【陸上】日本グランプリシリーズっていうチャンピオンシップがあるんだよ
部活が盛んで『やるスポーツ』としてはそれなりの人口がいるのに『観るスポーツ』としては不人気な陸上競技。
何がダメって、大会にエンタメ性がないのがダメなんですが、野球・サッカーと違って陸上はプロ選手じゃないからしょうがない面もあります。
そんな陸上競技ですが、シーズンチャンピオンを決める『日本グランプリシリーズ』っていうのがあるんです。
ってことで今回は
日本グランプリシリーズってなに?
というテーマでご紹介。
年間チャンピオンを決める日本グランプリシリーズ
おそらく誰も知らないと思いますが、2018年から日本グランプリシリーズという年間チャンピオン決定シリーズが行われています。正式には『サトウ食品日本グランプリシリーズ』という名称。以下GPシリーズと呼びます。
2021年は15大会が対象の大会で、この大会での記録をポイントに換算して年間の獲得ポイントを競います。
15大会で男女それぞれ19種目で開催
対象となる大会は15大会(GPシリーズ指定11,GPシリーズポイント対象4の計15)で、男女各19種目が開催対象となります。
15大会とはいえ、GPシリーズポイント対象大会は鹿児島県記録会(混成)と日本選手権(一般種目、混成、10000m)が含まれるので11+日本選手権の実質12大会です。
指定の大会がややこしい時点で発展の余地がないようには思えますが、いままで日本選手権しかなかったと考えれば陸上界には大きな進歩です。
開催種目は19で、普通の陸上大会で行われる種目が対象と考えて間違いありません。やっぱり競歩はありません。
大会は以下のスケジュール↓
大会名 | 開催日 |
GPシリーズ指定大会(11大会) | |
4月10日(土) | 【熊本大会】第29回金栗記念選抜陸上中長距離大会2021 |
4月11日(日) | 【出雲大会】吉岡隆徳記念第75回出雲陸上競技大会 |
4月25日(日) | 【神戸大会】第69回兵庫リレ-カ-ニバル |
4月29日(木・祝) | 【広島大会】第55回織田幹雄記念国際陸上競技大会 |
5月3日(月・祝) | 【静岡大会】第36回静岡国際陸上競技大会 |
5月4日(火・祝) | 【延岡大会】第32回ゴールデンゲームズinのべおか |
5月5日(水・祝) | 【水戸大会】2021水戸招待陸上 |
5月5日(水・祝) | 【大阪大会】第8回木南道孝記念陸上競技大会 |
6月6日(日) | 【新潟大会】Denka Athletics Challenge Cup 2021 |
6月6日(日) | 【鳥取大会】布勢スプリント2021 |
10月17日(日) | 【山口大会】第18回田島直人記念陸上競技大会 |
GPシリーズポイント対象大会(4大会) | |
5月2(日)3日(月・祝) | 第3回鹿児島県陸上競技記録会 ※混成競技 |
5月3日(月・祝) | 第105回日本陸上競技選手権大会・10000m |
6月12日(土) 13日(日) |
第105回日本陸上競技選手権大会・混成競技 |
6月24日(木) 〜27日(日) |
第105回日本陸上競技選手権大会 |
もともとトップ選手が出場していた大きな大会が指定大会になっている
GPシリーズ自体は2018年から開催されているのですが、GPシリーズのために新しく大会をつくったわけではなく、既存の大会にポイント制を導入することでGPシリーズが成り立っています。なぜか鹿児島の記録会が混成のポイント対象になっていますが。
静岡国際、水戸招待などもともとトップ選手が多く出場していた歴史ある大会が指定大会になっていますので、陸上ファンにはおなじみの大会で良い記録を出すとおのずとポイントが稼げるというしくみ。
ポイントは記録ポイントと特別ポイントを合わせたパフォーマンスポイントで競われる
陸上は記録が良い方が勝ちなのですが、風や大会の雰囲気などによって条件が一定ではありません。そのため、GPシリーズのポイントは記録をポイントに換算して計算されます。
これが『記録ポイント』。
例えば100mの記録ポイントは…
10秒00(風なし)だと1206ポイント
10秒00(-0.5)だと1209ポイント
10秒05(-2.0)だと1201ポイント
風速±0.1m/sにつき±0.6ポイントで、0~2.0m/sまでは加減点がありません。
この記録ポイントは世界陸連の定めるScoring Tablesっていうやつをもとにして算出されます。
世界的にも記録はポイントに換算するようになっていて、世界大会の参加標準も記録からポイントに移行しています。
また、日本記録を出したりすると『特別ポイント』というのが加算されます。
日本記録(60ポイント)、日本タイ記録(40ポイント)、ワールドスタンダード記録(30ポイント)の3つがあり、ワールドスタンダードきろくっていうのは東京五輪の参加標準記録です。
同時に達成した場合は加算されますので、日本記録でワールドスタンダード記録を上回っていたら90ポイントもらえます。
そしてシリーズはこの記録ポイントと特別ポイントの合計した『パフォーマンスポイント』で争われます。
ちなみに…
特別ポイントをとると一気に60pなわけですが、100mで10秒00が1206ポイントで9秒83だと1266ポイント。記録ポイントで60pを稼ぐのには世界トップの記録が必要なのです。そのため、日本記録を出した選手が3大会に出場していれば総合優勝確実です。世界トップレベルの記録を出していても日本記録を出していなければ、日本記録を出した選手にポイントで勝つのは難しい。特別ポイントの価値がおかしいのでこのシステムは欠陥でしょう。
ややこしいだけなので特別ポイントいらなくない?
