは何なのか?っていう話です。
短距離におけるスピードはピッチ×ストライドとして計算が出来ます。
毎秒4歩で1.5mのストライドであれば、1秒間で6m進みます。ってことは、100mを走るのに16.6秒かかります。ってことは時速22キロ。
こんな感じで、ピッチとストライドをかけるとスピードが出ます。
つまり、『最大スピードを高める』方法は2つあって、ストライドを大きくするかピッチを速くするかです。大股でいて回転が早ければスピードは高くなります。
いわゆるピッチ型と呼ばれる選手はストライドに対してピッチが早く、パワー型と呼ばれる選手はピッチが遅い割にストライドが長い選手なのですが、実際には歩幅がたった10cmくらい変わるだけでこの違いが生まれます。それほど人の感覚は鋭い。
滞空局面と支持局面
ピッチとストライドを決める要素は滞空時間です。
走る動作は支持と滞空を繰り返す動作です。同じスピードで移動しているとして、1歩の滞空時間が長ければストライドが長くピッチが遅くなります。滞空時間短ければストライドが短くピッチが速くなります。
滞空局面:
体が浮いているのでなにをやってもスピードには直接影響はありません。しかし、足を前に持ってきたり(リカバリー)、足を振り降ろす動作をする必要があります。
ここで動作が遅れてしまうと、接地の瞬間にブレーキがかかったり、支持局面で十分に力が伝えられなかったりします。
支持局面:
地面に足が接地している局面で、ここでの動作が直接的にスピードに繋がります。
ここでどれだけ大きな力を地面に伝えることが出来るかで疾走速度は決まります。接地した瞬間にはブレーキがかかりますが、地面を蹴り、振り足を振りだすことでスピードを上げることが出来ます。
ここでいかにブレーキをおさえるか、そして以下に強く蹴りだすかで足の速さを決まります。
短距離のファームの基本
陸上選手と素人のフォームの違いはパッと見で明らかです。
しかし、陸上部であってもちゃんとしたフォームで走れる人は非常に少ない。
陸上の練習は心肺機能や脚力を鍛えるためではなくてフォームを習得のためにあると言っても過言ではありません。
っていうか、フォームさえ完璧に決まっていれば筋力なんてそんなになくてもそこそこ速く走れます。
言われたままのメニューを頑張ってこなしているだけでは練習の意味はほとんどないと言えます。自ら考え、あるいはちゃんとしたコーチに教えてもらえば正しいフォームはおのずと身に着くはず。っていうか、頑張って練習するよりもちゃんとしたフォームで走った方が速く走れるようになります。
綺麗なフォームで走れる選手は正しい練習が出来ている選手だと言えます。
見た目の動きと意識の動きは別モノだ!!
フォームで大きな落とし穴となるのがこの問題。
実際の動きと意識している動きは一致していないのです。
これがわかっていないと速く走ることはできません。陸上のフォームを考える上ではこの概念が最も基礎的な考え方とも言えます。
速く走るにはモモが高く上がる!でもモモ上げはしていない!!
昔から速く走るためには『モモを高く上げろ!!』と言われます。最近はあまりきかなくなりましたが、一説によると当時の速く走る理論を翻訳する時にミスったことが原因だとか。
そのころ(っていうか今もですが)、世界のトップ選手はモモを高く上げるフォームが主流でした。これを分析すれば当然『モモは高く上げた方が速く走れる』ということになります。
で、『速く走るためにはモモを高く上げろ!!』となったのです。
当時のスポーツ科学ではこれで正解だったのですが、その後時代が進むにつれていろんなことがわかってきます。そのなかで、『モモは高く上がっているものの、選手はモモを高く上げるように意識はしていない』ということがわかりました。
モモが高く上がっているその瞬間には選手はモモを振り降ろすことを意識してるのです!!
難しい話ですが、モモ以外を意識して走っていたのに結果的にモモが高く上がっていたのです。
モモ上げに限らず、接地感覚や腕の振り方などの陸上で重要な動きの全てにこの事が当てはまります。
たとえば、フラット接地が良いのかフォア接地が良いのかという議論もこれが分かっていないと無駄です。フラットで着くことを意識してフラット接地をしているのであればそれはダメなフラット接地。結果的にフラットで着くフォームであればそれは良いフラット接地と言えるのです。
何かを意識すると別の所にも影響が出る
腕が振れていない選手が、腕を大きく振ることを意識してみたとしましょう。
これで走ってみると、大きな腕振りはできたのに足が流れてしまうなんていうことが起こります。
良くも悪くも、意識している部分と意識していない部分は繋がっているのです。なにか1ヶ所の動きを変えるとそれだけで全体の動きも変わってきます。あっちを治せばこっちがズレる。
そのせいでフォームの修正に終わりはないのですが、どこか修正したい動きがある場合に、別のポイントを意識するとうまく修正出来ることもあるのです。
『つま先を上げる』事を意識して走るだけで『足が流れなくなる』とか。
『軸感覚』がわかると劇的に足が速くなる!!
