陸上スパイクピンの長さは何ミリがいい?短距離なら7mmの時代!?

スパイク, スパイクピンいろいろ

陸上はスパイク以外の道具を使わないため、スパイクへのこだわりが強い選手も非常に多い。
トップ選手ともなればプレートの方さやアッパーを特注することもできますが、一般的な選手はさすがにそこまではできません。
そこで、ピンの長さを変えてスパイクをカスタマイズするということがよくおこなわれています。
かつては『アタッチメント』をつけることで傾斜をつけたりグリップ力をアップさせたり、つま先に『Vピン』をつけるなどといったことも広く行われてきました。
しかしそんなことをやっている人は絶滅し、最近はピンを短くすることが流行中!!

ってことで、今回は
ピンの長さは何ミリがいいのか!?
という命題について考えてみます。
ピンの長さを変えるだけでスパイクの特性を変えることができますので、走りにあったピンを選ぶこともまた大切なことなのです。

 

 

ピンの長さの基本

従来、ピンの長さは種目によってだいたい決まっていました。スパイク自体もそれに合わせて作ってあるため、あえてピンの長さを変えるメリットもあまりなかったように思います。
まずは、ピンの長さを選ぶときの基本情報からご紹介。

短距離は8mmか9mm、ロングスプリントなら7mm

陸上は距離が短いほど高い反発を必要とし、距離が長くなると持久的な特性が求められます。そのため、短距離であれば8mmか9mmを使用するのが一般的でした。メーカーがスパイクに付けて売っているピンもこの長さで、ピンを交換するときにはそれと同じ長さを買うのが普通です。
100,200mに出場する場合には8mmを使用し、練習やロングスプリントの場合には少し短くして7mmを使用するといったピンの使い方をしている選手も多い。短距離用スパイクはどれも7mm以上のピンを想定した作りになっているため、5mmや3mmといった短いピンを使用すると走りにくさを感じます。
ってことで、ショートスプリントなら8mmか9mm、ロングスプリントなら7mmを使用するのが基本と考えてください。

ピンは長いほど高反発でグリップも高い

ピンは長ければ長いほど反発が得られるとされていて、高反発が必要な跳躍競技では長いピンを使うのが一般的です。また、ピンが長い方が刺さる長さも長くなるため、グリップも上がります。
特に一歩に大きなパワーをかける走高跳とやり投げでは12mmピンの使用も認められており、制限いっぱいの長さを使う方がメリットがあると考えられます。

ピンが短いと疲れにくい

ピンは長ければ長いほど良いわけでもないのが難しいところ。
ピンが長いとピンの抜き差しにかかる抵抗も増えてしまいます。そのため、筋力の弱い選手や一歩一歩のスムーズさを重視する場合にはあえてピンを短くするということも行われています。
これは主にロングスプリントの選手の間で行われていたことなのですが、最近では100mでもフラット走法をはじめとしたパワーよりスムーズな動きを目指す選手が増え、ピンの長さも見直され始めています。

最近の流行は短距離でも短いピン!?

ここ数年で高校レベルでも選手の走り方が変わってきています。その最大のポイントは『フラット走法』の一般化で、これまでは感覚に頼っていたために一部の選手だけにしかわからない特殊な走法だったものが、youtubeなどによって広く技術が広まったことで、誰でもある程度の知識を得られるようになりました。
昔は走り方なんていうのは顧問の先生や先輩に教わる程度のものでしかなく、専門的な本を読まないと最新の技術は得られませんでした。
こうして先端技術が多くの選手に広まったことで、最近はピンの長さもまた見直されています。

ニードルピンも一般的になってきた

ピンの長さを抵抗と考えるようになったきっかけはフラット走法の普及以外にもあると考えられます。それがニードルピンの一般化です。そもそもニードルピンは昔はルール的に使用することができませんでした。
海外スパイクを買うとニードルピンが付いてくることもあり、ナイキやアディダスのスパイクを履いた選手がニードルピンと並行ピンの感触の違いに気が付いたことで、ピンの抵抗を気にするようになったのでしょう。
ニードルピンについては別の記事で紹介していますのでご参照ください。

ピンを極限まで短くしたピンレススパイクも登場!!

