【高速タータン】なぜ長居や布施は記録が出やすいと言われるのか?
陸上のトラックは全天候型の「オールウェザートラック」で、いわゆる『タータン』が敷かれています。
厳密に言えばタータンってのは3Mの商標だそうで、シューズメーカーなんかはオールウェザーって呼ぶこともありますが、ゴムのサーフェスのことは『タータン』って言うのが一般的です。
一見すると同じように見えるタータンですが、実はいろんなメーカーが作っていて、そのため競技場ごとに走り心地が結構違って、サクサクする競技場もあれば、ぷりぷりしていてピンが刺さりにくい競技場もあるっての陸上経験者ならわかるはず。
ってことで今回は
【高速タータン】ってなに?長居・布施は記録が出やすいの!?
をテーマにご紹介。
「長居は高速タータンで記録が出やすい」なんて言われていて、実際にタイムが変わるかは別としても競技場によってタータンの弾み方は結構違います。
なかでも長居や布施のタータンは【高速タータン】と呼ばれていて、硬くて反発が強いとされています。
一方、最近はほぼ絶滅しましたが『チップサーフェス』っていうゴムチップが撒かれていて記録は出にくいけどクッション性が高く足に優しいとされるトラックもあります。
で、タータンのこの違いってどんなとこにあるの?って言うのが今回のお話です。
今でも3M社はTartanの名前のテープを販売しているようですが、オールウェザートラックは一般的に「タータン」と呼ばれているので、今回はその呼称を使います。
タータンにもいろんなメーカーや種類がある
陸上部ならNISHIとかの陸上用品カタログをみたことがあはず。そのカタログにも校庭に敷けるタータンのロールシートがあります。実際に校庭の一部にタータンロールが敷かれていた学校も多いでしょう。
管理人も「将来は庭にスーパーX強いて幅跳びのピット作る!」という夢を抱いていました。その「スーパーX」ってのもタータンの商品名です。
・日本体育施設
・奥アンツーカ
・長谷川体育施設
・モンド
管理人調べによると日本でタータンを作っているメーカーはこの4社。
その代表的なタータン商品は以下↓
・日本体育施設(レオタンαエンボス)
画像:日本体育施設HPより引用
使用されている競技場→日産、宮城、小笠山等
・奥アンツーカ(トップエースCL)
画像:奥アンツーカHPより引用
使用されている競技場→長居、加古川、長良川、丹波等
・長谷川体育施設(レヂンエース)
画像:長谷川体育施設HPより引用
使用されている競技場→等々力、秋田、エディオン、博多の森、厚別等
・モンド(スーパーX)
画像:クリヤマジャパン㈱HPより引用
使用されている競技場→新国立、布施、滑川等
日本体育施設、奥アンツーカ、長谷川体育施設の日本メーカー3社と、イタリアのモンドがトラックメーカーとしてあります。モンドはクリヤマジャパン㈱が代理店なのかな。
(日本体育施設の施工実績)、(奥アンツーカ施工実績)、(長谷川体育施設の施工実績)、(クリヤマwebカタログ)からそれぞれの施工実績を見ることが出来て、どうやら奥アンツーカは大阪の企業だけに関西が多い、関東だと日本体育施設が多いって感じなんですかね?
アシックスの研究所は国立と同じモンドを敷いてるらしい。
数年前、大和の競技場のタータンが浮きまくってて最悪だったんだけどあれの施工メーカーも調べたらわかりそう…!!
だいたいみんな【高速タータン】ではある
【高速タータン】という言葉を管理人が初めて聞いたのは2007年世陸大阪の長居。
長居の競技場は比較的新しかったものの、2007の世陸開催に合わせて奥アンツーカの「トップエースCL」に張り替えられました。で、この張り替えの報道のなかで、タータンが固くて記録が出やすいっていう話になって【高速タータン】っていう言葉が出てきたんだと認識しています。
「チップ」に対しての「高速」?