普通に生活していたら絶対に意識しない感覚ですが、『軸感覚』というものがあります。これは陸上に限らず、革新的な概念として多くのスポーツで研究されています。
陸上における軸感覚は、『前後の軸の傾き』と、『地面に力を伝える抽象的なイメージ』の2つで語られることが多くあります。
陸上で軸の概念が広まるきっかけとなったのはおそらく末續慎吾選手の走りで、当時は『ナンバ走り』と表現されたこの走りが、それまでの陸上における軸感覚を大きく変えました。
一軸と二軸で走り方が全然変わる
正面から(あるいは真後ろから)見た場合の軸感覚のイメージには2種類あります。それが一軸と二軸。ナンバ走りは二軸走法です。
ざっくりといえば、ひねり動作が入るのが一軸、体をひねらないのが二軸です。実際のところどちらが優れているのかはわかりませんが、二軸の方が良いと言う風潮はあります。
↓は正面から見た軸の作り方です。
一軸:
体の重心の真下に接地する軸感覚で、静止状態でも軸が作れます。走る動作の中では、1本のラインの上に接地して走る(足跡が一直線になる)と一軸の走りです。
このとき、肩のラインと腰のラインに捻り動作がはいるため、テニスのスイングのように大きな動きになりやすい。走るイメージは蹴って進む感覚。
二軸:
足をそのまま真下に接地するため、左右で接地するラインが違います。足跡が2本になっている場合は二軸です。
軸が重心からずれているため、その場で2軸をつくって片足立ちをすると軸足と逆の方に倒れます。
自分で体を動かさなくても軸を移すだけで重力によって重心移動ができるため、これを使えば速く走ることができるとされています。走るイメージは踏んで進む感覚。
正しい前傾は軸を前傾させた姿勢
スタート~加速の局面では体を前傾させる必要があります。
短距離で言うところの前傾というのは、軸の前傾のことを指します。速く走れない人の多くが、見た目の前傾だけで軸の前傾ができていません。
説明するのは長いので↓の図で理解して下さい。
横から見た場合の軸は、体の重心と接地場所を結んだ線のことです。
図のように、見た目では前傾していても軸が前傾していないと無意味です。逆に見た目は前傾していないように見えても軸が前傾していれば速く走れます。
この軸感覚を獲得するの方法は簡単です。
①その場で立って思いっきり前傾する(見た目の前傾。おそらく自然とつま先立ちになります)。
②つま先立ちだった接地位置ををくるぶしの真下に移す
これだけ。
つま先からかかと側に接地位置をずらすだけで、体が勝手に前に進むはずです。で、この接地位置をかかと側に移す感覚が『踏む』感覚です。
この軸の前傾を使えば、自分の力(筋力)意外にも重量を使うことができるようになり、足が速くなります。軸感覚は一度理解できれば体は忘れることはないと思います。
『足が流れる』とは『リカバリーが遅い』こと
悪いフォームの代表例が『足が流れたフォーム』です。また、陸上でそれなりに走れる人と素人との最大の違いもこの足が流れるかどうかです。
先生や先輩に足が流れてると言われたことのある人も多いと思いますが、足が流れるというのはどういうことでしょう?
『足が流れる』というのは、簡単に言えば『リカバリーが遅い』ということです。リカバリーが遅い動きの見た目が、足が流れているように見えるのです。
リカバリーが遅い原因は、リカバリーを早くしていないからではなくて接地感覚が間違っているからです。
『蹴る』のをやめてに『踏む』ようにすれば足は流れない
足を流さないようにためにはいくつか意識するポイントがありますが、一番簡単で効果的なのがイメージを変えること。
『蹴る』意識を『踏む』意識にすることです。
速く走ろうとすれば当然地面を強く蹴る必要があるのですが、蹴る事を意識して走ってしまうと接地の後半で力を入れるイメージになってしまいます。こうなると、支持局面から滞空局面に切り替わっているにもかかわらず蹴り足が後ろに行こうとしてしまい、リカバリーが遅れます。
そこで、蹴るのではなく踏むようにイメージを変えるのです。押すっていうのもこのイメージです。
こうすることで、接地してすぐに最も力をかけるタイミングがきて、支持局面後半には後ろに蹴る力が小さくなります。その結果、足を前にもってくるリカバリーが早くなり、足が流れなくなります。
足を流さないようにするために『足を流さない』ことを意識しても、たぶん問題は解決しません。後ろの足をどうにかする意識ではなく、支持脚でしっかり踏むことを意識すれば多分問題が解決できます。『足を流さないようにする方法』というのは、原因と結果が見た目とは違う場所にあるという代表的な例です。
トゥアップで地面が踏める!!
