【日本選手権2019】大会の出来事をまとめてご紹介
大会前からいつになく注目を集めていた2019年の日本選手権。
これは歴史的な大会になるとは思っていましたが、終わってみてもなかなか良い大会だったように思います。
陸上ファンであれば今大会には注目していたかと思いますが、今年は世界陸上イヤー、そして東京五輪前年ということもあって、普段は陸上に興味が薄い人も結構観ていたのではないかと思います。
そんな今大会で起こった出来事をまとめてご紹介します。
今大会の出来事まとめ
いろいろあった今大会、出来事をまとめました。
サニブラウン選手が100mと200m2冠
まずはなんといっても男子100mと200mです。
男子100mの歴代10傑のうちの、今大会の決勝には6人が出場しているという、過去に例を見ない超ハイレベルな大会となりました。特に桐生vsサニブラウンの9秒台対決は陸上なんてぜんぜんわからないといいう人でも知っているほどの注目を集めました。
最注目の100mは波乱なし
まず大会2日目の夜に行われた男子100m決勝。
サニブラウン選手と桐生選手が隣同士のレーンで走りました。
予選・準決勝とスタートが決まらなかったサニブラウン選手は、決勝ではまずまずのスタートを切り、40mあたりで抜けだすとそのまま後続を引き離して10秒02でゴール。
終わってみれば順当といえる順位とタイムのレースでした。
終了後のサニブラウン選手のインタビューでは『何とも言えないタイム』という発言もありましたが、このタイムは日本歴代5位に当たり、朝原さんのベスト記録に並ぶタイムで日本選手権の大会記録となります。
2017年以来200mも制して2冠
サニブラウン選手といえば2017年の日本選手権での100,200m2冠という鮮烈デビューが記憶に新しいのですが、2年後の今年も2冠となりました(2018年は欠場)。
ただ、2年前は『すごい奴が出てきた』感じでしたが、今回は王者の風格漂うレースで、その成長の著しさを見せつけました。
男子ショートスプリントはサニブラウン選手の年でした。
100m3位、200m2位に入った小池選手も株を大きく上げた大会になりました。
男子110mHで同着日本タイ記録決着!!
これも歴史的なレースでした。
陸上ファンにはかなり注目されていましたが、一般的には全然知られていない110mHのレース。
状況を簡単に整理すると
- 日本記録は13秒36で金井、高山の2人同タイムで保持している
- 学生の泉谷が5月に追参で日本記録を上回る13秒26で走っている
- 金井、高山はバリバリ現役で今大会にも出場
- ドーハの標準は13秒46のため優勝すれば代表内定が濃厚
こんな感じ。
つまり、100mと同じように歴代最強クラスの選手が複数出場したのが今大会の110mHでした。
結果からすると
高山選手と泉谷選手が雨のなか日本タイ記録の13秒36で同タイム着差あり
という劇的なレースとなりました。
奇跡の13秒36日本記録保持者が3人
こんなことってあります?
もともと高山選手と金井選手が13秒36をマークして2人の日本記録保持者が同時に存在するっていうだけでもすごいのに、今度は日本選手権決勝という舞台でまた13秒36の同タイム決着。泉谷選手まで日本記録保持者に加わることになりました。
同時に3人が同タイムのナショナルレコードを保持しているって、世界的にこんな奇跡的なことってあるんでしょうか?
金井選手はリアクションタイムが0.001秒速くて失格
陸上競技のフライングは、『号砲が鳴る前にスタートしたら失格』ではありません。
『号砲が鳴ってから0.100秒以内に反応したら失格』なんです。リアクションタイムをスタブロのセンサーで測っています。
賛否あるルールですが、ルールはルールなのでここはどうでもいいとして、今大会準決勝でこのルールの犠牲になったのが日本記録保持者で前回覇者の金井選手。
準決勝1組目5レーンに登場した金井選手でしたが、3レーンの選手がフライングをすると、同時に金井選手にも失格のフラッグが提示されました。
本人も納得いかない様子でモニターを確認して講義するも、リアクションタイムが0.999秒だったということで、残念ながら失格。
注目の110mHでしたが、明暗分かれるレースになりました。
3人の日本記録保持者のうち、高山選手は優勝で世陸代表に内定。
残りの泉谷選手と高山選手は今回では内定しませんでしたが、世界ランキング上位に入ればまだ代表権獲得のチャンスはあります。
女子やり投げで大会記録オーバー連発
世陸ドーハの標準が61m50、東京五輪の標準が64m00である女子やり投げ。
その両方を上回る記録を持つ(五輪は期間外)現日本記録保持者の北口選手が登場しました。
全体に雨の降り続く難しいコンディションとなった今大会でしたが、女子やり投げの時間はギリギリ天候が持ちました。それもあり、好記録が連発。
従来の大会記録は62m36。
北口選手は1投目でいきなり62m68を投げて大会記録を更新すると、3投目には63m68とさらに記録を伸ばして優勝。2位に入った森選手も62m88を6投目に投げて従来の大会記録を更新。
3投が大会記録を上回ったハイレベルな試合になりました。
男子800mでクレイアーロンが優勝
大会6連覇中の現日本記録保持者である川元選手も出場した800mで、高校生のクレイアーロン選手が優勝しました。
そのタイムはなんと1分46秒59。
この記録、U18日本記録であり高校新記録。それだけでなく川元選手の持っていたU20日本記録をも更新する超大記録です。