シリーズポイントは出場した3大会の合計ポイント
ポイントは合計するだけではなく、ポイントの高い3大会の合計がシリーズポイントになります。
4大会出たとしたら1大会のポイントは換算されず、3大会分のポイントだけがシリーズポイントになります。
また、ややこしいことに混成と10000mは2大会の合計を1.5倍してシリーズポイントにします。
わかりやすく例を示すと…
100mで3大会でそれぞれ1000p獲得していると合計3000p
混成で2大会でそれぞれ1000p獲得していると合計2000pに1.5倍して3000p
つまり、ややこしいけど獲得したポイントの合計は一緒になるように調整されています。
ややこしくて面倒くさいのでポイント争いで盛り上がることはないと言い切れます。
シリーズチャンピオンと種目別チャンピオンがある
ややこしいことに、シリーズチャンピオンは全種目のなかのチャンピオンのことです。種目別のチャンピオンはまた別にあります。
19種目もあるのですがそれぞれの記録がポイントに換算されるため、種目が違ってもチャンピオンを争えるという判断なのでしょう。そのためチャンピオンはシリーズチャンピオンと種目別チャンピオンの2種類があるのです。
シリーズチャンピオンは全種目でポイント最上位の選手
種目別チャンピオンは各種目でポイント最上位の選手
です。
ややこしい。
女子3000mSCの選手と男子100mの選手が年間チャンピオンを争う可能性があるのですが、そんなの誰が楽しめるのだろうか?
シリーズチャンピオンの賞金は100万円とサトウ食品の商品1年分
シリーズチャンピオンは強化費100万円とサトウ食品の商品1年分がもらえます。
種目別チャンピオンはサトウ食品の商品半年分がもらえます。
各大会のMVPは佐藤食品の商品1か月分がもらえます。
しょぼい!!
2018年と2019年はチャンピオンは200万だったので半減しています。これが日本の陸上競技の価値っていうことでしょう。
全種目を通して日本陸上界の頂点に立ったとしても100万円と食べ物がもらえるだけ。陸上選手として自立して生活することは不可能です。せめて1000万円くらいないとなぁ…
寄付を募れば1年で1000万の賞金くらい集まりそうな気がしますが、そういうことができないのが陸上界。閉鎖的です。トップが伸びなければ裾野も広がらないでしょう。
規模は違いますが、ダイヤモンドリーグの賞金総額は700万ドル(7億円以上)。1大会での優勝賞金が1万ドルです。8位でも1000ドル。
また、日本記録を出すとサトウのごはん1年分もらえます。
これはいい!!
過去シリーズのチャンピオン
2018年から人知れず行われていたこのGPシリーズ。
グランプリプレミアとかグランプリとかいろんな大会があって意味不明だったこともあって陸上ファンでもシリーズに注目している人なんていなかったと思いますが、毎年ちゃんとチャンピオンを決めています。
2018は山縣亮太選手(100m)
2019は北口榛花選手(やり投げ)
2020は新谷仁美(10000m)
がチャンピオンになっています。2020年は大会が中止になるなどして変則開催だったのですが、新谷選手以下4位までが10000mで日本記録をだした選手で占められています。
日本グランプリシリーズは必要なのか?
大会HPのトップには
『決戦 人類の限界に挑む、頂点の戦い』
とあるわけですが、実際には15大会のポイントで争うので決戦はありません。あと、日本記録をだすとチャンピオンになれるシステムなので人類の限界ではなくて日本記録に挑む戦いです。
男子100mの9秒99と女子1500mの4分5秒00だと、特別ポイントがついくので女子1500mのほうが60p以上価値があるというのがこのシリーズ。ちょっとおかしい。
もともとあった有名な大会を片っ端からポイント対象にしたのが日本グランプリシリーズ。
たしかにこの大会にはトップ選手が多く出場するのですが、GPシリーズは後付け感があります。
っていうか、九州・中国地方でばかり開催されていて南関東の大会がひとつもないっていうのは『日本グランプリ』を名乗るのにはちょっと無理がある。
ふつうはグランプリシリーズの決着として日本グランプリがあるんだけど、陸上のグランプリはただのポイント稼ぎ大会。
陸上は人気がないスポーツで、大会を観に来る人は無料券をもらった地元の中学生がほとんど。本来、グランプリシリーズのような大会でスポンサーを集めたり観戦する楽しさを広めるべきなのですが…
陸連は新しいことやってる感をすごい出しているのですが、発展しそうな雰囲気がないのが悲しいところ。
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