2019年に登場したのがアシックスのピンレススパイクです。世界陸上ドーハ大会では桐生選手やウォルシュ選手が着用し、一部で話題になったのがピンのついていないスパイク。

これが2020年には市販モデルであるメタスプリントとして登場し、入手困難ながらも一般選手でも金さえ出せば履けるようになりました。

アシックスは短いピンを主流にしていく?

アシックスの短距離モデルである『サイバーブレード』の2021年モデルの詳細が明らかになり、ピンをこれまで標準としていた8mmピンから7mmピンへと変更することが明らかになりました。
ブレードのプレートは設計が古く、フラット走法向きとは言えない構造をしており短いピンとの相性は決して良くないように思えますが、メーカーはこれによってスムーズな動きが可能になるとしています。
また、2020年モデルの『ジェットスプリント2』では、前モデルの8mmピン+7mm固定ピンという構造から5mm固定ピン4本という長距離スパイクのような構造に変更されています。

[アシックス] JETSPRINT 2
アシックスは桐生選手を抱え、フラット走法の急先鋒としてスパイク開発をしています。
今後ほかのメーカーがこの流れを追いかけるのかはわかりませんが、アシックスのスパイクは短いピンによるスムーズな動きを想定したスパイクを発売していくことが考えられます。

今はフラット走法と言えば桐生選手ですが、かつては末續慎吾選手の走り方がフラットとされていました。末續選手は「氷の上でも走れる」や「ピンは必要ない」といったことを発言しており、スパイクも今のフラットスパイクに非常に近い構造のものだったように思います。ミズノはこの末續モデルの市販化に大失敗し、ジオマッハという黒歴史とそこからの迷走に陥ってしまいましたが、アシックスはうまくマーケティングをしたようです。

走りに合わせたピンの長さを選ぶ!?

いままでは8mmを選んでおけばよかったのですが、ジェットスプリントは5mm固定となり、サイバーブレードまでもが7mmピンを採用している現代においてはピンを短くすることも検討する価値はあります。
ピンを短くするべきか?それとも9mmピンを使うべきか?

パワーをかける走りならピンは長くていい!!

時代の流れはフラット走法とピンレス化に向かっているのかもしれませんが、歴史を見ればフォアフットのほうが実績はあります。
ピンが短いことで得られる最大のメリットは抵抗が減ることです。
ここが非常に大きなポイントで
『そもそもピンに抵抗なんか感じたことないけど…』っていう人はピンを短くする必要はありません!!
ピンを短くすれば反発は減るため、たしかに足運びはスムーズになることが考えられます。
一方で、ピンが短いと反発を得るためにはそれなりの技術が求められるようにもなります
ピンを短くしたことで得られるメリットとデメリットを理解したうえでピンの長さを考えることが必要で、抵抗を減らすことよりも反発を得ることを重視するのであればピンは長いものを選ぶ方がメリットがあるでしょう。

ピンが長いと反発が強くなる!!

「ピンが短いと技術が必要」と言いましたが、それはどういうことでしょうか?
走る動きでは、地面を蹴ることでその反発を受けて進みます。

  1. 地面を強く蹴る
  2. 蹴った力をうまく地面に伝える
  3. 反発をロスせず受け止める

上記の要素をいかにうまくやるかが、速く走れるかどうかのポイントです。
ピンの長さが関係するところは23で、ピンが長い方が力を地面に伝えやすくなり、地面からの反発も受け取りやすくなります。逆にピンが短いとグリップ力が減るため、地面を掴みにくくなります。
ピンの抜き差しにかかる時間が長いものの、強い反発を受け取ることができるのが長いピンを使うメリットです。

技術が未熟ならピンは短くしない方がいい!?

