「ゼロコントロールテスト」ってなに?テボゴのU20世界記録が非公認に!!

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先日、ボツワナのテゴボ選手が9秒96のU20世界新記録をマークしたというお話を紹介しました。


しかし、ここにきてこの記録が認めれないことに!?
っというのも、このときに『ゼロコントロールテスト』をやっていなかったそうで、記録が世界陸連の公認を受けられないみたいなんです。

ってことで今回は
テボゴの記録が幻に!?『ゼロコントロールテスト』ってなに?
についてご紹介。
普通に生きてたら関係ない話ですが、せっかくなのでこの機会に陸上の記録計測についてちょっと知っておきましょう。

 

 

『ゼロコントロールテスト』ってなに?

今回、テボゴ選手が走ったレースで「ゼロコントロールテスト」が行われていなかったようで、記録が公認されないみたいです。
せっかくすごい記録が出たのに…って感じですが、日本でも桐生選手が2013年にマークした10秒01(当時世界ジュニアタイ記録)が非公認になったことがあります。
桐生選手の事件の時は『風速計』が基準を満たしていなかったことが原因でした。
当時は旧式の「風見鶏」みたいな風速計がまだまだ使われていたのですが、世界陸連では超音波式の風速計の記録しか認めていなかったのです。そんな事件があったので日本陸連が「こりゃまずい」ってことで風速計をどんどん置き換えて、おかげで今では小さい大会でも超音波式の風速計が使われることが多くなりました。

で、今回のテボゴ選手の場合はゼロコントロールテストをやっていなかったために記録が公認されないとのこと。
ゼロコントロールテストなんてなじみのない言葉ですが、同じ条件のなかで公平に競われる陸上競技において、そもそも計測機器がちゃんとしていることが大前提なのです。

ゼロコントロールテストは「時計とピストルにズレがないこと」の確認のこと

陸上はピストルが鳴る(光る)と時計がスタートします。で、フィニッシュラインをトルソーが越えたところで時計が止まります。これがいわゆる写真判定ってやつですね。今では手動はほぼ絶滅しました。
当たり前ですが、陸上の記録はこの写真判定システムがちゃんと作動していることが前提で、大会の際には写真判定が正確かどうかのテストが必須になっています。
で、ゼロコントロールテストっていうのは…
ピストルの閃光と時計のスタートに0.001秒未満のズレしかないことを確認するテストのことです。

具体的にかつザックリ説明すると…
①フィニッシュラインにピストルを置く
②写真判定装置を手動でスタート
③ピストル発射して閃光を撮影。時計もスタート
④写真で光を判定して0.001秒未満かどうかを確認する
これがゼロコントロールテストです。
意味分かる?
簡単に言うと、ピストルの光が0.001秒の写真よりズレて写っていたらその装置はズレちゃってるってこと。

写真判定は連続写真なので、光った瞬間に時計がスタートすれば光は0から0.001の間にしか写らないはず。
光の写真が0.001秒未満のところで写っていれば装置は正確。
もし、0.001秒よりズレて光が写真に写っているとしたら、時計とピストルがずれていることになる。
ズレた時計で計測した記録は当然ズレているので、これは公認されません。

公認記録を申請する際には添付書類としてこのテストの結果やら風速計の仕様やらといった情報を付ける必要があって、今回のテボゴ選手の場合は大会の運営がこれをミスったっぽいです。
ミスだったとしても校正していない計測機器は正確じゃない可能性があるので、記録も公認されないってわけですね…
風速計も写真判定も、選手の知らないところで運営の方々がうまいこと管理してくれているからこその公認記録なんですね。そして、SEIKOやらNISHIといったメーカーがちゃんとした機材を作っているからこそ成り立つのが陸上競技なんですね。

 

陸上の公平性はけっこうザルだった!?

陸上において「公平性」っていうのはけっこうキモなので世界陸連もこの10年くらいでけっこう力を入れていて、怪しい記録って減ってきた感じがします。
日本みたいな国はまあいいとしても、ちょっと前までは五輪や世陸のエントリー期限ギリギリになるとアフリカの大会で好記録が出まくるみたいなこともありました。最近の五輪や世陸で「標準記録」ではなく、ランキング(大会のランクによってポイントが変わる)制を導入しているのもこの一環。
ランキングだと本当にややこしくて、エントリー終了まで誰が出られるのかわからなかったり、良い記録を出しても小さい大会だとポイントが低かったりという問題はあります。
しかし、それよりも怪しい記録をどうにかしたいっていうのが陸連なんでしょう。たしかに、アフリカの小さい大会の機材が正確とは思えませんからね…






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