今現在、長居のタータンが特別高速なの?っていうと多分そんなことはないはず。
各メーカーが硬いタータンと軟らかいタータンをラインナップしているため、各メーカーの硬い商品は全部高速タータンと言えると思います。メーカーごとの特徴は厳密に言えばあるんでしょうけど。
そもそも『高速』って抽象的ですよね。かつては「チップ」があったのでそれに対しては高速だったんでしょうが、チップがほぼ絶滅してノンチップしかない現在においてはそんなに差はない気がします。
ただ、タータンの商品のなかでも軟らかいのはあって、例えば練習(合宿)で多く使われる菅平のトラックはあえて軟らかいトラックにしているようです。
そういうあえて軟らかくしてあるタータンは「高速」とは言わないはず。
管理人も菅平で走ったことありますが、言われてみれば軟らかかった気がしなくもないかなぁ…
サーフェスの素材は「ゴム」と「ポリウレタン」の2種類あるんだってさ
サーフェス(表面)素材はゴム系とポリウレタン(樹脂)系があるそうです。
たしかに、穴がいっぱいあいてるサーフェスと絨毯みたいなサーフェスがありますよね。どっちがどっちかわからないけど、ネトネト系のトラックはゴムで、サクサク系はポリウレタンなのかもしれない…
【高速タータン】のなかではモンドの「スーパーX」だけがゴムで、レヂンエース、トップコートCL、レオタンαエンボスはウレタン製です。
ウレタンのメーカーでもゴムも作ってるので、その競技場に合わせて特性を変えているんですね。
それぞれ長所短所があるんでしょうが、素材が違うからどうというのはわからん!!
地元の競技場はずっとゴムだと思ってたけど調べてみたらポリウレタンでした。
ちなみに、合宿で使ったことのある人も多いであろう「菅平」のタータンは奥アンツーカのトップエース「CB」っていう柔軟性の高いゴム製だそうです。へぇ~。
なんとなく、ゴムだと弾むけど経年劣化に弱そうで、ポリウレタンは弾まないけど劣化に強そうな気がする。どうなんでしょうね。
あと、下層の素材によってもいろいろあるらしいです。細かい土木技術的なことはまったくわかりませんが、その辺がメーカーの腕の見せ所で各層の硬さとか素材を変えるとタータンの特性もかわるんでしょう。
管理人も、土のグラウンドがタータンになる様を最初からひと冬みていたことがありますが、一回アスファルトを貼ってからその上にゴムの粒を撒いて、それをローラーで固めて作っていました。
また、体育館床とかテニスコートも同じような構造だそうです。
ゴムは新しいと記録がでるとかある!?
新国立はスーパーXなのでゴムですね。
新国立が出来た直後の東京五輪では世界記録3つも出たのは記憶に新しいですが、もしかしたら新品のゴムは記録が出やすいのかも…!?
2015年にスーパーXを張った(らしい)布施では19年に桐生選手が10秒05、21年に山縣選手が9秒95の日本記録を出していますから、張り替えから5年くらいはゴムの性能が高いとかはありそう。世陸東京も2025年だからまだまだ記録が期待できるかもしれません。
令和4年9月から令和5年3月の期間でトラックの改修工事をやったそうなので、なにをしたのかは分かりませんが2023年の布施スプリントは記録が出たりもあるかも。
~まとめ~
「トップコートCL」の長居と「スーパーX」の布施は記録が出る!?
今回は【高速タータン】とはなに?っていうお話でした。
同じように見える「タータン」ですが、実は主に4メーカーが作っていて競技場によって素材や硬さが違います。
そのため、『この競技場は記録が出やすい!!』なんて言われることがあって、そういう競技場は【高速タータン】と呼ばれます。
高速タータンの代名詞が世陸大阪の会場にもなった「長居」と、布施スプリントの会場となっている鳥取の「布施」。これらの会場は確かに記録が出やすくて、トップ選手があえて選んで出場する大会もあります。
実際のところは風の通り方とか会場の雰囲気の影響も大きいので、タータン自体がどれだけ記録に影響しているかってのは評価が難しいと思います。でも、界隈ではタータンによって記録が変わるってのは共通認識でしょう。
実際、タータンには反発重視の商品と、クッション性重視の商品があるんです。
例えば長居で は奥アンツーカのトップコート「CL」という硬い商品が、そして合宿で多く使われる菅平の競技場では同じ奥アンツーカでもトップエース「CB」っていう柔らかい商品が使われているそうです。
信じるか信じないかは…っていう程度の話かもしれませんが、好記録が出た会場のタータン施工会社を調べてみるのもマニアックで面白いですよ。
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