2018年 箱根駅伝のシューズシェア
お正月といえば箱根駅伝。
戦国時代と言われて久しい箱根ですが、2018年の箱根駅伝ではいつもとちょっと違う事が話題になりました。
それは、シューズのシェア。
昔からのマニアックな箱根駅伝の観かたのひとつに、靴やユニフォームの提供メーカーを数えるというものがあります。長い長い駅伝を飽きずに観るためのひとつの手段なのですが、2018年はその観かたが一部で脚光を浴びています。
2018年の箱根のシューズは、『ナイキ対ニューバランス』あるいは『厚底対薄底』の時代の幕開けともいえる大きな変換点になりました。これほど一気にシェアが動いた年は過去にないと思います。
これは箱根駅伝のみならず、陸上界全体に波及する可能性のある大きな出来ごとかも。
(数字は数えた結果なので違ったらごめんなさい)
年代別シューズのだいたいの流れ
シューズのブームは年代によって色々あります。ザックリふり返っておくと2018年の異常さが分かりやすいと思います。
2000年代前半
ミズノとアシックスがほぼすべてのシェアをもっており、色もほとんどが白。たまに黒や赤のシューズを履いている選手がいる程度でした。市販されているシューズはほとんどが白で、青や赤を履いてると目立つような時代。オーダーシューズでも白基調が多かった。
2000年代後半
白以外の色シューズが増えただけでまだミズノとアシックスの時代。大学スポーツの硬派な流れがこの頃まではありました。まだサングラスをしているとチャラいような時代。視聴者はまだシューズなんて見てない。ショップで市販されているシューズもまだミズノとアシックスがほとんどで、ナイキがちょっとある程度。アディダスは撤退状態で、ミズノ・アシックス以外を履くのはちょっとハズシでした。
2010年代前半
ランニングブームを受けて各メーカーがカラフルなラインナップになった頃。蛍光色のシューズを履く選手も出て来ました。それでもまだミズノとアシックスがほとんど。なかにはナイキを履く選手もいましたが、まだ少数派。当時ナイキのユニフォームを着ていてのちにナイキと契約をする大迫選手でも白いミズノを履いていました。
最近はアディダスの時代
かつてはほぼミズノとアシックスしかなかったシューズシェアですが、2015年くらいからどんどん状況が変わります。
転機になった2015年
この年初優勝した青山学院大学の選手の多くがアディダスの靴(ジャージもアディダス)を履いていたことで、それまで日本人に合わないと敬遠されていた海外メーカーのシューズに対する壁がなくなりました。一部のマニアックな人があえて選んでいたアディダスでしたが、青学のおしゃれさと合わさり市民ランナーの間でもアディダスのシューズが爆発的に増えてブームに。
また、元アシックスでアディダスのシューズを作った三村さんという靴職人とそのシューズ『アディゼロ匠シリーズ』が一躍有名になりました。
2015年のシェアは
- ミズノ 100人
- アシックス 59人
- ナイキ 25人
- アディダス 22人
- NB 4人
市民ランナーのあいだで海外製のシューズが増えてきても、それでもまだトップ選手はミズノが多いという時代。ミズノ・アシックスは担当者が大学についていることも多く、細かいオーダーができる事も理由です。ニューバランスのユニフォームを着た上部大学でさえ、NBのシューズを履いている人は0人でした
2016年 海外勢が伸びる
青学フィーバーにのってアディダスがシェアを伸ばす。ミズノの失速がこの年から始まった。ナイキ・アディダスが増えた年。(かっこ内は前年比)
- ミズノ76人(-24)
- アシックス61人(+2)
- ナイキ 37人(+12)
- アディダス 34人(+12)
- NB 3人(-1)
やっぱりまだ国内メーカーが強かったけど、ナイキとアディダスが日本市場にも力を入れてきた。アディダスは青山学院大学の連覇もあり、相当の宣伝効果があったと思われる。
2017年 アディダス全盛
ミズノ好きとしてはショックの大きい年になった。ついにミズノのシェアが…
そして青学3連覇でアディダスが日本のお茶の間に垂れ流し。アディダスの宣伝のような大会でした。ミズノって箱根駅伝の大スポンサーなのに宣伝がめちゃくちゃ下手。やっぱり海外メーカーは宣伝がうまい。
- ミズノ 54人(-12)
- アシックス 67人(+6)
- アディダス 49人(+12)
- ナイキ 36人(+2)
- ニューバランス 4人(+1)
もはや国産か外国産かという認識はない。アディダスの勢いになす術なし。
2018年 まさかのナイキ時代始まり
元旦のニューイヤー駅伝で、なんと元アシックスでアディダスの匠シリーズを作ったシューズ職人の三村さんがニューバランスと契約したことを発表。シューズシェアを大きく動かし、アディダスブームを作ったた三村さんの移籍は、次のニューバランスの時代を予感させた。
ああ、そういえば去年からNBは『HANZO』シリーズとかいうのを出してたけど、そういうことだったのか…っと、ひとつ納得。
来そうで来なかったNBブームがついにくる!?