最初は地面を踏む感覚がわからないかもしれません。そんなときは、つま先を思いっきり上げて走ってみましょう。
専門的には、トゥアップと言うのですが、つま先を上げるだけです。
速く走るためのコツがあるとすれば、トゥアップは間違いなくその一つでしょう。
つま先を上げるだけでパワーポジションがとれて、地面をしっかり踏むことが出来るようになります。
その場で片足立ちしてやってみればわかるのですが、軸脚をトゥアップすると支持脚が真っ直ぐ伸びます。遊脚をトゥアップすると振り足がリーチアウト(下肢が前に振りだされること)しなくなります。
トゥアップするだけで、地面と足の接地面が大きくなってフラットに押せる感覚が出て来ると思います。
逆につま先が下がると接地時間が長くなったり足が流れたりします。
接地感覚を磨けば速く走れる!!
軸感覚と同じように、接地も感覚で語られることが多くあります。
陸上は数センチ、数ミリの違いや一瞬のタイミングの違いが記録に大きな違いを生むため、接地感覚を磨いて正確な動きを習得することは短距離で速く走るための必須条件です。
『接地感覚』というのは接地位置がわかる、接地のブレーキをコントロールする、踏み込みの感覚がわかるといったことをまとめて言った表現のこと。
見た目には同じ動きでも、イメージ・意識がまるっきり違うということもあります。そして見た目の動きが同じでもタイムは結構違ったりするから不思議。
軸の項目で説明したように、接地位置をつま先からかかとに数センチずらすだけで軸は大きく傾きます。そのため、接地の感覚が悪いと軸の感覚もずれるので遅くなります。
逆に言えば、接地の感覚を磨けば軸の感覚が分かるようになって足が速くなるということでもあります。
接地はフラットでもつま先でもどっちでもいい!!
いくところまでいけばフラットになってくると思いますが、12秒台ならどっちだって変わりません。
っていうか、そんな細かい事意識したって速く走れるようになるはずがありません。フラットで走ろうとするせいで大事な事を見落とす可能性の方が高いと思います。
まず、どんな接地であっても大切なのは
ブレーキを最小限にすることです。
また、接地位置は体の真下というのも共通です。
つま先でもフラットでもどちらでも好きな方で良いと思うのですが、フラット接地は超高度なテクニックで、下手にやると大きなブレーキ動作になりかねません。
まずはスムーズに走ることを目指しましょう!
接地感覚が育ってきたら、フラットやらフォアやらを意識してみると、自分の走りを変えていくことができるようになります。
末端は意識しない!!体の中心の力で走る!!
フラットでもフォアでもいいのですが、そもそも、接地を意識すること自体があまり良いことではありません。
速く走るためには体の中心に近い部分を意識して動くようにしましょう。
足で意識するのは股関節です。
股関節を振り降ろすと下肢が鞭のようにスイングするという意識。これだけで自然と正しい位置に接地するはずです。接地位置なんて意識してはいけません。
また、『丹田を意識する』という考え方もあります。
股関節よりももっと体の中心に近い丹田(へそ)から足が生えているイメージで体を動かすというもの。
丹田であっても股関節であっても『末端ではなく中心を意識する』という動き方で、この動きは陸上においては超重要。
動きが小さいと言われる人はこの意識で走ってみると変わるかもしれません。
地面を『押す』イメージで走ろう
上では踏めって言っていたのに今度は押せってどういうことだ…
地面を押すイメージは、踏むイメージよりも中心部分を使った動きのイメージで、短距離を速く走るために絶対に必要な感覚です。
地面を強く蹴るためには一見すると逆効果のようにも思えるかもしれませんが、押すイメージをもつと上半身の動きや接地位置、力の入れるポイントが良い方向に矯正され、結果的に地面を強く蹴ることができるようになります。
地面を押して腰の高いフォームを手に入れろ!!