800mはドーハ標準が1分45秒80と、世界との差がある種目ではあるものの、クレイアーロン選手には東京五輪、さらにはパリ五輪での活躍を期待。
女子100mで高校生が優勝
100m200mの日本記録保持者である福島選手が欠場した女子短距離。100mでは昨年覇者の瀬古選手と2017年覇者の市川選手が欠場するなど、本命不在のレースとなった。
そんなレースで良い走りをしたのが恵庭北高校の御家瀬選手。
御家瀬選手は高校歴代2位タイの11秒54のPBを持つ選手で、2018年のインターハイチャンピオン。次世代のエースが29年ぶりとなる高校生優勝を決めた。
どしゃ降りの雨
6月末の九州でやったらそりゃあ雨降りますよ。
大会期間中は終始雨が降ったりやんだりの天候で、一時的にはどしゃ降りどなる場面もありました。
女子棒高跳びでは運悪く多くの選手が跳躍する時間帯にどしゃ降りとなったため、跳躍にならない選手も多くいました。
女子100mHでもレース仕切り直し時に転倒する選手がいたり、投擲種目ではランニングシューズで試技をする選手がいたりと、雨によって本意でない記録となった選手も多い大会でした。
雨でも好記録
陸上は基本的には雨はマイナス要因ですが、以外にも好記録が出た印象。
男子100mでは10秒02。日本歴代5位の大会新記録です。
男子110mHの13秒36は2人が同時に日本タイ記録をマーク。
男子1500mでは戸田選手が3:39.44で優勝。上位5名がPBでした。
こんな感じで、雨とはいえ実力がある選手はしっかり記録を残して来るのが面白いところ。
NHKが放送を放棄
世陸はTBS、日本世選手権はNHK、ダイヤモンドリーグは日テレと、利権が混在する陸上の放送。今回はNHKの放送でしたが、これが大問題。
TBSの世界リレー中継で日本が優勝した2×2×800mリレーを競技途中でブッタ切った放送事故が記憶に新しいのですが、今大会でもNHKがやってくれました。
まず大会3日目。
G20閉幕と重なった6/29日には、トランプ大統領の会見によって放送開始が45分の遅れ。陸連のyoutubeによる垂れ流しライブ中継も利権によってカットされて日本選手権を観るすべがなくなりました。
放送が始まると悪びれることもなく、予定通りの放送課のような司会進行。
続く大会4日目。
今度はトランプ大統領が北朝鮮にで会談するっていうニュースでまたも放送開始が延長。15分遅れで放送が始まるも、大会途中でまた臨時ニュースに切り替わる始末。
陸連のyoutube担当者は前日の反省からかライブ中継を再開するも、そういうことじゃねえ。
とにかく放送がクソでした。
サブちゃんねるで放送するなり、教育テレビでやってる誰も観てないクソつまらない駄番組を日本選手権に切り替えるなりしてもらいたいものですが、これが日本における陸上の扱いです。陸上の放送に命を燃やす人なんていないんでしょう。
陸連の広報は世陸と五輪を前に辞任してもらってまともなコンサルをつけてもらわないと、盛り上がりつつ陸上人気を陸連自らが押しつぶすことになります。
テレビ放送に頼らないで、ネット番組にして全種目ちゃんと中継するような方法に切り替えた方がファンにとっては良いと思う。
この陸上競技をバカにしたような状況は少なくとも東京五輪までは続くと思います。
男子100mと200m以外はその他の競技で、ついでに放送していただけ。
2日目は満員、それ以外はスカスカ
大会2日目、男子100m決勝日の夜の時間にはスタンドはかなり埋まっていたようです。
会場がアクセル最悪の場所にあったり、大会期間中は雨だったことも考えるとこの日はそれなりに成功だったと思います。
が、そもそも会場が3万人しか入らない地方の小さい競技場で、スタンドの一部を封鎖している事を考えると全然ダメ。
巨人戦って平日だろうと毎戦4.5万人前後の入場者数です。
陸上は日本選手権で2.5万人入ったとかで大喜びしているようなマイナー競技なのか?
東京五輪を控えて100mがこれだけ注目を集めるこの時期にこれだけしか観客がいないような競技がこの先盛り上がるはずありません。
国立が使えないとはいえ、地方開催にしているのもおかしな話。陸連はこれだけのコンテンツを潰しているということを反省してもらいたいもの。
大会を盛り上げようとしているのか、会場では音楽が鳴っていたようですがそんなこととで盛り上がりを演出出来ていると考えるのは大間違い。
2日目のあの瞬間だけを切り取って成功とか大盛況みたいに考えているとしたらバカ。
こんな感じの日本選手権でした。
結局陸上は男子100mです。それがハッキリとわかった大会だったと思います。
ディスカッション
コメント一覧
考察が深いです。
確かに開催場所や時期の兼ね合いもありますけど、さすがにあの天候では……
男子やり投げも、70メートルはおろか60メートルにも届かない投てきが多く見られましたし、決勝記録も雨が止んだTOP8が出揃ってからでしたよね。
他種目でも不本意な記録に終わった選手が多かったのかなと思うと、不憫でなりません。
開催時期も梅雨のど真ん中というのが違和感満載ですし
テレビ放映も、GP、日本選手権、国体、ジュニア・ユースくらいで、一年を通じてメディアの露出回数が少ないことも世間の注目を集める機会が少ないのが残念です。
コメントありがとうございます。
来年は大阪だそうなので本当の集客力がわかりますね。
日本選手権は記録よりも順位、というのであれば雨でもおもしろいんですが、
今回のように世陸や五輪がからむとやっぱり晴れているほうが良いですよね。
陸上人気は潜在的にはあると思うので、陸連の手腕次第です!