が、
箱根駅伝が始まると明らかにナイキを履く選手が目立つ。しかもどうやら『ナイキズーム ヴェイパーフライ4% 』が多い。ヴェイパーフライは、マラソンのキプチョゲがプロトタイプであるズームヴェイパーエリートを履いて非公認ながら2時間00分25秒という驚くべき世界最高記録を出し、発売後は反発が強すぎてドーピングシューズといわれたシューズ。
マラソン界では厚底の波が来ているものの、これは超薄底である日本の従来のマラソンシューズとは間逆のシューズ。これまでのセオリー的には駅伝で履く人はほとんどいないようなモデルです。保守的なイメージの強い大学スポーツでそんな冒険的なモデルを履くなんて。
一方で三村さんが移籍したNBは、ナイキとは違って薄底。
蓋を開けてみれば、なんとナイキがシェアトップとなったのだ。ミズノはもはや少数派。アシックスすらも2番手になってしまった。アディダスは早くも時代も終了。
2018年のシューズシェアは
- ミズノ 37人(-17)
- アシックス 54人(-13)
- アディダス 35人(-14)
- ナイキ 58人(+22)
- NB 23人(+19)
- ミムラボモデル 3人
それでも結果は青山学院大学が優勝。アディダスの優位性はかわらないのだが…
厚底ブームがくる?
5足も6足もシューズを持っていたりする箱根駅伝大好き市民ランナーたちはとりあえず一回ナイキに手を出すでしょう。
ナイキの『ヴェイパ―フライ』に対してアディダスも『adizero Sub2』というモデルをぶつける。これはブースとフォームという高反発素材をつかったマラソンの世界記録を目指すモデル。これが発売されると一時的に話題になりそうです。
その後に薄底回帰になるのか、厚底がメインストリームになるのかはアシックスあたりの頑張り次第。ソーティマジックをちゃんとつくれば薄底回帰になるだろうし、ブームに流されて厚底をプッシュし出したら海外メーカーにシェアを取られて数年後にはミズノ状態かもしれません。
ナイキの厚底シューズはこれ
『ズーム ヴェイパーフライ エリート』、『ズーム ヴェイパーフライ 4%』、『ズームストリーク 6』、『ズーム フライ』という4つのモデルが中心になります。
ズームヴェイパーフライ エリート
あの手この手で42.195km2時間切りを達成しようという『BREAKING2』プロジェクトで開発されたプロトタイプのシューズ。
スパイクのようにカーボンプレートが内臓されており、ズームXミッドソールという新しいクッション材が使われている。通常のシューズでは15㎜弱の厚さしかない前足部でさえ、20mm以上の厚さがある超厚底シューズ。
パフォーマンスフライニット素材のアッパーはなんと風洞実験までして開発したという力の入れっぷり。かかとの形状がすごいです。
ナイキ曰く
『ディテールに対して、引き続き精査、観察、調整が必要だが、BREAKING2 プロジェクトのシューズへの革新は、ナイキはもちろん、スポーツ界における最先端のプロダクトイノベーションになるだろう。』
実際、今年の箱根駅伝ではイノベーションになった。
もしナイキが本気で日本市場を狙って宣伝をしてきたら近いうちに箱根はヴェイパ―エリートだらけになる可能性も。
ズームヴェイパーフライ 4%
「完璧。完璧以外に言葉はない」—エリウド・キプチョゲ
キプチョゲが完璧だって言ってます。
ズームヴェイパーフライエリートを市販に落とし込んだモデル。見た目はずいぶん違うけどコンセプトは同じ。
メーカー曰く
『BERAKING2 プロジェクトのランナー用シューズと同じイノベーションでつくられた、NIKE史上最速のマラソンシューズ』
市販されているナイキのフラッグシップモデルに当たる。
4%というのは、下位モデルのズームストリーク6に対して4%の力をセーブできるという意味で、効率の良い走りが出来るシューズということ。
ヴェイパ―エリートと同様スプーン状のカーボンプレート、ミッドソールにズームXが使用されていて厚底なのに軽い。28cmで約184g。
お値段なんと25,920円!!中国製なのに冗談みたいな値段です。市販品にこれだけの値段を出させるナイキの恐ろしさ。
ズームフライ
ズームフライシリーズの廉価モデル。プレートはカーボンではなくカーボン混のナイロン。ミッドソールはズームXではなく、重さは約248gとびっくりするほど重い。それでもお値段16,200円。結構高い。ベトナム製。
見た目は上位モデルと区別付かないあたりは国産と違って商売が上手。
ズームストリーク6
ナイキの一般ラインのモデルで28cmで192g、定価でお値段14,040円と、他のと比べるせいでそれなりにお安いように感じてしまう。4%の力の差が1万円の差ということ。
アディダスの次期モデルはこれだ!!
adizero Sub2
厚底+プレートで勝負に出たナイキに対して、アディダスは高反発素材のブーストを使用したモデルで対抗。ナイキのBREAKING2に対してアディダスはSub2。ガチンコ。
世界記録を連発しているアディダスだけに、従来通りの薄底モデルの優位性をこのモデルでも示してくれるはず。
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