長いピンであれば地面の蹴り方が多少雑であってもピンが地面を押してくれます。つまり、接地や蹴り出しの技術が未熟であってもピンが長ければ推進力を得ることができると考えられます。初心者~中級者にありがちな「引っ掻くような走り」であっても力を伝えることができるのが長いピンです。
ピンが短いことのメリットは『接地や離地のロスが減る』ことですので、そもそも力をうまく伝えられない選手にはメリットを享受できません。
具体的に言えば、12秒台の走力であればピンを短くすることで反発を得ずらくなるだけでメリットは薄いと思います。11秒前半くらいの技術があればピンに頼らない走りができるので、ピンを短くすることも選択肢になると思います。
流行に乗るだけではなく、自分にとってそれがいいことなのかを考えるといいでしょう。

フラットで走るならピンは短い方がいい!!

ピンが長いと抜き差しの時間がかかり、その分抵抗も増えます。たった10秒ちょっとの100mですが、その間に50歩も接地しますのでその抵抗は無視できません。一歩のロスが0.001秒減れば記録は四捨五入で0.01秒速くなります。
ピンを短くするだけで0.01秒タイムが良くなるのだから試す価値あり!!
フラット走法はまっすぐ設置してまっすぐ抜くイメージの走りです。この走りであれば地面を蹴る感覚ではなく押す感覚になるため、ピンが短くても地面に力を伝えることができます。
もし、今すでにフラット走法を試していて8mmピンを使っているのであれば、試しに7mmや5mmピンを使ってみると0.01秒タイムが良くなる!!かもしれない…

ピンが短いと走りがスムーズになる!!

抵抗がどうこう言われても…っと思うかもしれませんが、実際に短いピンを使用すると明らかに足が楽です。
ピンが短いと一歩一歩のパワー感は減りますが、接地から離地までの時間が短くなってスムーズに足が回っていく感覚が得られます
これこそ短いピン良さで、繊細な動きをすればそれが走りに直結してスムーズな走りができるようになります。

 

短くするならニードルピンかアシックスの『AS-A』がおすすめだ!!

一般的な並行ピンは2段並行か3段並行という形状をしています。

このピンは地面に刺さることはなく、タータンを押す構造をしています。つまり、ピンを短くしても結局は地面に指すための力が必要で、接地感覚が良くなるとは限らないのです。
そんなときにおすすめなのがニードルピンかアシックスのニードル風並行ピンである『AS-A』です。

ニードルピンはその名の通り針状に尖ったピンです。

ニードルピン 7mm 50本
地面に刺さる際の抵抗は全くなく、抜く時にも非常にスムーズです。それでも地面を掴むグリップ力は非常に高いため、長いピンと短いピンのいいところを集めたようなピンがこのニードルピンだといえます。

AS-Aは並行ピンでありながら、非常に細いため地面に刺さりやすいのが特徴のピン。

asics (アシックス) パウピラ AS-A(18本) TTP981

AS-Aはもともとは長距離を想定しているため、抜き差しの抵抗が非常に少ない並行ピン。針体が非常に細いため、短距離のように強い力をかけると曲がりやすいものの、消耗品と考えれば問題はないレベル。

 

今回のまとめ

ピンは長い方が反発が得られます。
陸上は速く走る競技ですので、反発が強ければ強い方がいいでしょう。しかし、長い距離を走る場合にはピンを短くして抵抗を減らした方が記録が良くなる場合もあります。
最近はフラット走法が主流になりつつあり、この走り方であればピンが短くても反発を使うことができます。その流れもあり、アシックスはピンの短いスパイクを標準化してきています。
フラット走法には技術が必要なため、未熟な選手は長いピンを使用した方が速く走るることができると思います。しかし、ピンを短くすることだけで記録を縮められる可能性があるのであれば、試す価値はあります。
ピンを短くする以外にも、ニードルピンの使用や細いピンを使用することで、ピンを短くするのと同様かそれ以上の効果が得られるかもしれません。
色々なピンを試すことで、自分の走りに合ったピンを探しましょう!!

 






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