地面を『押す』のはスネや足の裏ではなく、股関節や丹田といった体の中心に近い部分です。
膝が曲がってしまうと中心から地面に伝わる力が吸収されてしまうのですが、中心で押す意識をするだけで体が勝手に支持脚が伸ばして突っ張るように動いてくれます。
これによって、地面に伝わる力が増えて同時に反発も増えます。
また、支持脚が伸びているので、見た目には腰の高いフォームになります。
↓こんなイメージ↓
いわゆる腰の入ったフォームで、筋力に頼らない反発を生かした走りが出来るフォームです。
腰が高いフォームで走れるようになると使える反発が飛躍的に増えるため、高反発なスパイク恩恵を受けることが出来るようになります。
高反発なスパイクを履いてもイマイチ記録が伸びないという人は膝で反発力がクッションされてしまっているのかも?
接地時間は短い方が良い
地面を押すイメージのもう一つのメリットは、接地時間が短くなることです。
蹴るイメージでは接地中の動作が多いため、どうしても接地時間が長くなります。しかし、押すイメージだと接地した瞬間に離地するような意識になるため、接地時間が短縮できます。
接地時間が短いとプライオメトリクスの動きとなり、大きな力を出して強い反発を受けることができるようになります。
速く走るための足の動かし方
スピード=ピッチ×ストライドですので、大股で足の回転を早くすれば速く走れます。
が、それが難しい。頑張ってもそんなに早く動けるものではありません。足をクルクル回すための、速く走るための足の動かし方と言うものがあるのです。
切返しを素早くするとモモが上がる!!
世界のトップ選手がモモが高く上がったフォームで走っています。ただし、モモを高く上げることを意識しても正しくモモを上げることは出来ません。
これは意識の動きが実際の動きとズレるからなのですが、『モモが高く上がる走りをするためには切返しを素早くする』ように意識しましょう。モモを上げる意識ではダメです。
切返しって言うのはシザース動作のことで、前後の足を入れ替える動作のことです。考えると難しいのですが、以前ドリルのところで紹介したスキップの動画が非常にわかりやすいのでそれを紹介しましょう。
↓足の入れ替えでモモが自然と上がっている↓
ドリルがよくわからなければ、普通のスキップでもいいです。
普通に走るとあんまりモモが上がらないひとでも、速いスキップをすると自然とモモがあると思います。これは、スキップの方が切返しの動きが早いから。
走る時にもスキップの切返しと同じようなスピードで切返すことを意識して走ると、勢いでモモが上がってくれます。
ギャロップ走も切返しの習得に役立ちます。
モモが上がったフォームを習得できると、反発力を推進力に変えることができるようになり一気にスピードがあがります。
接地する瞬間には遊脚が体より前にきている意識
これが出来ていないとなかなか速く走ることはできません。速い人は自然とこれが出来ているとも言えます。
体の真下を支持脚が通るその瞬間には遊脚が支持脚を追い越しているイメージで走りましょう。この意識をもつだけで切返し動作がスピードアップしたり足が流れなくなります。
この意識はリカバリーを速くする動作につながります。これが出来ていないと『足が流れている』状態になります。
足を畳むと速く走れる
足が流れるっていうのはリカバリーが遅い事、切返しが遅い事だと上で書きました。リカバリーが遅れる原因に『足が畳めていない』というのがあります。
後ろ足を前に持ってくるときに膝関節が開いている状態では、慣性モーメントが大きくなるため足の回転は遅くなります。細かいことは省略しますが、足を畳んだ方がいい。
足を畳む意識はかかとをお尻に付ける意識でもいいですし、鞭のようにしなった下肢が股関節に巻き付くようなイメージでも良いと思います。4の形とか7の形とかって言うイメージもあります。
とにかく、見た目で膝関節が伸びたまんまになっているのはダメ。
足首関節は伸ばさない
トゥアップが基本です。地面を蹴るので実際には足首も伸展しますが、意識の上ではトゥアップ。足首関節は固めていた方が速く走れるというデータがあるそうです。
長いわっ!!!
長すぎる。これだけ書けばだいたい基礎的なことは網羅されているような気がします。
陸上部でもちゃんと勉強していないと良いフォームで走ることはできないし、良いフォームで走っている陸上部員はそう多くないと思います。結局は才能のある人の方が速いのでフォームが良くなっても短距離の世界で勝つことはできませんが、タイムは上がると思います。
幅跳びなら才能がなくても練習でなんとかなりますので足が遅いと思う人は幅跳びをオススメします↓
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません